音速の鉄槌 後編

  • 超短編 449文字
  • シリーズ
  • 2017年04月23日 01時台

  • 著者:1: 3: ヒヒヒ
  •  突然家にやってきたスーツの人々、令状を読み上げる声、母が妹を抱きしめるのを横目に、私は難解な法律用語を理解しようとただ立ち尽くしていた。父はただ二三の言いつけを残して、連れていかれた。
     彼は記者だった。
     彼の頬がやつれていたのは、きっと、捜査員たちの目には「罪悪」の証としか映らなかっただろう。取材で得た情報を悪用して金をむしり取る脅迫者。私も一時はそうだと信じていた。

     ペンは剣よりも強い。その言葉は本当だった。民衆が剣を持っても逮捕されるだけだが、ペンがあれば強者の罪を糾弾できる。

     頬に押し当てた金属の感触が、私の心を冷やしてゆく。
     私もペンを握るべきだったんだろうか? 父と同じように、「正しいやり方」で戦って、正しい方法で勝利を目指すべきだったんだろうか。

     ペンは剣よりも強い。それは本当だ。権力者はそのペンで、ありとあらゆる罪を描き出せる。

     妹のことを思い出す。

     やめろ。

     それは感傷だ。

     やつが壇を上り詰める。こちらを向いて、微笑んだ。

     憎悪が胸に迫る。銃声。音速の鉄槌が銃身からほとばしり出て、悪を撃った。

    【投稿者:1: 3: ヒヒヒ】

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