絶望屋

  • 超短編 826文字
  • ジョーク
  • 2017年04月09日 03時台

  • 著者: 1: 9: けにお21
  • 歌舞伎町の路地裏にはヒッソリとたたずむお店がある

    中に入ると、薄汚れた壁にメニューが貼られている

    ((+_+))失恋による絶望
    ((+_+))夢破れて絶望
    ((+_+))金銭問題による絶望
    ((+_+))監禁や拷問による絶望
    などなど

    カランコロン

    おやおや、お客さんが来たようです

    「いらっしゃいませ」
    「こんにちは」
    「今日はいかがしましょうか」
    「失恋系の軽いのないかしら」
    「では、これなんていかがでしょう」

    ((+_+))ちょっといいかなおもてた人との失恋による絶望10,000円

    「うーん、そうですね、もう少しだけ重い方がいいです」
    「では・・・」

    ((+_+))1年付き合った人との失恋による絶望100,000円

    「急に、高くなるわね」
    「仕方ありません、絶望を重くすると、こちらも手間暇・経費がかっておりまして」
    「分かりました、では、それいただこうかしら」
    「毎度、ありがとうございます」

    女性客は店の奥の間に入っていた

    カランコロン

    「いらっしゃいませ」
    「おじゃまします」
    「今日はいかがしましょう」
    「ふむ、どん底がほしい」
    「では、これなんていかがでしょうか」

    ((+_+))リストラ、自己破産、家族離散、闇金業者に追われる、ホームレスによる絶望900,000円

    「いいですなあ、これください」
    「毎度ありがとうございます、期待してください、こいつは効きますよ」

    恰幅のいい中年男性は店の奥に入っていった

    カランコロン

    「いらっしゃいませ」
    「あの・・・、生贄にされるみたいなのありますか」
    「ああ、はいはい、それでしたら、いいのあります」

    ((+_+))生贄に抜擢、村人達にす巻きにされて川に流され、滝から落ちる2,400,000円

    「わあ素敵、これです、これです、わたしこういのがほしかったのです」
    「毎度ありがとうございます、これは村人全員から殺されるようなもの、強烈ですよ、お嬢ちゃん、心臓大丈夫ですか」

    西暦2100年、今日もバーチャル絶望体験屋は、絶望の心情を知りたい作家達で大賑わいなのでした

    【投稿者: 1: 9: けにお21】

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    コメント一覧 

    1. 1.

      1: howame

      絶望感をお金で買うようになるなんて未来はきっとハッピーなことだらけなんでしょうね。おもしろかったです。


    2. 2.

      1: 9: けにお21

      howameさんへ
      読んでいただき、ありがとうございます。

      これは絶望をテーマに考えた作品でした。
      締め切り間際ギリギリに思いつき、何とか間に合い、勝利も収めました。
      アイデアが浮かばなくて絶望していたので、よく覚えています。

      バーチャル体験が出来る未来は、楽しそうですよねー
      しかし、絶望をお金で買うなんてもの好きは、作家ぐらいしかいない気がするのです。