僕はビスケットが好きだ
花火の日にとうちゃんに買ってもらった秋色のビスケット
花火といえばかき氷のはずなのに、父ちゃんが持ってきたのはビスケットだった
とうちゃんいったいどこで買ってきたんだろう、って思った
でも、その日とうちゃんと食べた秋色したビスケットは本当に、本当においしかったんだ
僕ととうちゃんは川のそばの、しばふの上に座って、ビスケットをかじりながら、花火を見物したんだ
その日の花火はちょっと変で、真夏の雪みたいに空から火花がふってきてきれいだった
でも、僕は「あちあち」ってなったんだ
とうちゃんも「あちあち」って飛びはねていたので、とても面白かった
そして、とうちゃんは突然、僕におおいかぶさったんだ
僕はとうちゃんに、何するんだ重いよっておこったんだ!
そしたら、ばーんって大きな音がして、とうちゃんは吹き飛ばされたんだ
とうちゃんを見ると、真っ赤になっていた
とうちゃんは、真っ赤な炎でごうごうともえていたんだ
僕はそれを見て、きっと、とうちゃんは今から死体になるんだって思った
目がさめると、僕は病院のベットにいて、体を見るとほうたいでぐるぐる巻きにされていたんだ
ベットのそばにいたかあちゃんは、とうちゃんの写真を手に持って、わんわんと泣いていたんだ
それで、僕は、やっぱりとうちゃんはあの日に死体になったんだ、って分かったんだ
僕は今でもビスケットが好きさ
でも、花火の日にとうちゃんが買ってくれた秋色したビスケットだけは、どこにも売っていないんだ
僕は、とうちゃんと食べた秋色ビスケットを食べたい
ぜったいに探し出すんだ
コメント一覧
これは残しておきたい。
過去作を探すけど、残したくないものばかりで呆れています。