やはりクワガタでなければ!

  • 超短編 1,673文字
  • ジョーク
  • 2017年04月15日 12時台

  • 著者: 爪楊枝
  • 「みなさんこんばんは『世界のクワガタから』の時間です。お送りするのはナビゲーションを務めますゼニゴン。そして、推理小説家でありながら、クワガタを愛し、各地を遍歴するさすらいのクワガタ評論家、爪楊枝さんです」
    「こんにちは、爪楊枝です。本日も世界中に広がる素晴らしい文化とクワガタを、紹介して行きましょう」
    「今回訪れたのは、スマトラ島のパレンバンです。市街にムシ川が通っていて、油田開発の中心地ですから、工業に活気がありますね。オランダ占領時代の名残である建築遺跡など観光地としても人気で、様々な人々が訪れています。今回見ることはできませんが、スマトラ島にはたくさんの観光名所があるらしいじゃないですか。時間がないのが本当に残念ですね」
    「全くその通りですね。スマトラ島はインドネシア共和国の大スンダ列島に所属しています。ここに観光に来たのであれば、まずはメダンのマスジッラヤやマイムーン王宮に行くべきでしょう。また、トレッキングの楽しめるシバヤッ山、東南アジア最大の湖であるトバ湖、これらに代表される豊満な自然に心打たれること請け負いです。トバ湖に浮かぶサモシール島ではバタク人たちに会うこともできるでしょう。彼らの『バタク・ダンス(Batak dance)』や伝統家屋は一見する価値があります。古からの慣習を今に伝える貴重な文化遺産です」
    「見所が多い場所なんですね」
    「はい、避暑地としても知られていますね。とってもオススメです」

    「さてと、今回の目的からだいぶ外れてしまいましたね。本日ご紹介して下さるのは、なんというクワガタなのですか」
    「ふふふ、スマトラ島はその特異な自然環境の為、珍しいクワガタが集中している場所なのです。クワガタ愛好家からすると、聖地みたいなものなのですよ。フェモラリスツヤクワガタ、ラコダールツヤクワガタ、ルデキンツヤクワガタ、スペクタビリスツヤクワガタ、ダールマンツヤクワガタ、ガゼラツヤクワガタなどといったツヤクワガタ属が多数分布しています。そして、あのギラファノコギリクワガタと双璧をなす、マンディブラリスフタマタクワガタも分布しているのです。世界最大のクワガタはやはり興奮しますよね。さて、こうしたライバルを押しのけて今回選択したのは『エラフスホソアカクワガタ』です」
    「へぇ、どうしてそのクワガタが選ばれたのですか」
    「このクワガタはホソアカクワガタ属で最大であることもポイントですが、なにより色合いが美しいことで知られたクワガタです。スマトラ島ではそれほど希少なクワガタではありませんが、大型種を成長させるのが非常に難しく、ブリーダー泣かせなクワガタなのですよ」
    「なるほど、大きな種を見るのがとても難しいクワガタなのですね」
    「そのとおりです」
    「では、本日の調理法はいかがなさいますか」
    「この色合いを活かすにはやはり生食に限りますね。しかし、特有のえぐみがあるので、マリネにすると味わいも触感も、その良さのすべてを引き出すことが出来ます。ここに調理したのがもう用意してあります」
    「うわぁ!でかいですね」
    「はい、10センチを超えるのもざらですからね。見てください。淡い褐色をはらんだ黄金の輝きを。ほれぼれしてしまいますよ」
    「綺麗ですね。食べるのがもったいないくらいです」
    「そうですね。もし、飼育用に販売したとしても、6000円の値はつくと思いますよ。さて、それではいただきましょう」
    「一口で豪快に行きましたね。あぁ、あごが口からはみ出していますよ」
    「ふふふ、甲殻の硬さと中身の柔らかさが良いコントラストをなしていますね。かすかに甘みのある肉が快く舌の上で転がります。ふぅ、ごちそうさまでした」
    「いやぁ、今回も珍しいクワガタでしたねぇ。見応え抜群でした」
    「おっと、そろそろお時間が来てしまいましたね。スマトラ島は観光好きもクワガタ好きも一度は訪れるべき名所です。では皆さん、よいクワガタライフを!」

    この番組は雑誌Zenigon 鍬形喰の会 旅行会社KUWA の提供でお送りしました。
    次週はティモール島のアイレウからお送りいたします。

    【投稿者: 爪楊枝】

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    コメント一覧 

    1. 1.

      爪楊枝

      えーっと完全にネタです。特に後悔はしてません笑