ウソをつくのは、悪いことだ。
ウソをつく子は、悪い子だ。
* * *
ママは忙しい人だ。女手ひとつでわたしを育ててくれている。わたしは幼いながらに、その大変さが理解できていた。
「マイちゃん、ごめんね。お仕事もう少しかかりそうだから、ご飯先に食べておいてくれる?」
「うん……」
ママの負担を少しでも減らそうと沢山お勉強をした。宿題を早く済ませて、お洗濯とお料理をして。手が空いたときはママが作ってくれるが、そんなときは月に一度あればいいくらいだ。
夜中もお仕事があって、ママはほとんど寝る間もなかった。
「マイちゃん、先に寝ててくれる?ママ、もう少しお仕事があるの。」
「うん……」
頭では理解しているのだ。わたしのためであると。
しかし、それでもわたしは幼かった。忙しいのはわかっているのに、仕事や家事を払いのけて母に甘えたかった。
「……あら?マイちゃん、どうしたの?眠れないの?」
「……オバケ、こわい。」
「……そう。怖いものを見ちゃったのね。おいで、マイちゃん。ママと一緒に寝よう?」
「うん…」
オバケなんて見ていない。怖い思いもしていない。
でも、こう言えばしばらくの間、ママを一人占めできることはわかっていた。
「ママ……」
「なぁに?」
「……大好き。」
「……ママも、マイちゃんが大好きよ。」
あぁ、わたしは悪い子だ。
あとがき
どうも、ミチャ寺です。
よく考えてみたら同タイトル以外の投稿が久しぶりな気がします。
コメント一覧
オバケはママの心を亡くしてるから
…こわいよ
そう、マイちゃん
嘘じゃ無いよね。
シングルマザーかな?
子供からすると、愛情が欲しいんだよね。
忙しいなか、応えてあげているママは偉い!
愛を与えていると良い感じで成長しそう。
育児とは愛情だ、と思います。
鉄工所さん、コメントありがとうございます。
マイちゃんはどうして怖い夢とかではなく「オバケ」と言ったんだろう…パッと思いついたセリフだったのですが、私の頭の中にいるマイちゃんの、何かしらの含みがある気がしてきました。(書き手とは何だったのか笑)
けにおさん、コメントありがとうございます。
育児の大変さ、私はまだ感覚的なものしか理解していないのですが、独り暮らしで家事を自分でするようになるとどれだけ忙しい中で育てられてきたのかが身にしみてきます。
仕事と捉えると割りに合わない忙しさ、やはり愛情が成し得る事だったのですね。