君は時々シャツを裏返しに着ている。
Tシャツとかトレーナーとか…
「シャツ、裏返ってるよ」と僕が言うと、君はケタケタと笑って気にも留めない。
「どうして裏返しで着るんだよ」
「だってほら、脱いで洗濯して干して、そのまま着ると、こうなっちゃうのよ。それにコートで中見えないし」
エビみたいな仕草をしながら、君が楽しそうに笑うから、僕も笑うしかないなあ。
「冬の海に行きたい」この寒いのに…言い出したのは君の方。
待ち合わせの場所、どうせ君は遅れてくるんだろうし、寒いから自販機で缶コーヒーを買った。
ピピピピピっと大きな音、ラッキー!!当たりでもう一本。
一本を飲みながら、もう一本はポケットに入れて君を待つ。
冬の陽だまりを、白い猫が尻尾をピンと立て、ひらりと横切っていった。
一瞬、君の横顔に見えたよ。
植え込みに消えていく、その姿を目で追っていると、後ろから肩を叩かれた。
「お待たせ!」
君の白いコート。
僕はポケットの中の、温かいコーヒーを君に差し出す。
君は目を見開いて「ありがとう」と、それを受け取り、それから僕の手を取り自分のポケットに突っ込んだ。
温かい缶の感触、二本。
「私も買ってきたの」と、ペロリと舌を出して笑う。
ごめん。僕の方は当たりで出たやつなんだけどね。
君の白いコート。
ちらりと見える、中のオレンジのシャツが裏返し……なんだけど、まあいいや。
コメント一覧
このサイトが無くならずにこうして続いていくのって素敵ですね。またよろしくお願いします。
本道の恋愛小説だ!
僕個人で言えば、もう長らく、このような甘酸っぱい感覚から遠ざかっているので、ああそんなことも遠い昔にはあったかな?、懐かしいな、って忘れていた酸味感覚を一瞬取り戻せたような。
恋愛は人生の潤いですね。
ともかく、読んで「恋愛楽しそうだな、もっかいやったろかな?」と感じさせられましたよ!
ただ、今思い出しましたが、恋愛には面倒な部分もあったような気もします。
(例:しょーもないことをぐじぐじぐじぐじ言うのを、面倒がらず「うんうん」と返事し、さも興味深げに話を聞いてあげる、とか)
そんな面倒を差し引いたとしても、総合的に魅力的だと思い出しました。
やってみるかー!
まずは、あれですね。街中を歩き、シャツを裏返しに着ている人を探さないといけない!!
トレーナーを裏返しで着るのが流行った頃が懐かしいです+*。
あれ…白猫さんが表なのかな?
春は冬の裏返しなんだけど、まあいいや。
キュンと来ますね。はたから見て幸せそうだなぁとつい思ってしまう。さては、これ恋愛小説ですね?笑
こういう純愛を語れる猫の耳さんの素直な人柄がうかがえますね。
けにおさん、鉄工所さん、キノさん、ありがとうございます。
のんびりと、なるべく幸せな話を、これからも書いていきたいです。
中盤の猫が出てくるお洒落さから、シャツが裏返しで締めくくる構成が素敵ですね。着飾らない感じがして、いいカップルって感じです。
いいカップルですねぇ。
本当は彼女さん、猫なんじゃないですか。変身するとシャツが裏返しになっちゃう、みたいな(笑
可愛いお話ですね。あばたもえくぼという感じで、好きになるとその人のずぼらなところまで好きになっちゃうのですね♪
ほのぼのとしてますね。とてもいいなー。
お互いの居心地の良さが伝わってきていいなぁ。
自然体で、どこにも気兼ねがない感じが素敵です。
あたたかな気持ちになりました。