じいちゃんの亀時計

  • 超短編 814文字
  • シリーズ
  • 2017年04月22日 23時台

  • 著者: 3: 茶屋
  • じいちゃんの時計はどこかずれてる。お母さんはおじいちゃんの時計は壊れているのよっていう。

    じいちゃんはいつも朝起きて時計のネジを巻く小さな針を時計に刺して歯車をキリキリと巻いている。

    6:25分に巻き始めて6:30に巻き終わる。じいちゃんの時間が始まる。

    7:00僕は起きて、朝ごはんを食べる。じいちゃんは砂糖を入れすぎてドロドロになった濃いコーヒーを飲んでまずいという。

    7:40僕は急いで、授業にいる教科書を確認して家を飛び出る。お母さんに「今日は寄り道しちゃだめよ」と言われた

    じいちゃんはまだゆっくりご飯を食べている。

    17:40家に帰る。じいちゃんの時計はまだ13:00でじいちゃんはご飯はまだかとお母さんに聞いていた。

    18:00晩御飯を食べる。今日は特別な料理がでた。トン汁に小麦粉で作った団子を入れたトン汁スイトンだ。僕はこれすごい好きだ、

    ばあちゃんの得意料理だった。

    じいちゃんの時間はまだ17:00「飯はまだはやいのぉ」とじいちゃんはいう。でもお腹減っていたのか席についてトン汁スイトンを見ると笑って。

    「またばあさんのスイトンか」と言った。

    20:00じいちゃんと一緒に風呂から出た、「ばあさん、今日の風呂はちと熱いぞ」とお母さんに言っていた。

    21:00じいちゃんの時計は止まっている。もう古くて朝巻いた時計は夜まで時間を進ませれない。じいちゃんの時間はいつもどこかで止まっていて。

    でも亀のように前にしか進めなくて停滞してる。

    22:00僕は手を合わせて線香を立てた。「としお、その仏壇の写真は誰のだい?」僕をお父さんの名前で呼んでばあちゃんの仏壇を聞く。僕は「おばあちゃんの仏壇だよ」と言う。

    じいちゃんの亀時計は少しだけ進む「そうかい……」僕の頭をじいちゃんは優しくなでてお布団に入った。

    明日もまたじいちゃんは時計をまく。一日を刻めない時計をじいちゃんは巻き続ける。前にしか進めない亀のような時間を僕とじいちゃんは生きていく。

    【投稿者: 3: 茶屋】

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    コメント一覧 

    1. 1.

      1: 3: ヒヒヒ

      切ないです。
      じいちゃんが、もうみんなと同じような時間を刻めない、ということを表現するのに「亀のような時間」というのがすごくピッタリな感じがあってもの悲しい。
      だけど何とか付き合うしかないし、付き合っていく方法はあるという感じがして、いいですね。


    2. 2.

      ことは

      亡き祖父を思い出しました。振り子時計のネジを巻くのはいつも祖父でした。止まりかけの時計は秒針だけぴくりぴくりと動くだけで進みませんね。
      作中のおじいさんの時計のネジ巻きは、おばあさんの役割なのかな、って思いました。