歌詞ってどうやって書くんだろう。曲ってどうやって作るんだろう。
世界中がコロナで悩んでいる中、僕の頭ん中はそのことでいっぱいだった。
国語の作文なんてめっちゃ苦手だったし、想像力もない。書けるほどの恋愛もしてこなければ、武勇伝といえるような人生を歩んでいない。
今までの人生を思い返してみると、僕の人生はつまらないものだったと実感させられた。
歌詞を書く。ある意味、今の自分を書いているようで恥ずかしさもあり、改めてシンガーソングライターや作詞で稼いでいる人を尊敬した。
自分の現状をメモにずらっと書き、そこから添削。それで完成した文書を読むと、社会風刺っぽくなり、自分から生み出したものとは思えなかった。
その詩と呼べるのか分からない駄文にメロディーをつけて行き、歌詞にしてい行く。
一曲作るのに一カ月以上も費やし、ようやく五分弱の曲が完成した。
社会風刺の歌詞だから感覚的にはロック調のメロディーにするべきなのだろうが、初めて制作した歌詞を聴いてもらいたくバラード調にし≪ぜひ聞きたいです。願わくば、オリジナルなんかも!!≫とコメントをもらってから約二カ月後【リアリティー】と題した曲が完成した。
Twitterには百四十秒以上の動画は載せられないため、YouTubeを開設し投稿。そのURLをTwitterに貼り『人生で初めてオリジナルソングを作りました。拙い部分
もあると思いますが、良かったら聞いて下さい』と呟いた。
投稿して一週間は経ったが反響は全然。まあそんなものかと思いながら、久々のバイトに汗水を垂らしていると “PiNO” という見覚えのないアカウントからコメントが付いた。
≪あなたの歌詞が心に刺さりました。私も趣味でピアノを弾いているので、良かったら聴いてみて下さい≫とYouTubeのURLが添付され届いた。
なんだ宣伝か、と思いながらもURLを開いてみると驚いた。
映し出された映像は二分割されてあり、左画面には、コメントをくれた方のピアノが、右半分には【リアリティー】のときの僕が映っていた。
動画内の僕が弾き始めると、曲調に合わせてピアノも始まった。つまり、僕の曲に合わせ、動画内でピアノと僕のギターがセッションしていたのだ。
手と服装からして女性ではあるも力強いピアノの音色に、終始「なんだこれは?」と頭の中が整理しきれないまま動画が終わった。でも確実にいえることは、観る前よりも鼓動が速くなっていることだった。この動画に興奮していた。
急にコメントをくれた謎のアカウントは、この曲以外にも、流行りの曲やボカロ、クラシックなんかも載せて、登録者数も十万人超えていてそれなりの人気を博していた。その中に僕の曲が加わるなんて、ますます不思議に思った。
しかし不思議に思いながらも『ありがとうございます。もう驚いています。初めてオリジナルソングを作って、こんな風にセッションしてくれるなんて。本当にありがとうございます』と今の想いの丈を呟いた。
≪喜んで頂けて幸いです。またオリジナルソング待っています!≫
そういわれても、そんなすぐに歌詞も曲も思い浮かばないため『頑張って作ってみます!』と呟くので精いっぱいだったが、PiNOさんをフォローし、チャンネル登録した。
そこから次のオリジナルソングが生まれたのが、三カ月後。
その間にカヴァー曲は二曲ほど載せ『オリジナルソング鋭意制作中』ですと、自分への鼓舞も踏まえ、動画を載せたツイートの一文に矢生姜的存在で付け添えた。
次のオリジナルソングは学生時代の失恋を描いた作品になったが、当時のことを思い浮かべ顔を赤らめながら制作していた。
【火傷】と題した学生時代の失恋ソングを投稿し、その二週間後、またPiNOさんからURL付きのツイートが届いた。
YouTubeを見ていて、自分の蕾状態の曲がピアノにより花が開くのを感じていると、DMが届いた。
≪急にDM失礼します。ご存知かも知れないですが、初めてセッションした【リアリティー】の動画再生数が、五万回突破したので、ご報告させて頂きました≫
とのこと。
は? と思い、改めて観てみると、本当に五万回突破していた。
全くもってリアリティーとはかけ離れた現状に、ただただ呆然と画面を見つめていた。
『凄いですね。ありがとうございます』
≪あなたの歌詞と曲が素晴らしからですよ。これからも勝手にセッションしますが、よろしくお願いします≫
『PiNOさんの心に響くオリジナルソング作れるよう精進します。本当にありがとうございました』
そんなDMをした一カ月後、またPiNOさんからDMが届いた。
あとがき
前回の続きです。
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コメント一覧
少し頑張ってみようと上向いたことが、大きな一歩だったりして、その一歩にまだ本人が気づいていない・・・そんな感じですね。引きがよいです。続きが気になります!