《奈那美視点》
「はぁ…!はぁ…!」
「どうだ?姉貴!」
慌てて外に出て、息が荒くなった。
「若葉!!」
辺りを見回して若葉を呼んでみる。が、若葉の姿がどこにもない。
「若葉…、どこに…。」
「落ち着け、姉貴!きっとどこかにいるはずだ!」
「だといいけど…!」
若葉は、私の大切な家族。
それがどこにもいなければ…、私はまた家族を失う事になる。
もうそれはしたくないって決めたのに…。
♪~
「…!」
突然、私のスマホの着信が鳴った。
画面には、「松浦若葉」と書いてあった。
「…若葉…!?」
とりあえず私は、電話を掛けてみる。
「若葉!どこにいるの!?」
私はスマホを耳に当て、話しかける。
が、声の主は若葉ではなかった。
『…松浦奈那美、さっきぶりね。』
「…!あんた、まさか…。
大屋…!?」
そうスマホから聞こえる声の主は、大屋佐江子だった。
「あんた…!妹に何してるの!?」
『そんな怒らないで。ちょーっと借りてるだけだから。』
「はあ?借りてるって、監禁してるんだろ!?」
「若葉を監禁だと…?」
間違いない。
若葉がいない理由は、大屋が捕まえたからだ。
くそ!何であの時気付けなかったんだ!
「大屋!あんたはどこにいるの!若葉は無事なんだろうね!?」
『さーて、それはどうかしらね。縄で縛ってるのは間違いないけど♪』
「お前…!!」
『何よ、そんなドスの効いた声して。せっかくの可愛い声が台無しよ?』
「黙れ!!お前は今どこにいる!!」
『あんたがこの前訪れた殺人現場にいるわ。もう知ってる場所でしょ?』
それは、涼介が仲間に入る前に訪れたビルだ。
今でも覚えてる。
「…わかった。でも、若葉に手を出したら許さないから。」
『はいはい、妹ちゃんの心配より自分の心配したら?
でも助けに行くなら、ちゃんと死ぬ覚悟持ちなさいよ。』
「…言われなくてもわかってる。逃げんなよ。」
私はそう告げて、電話を切った。
「…姉貴、俺も行くぜ。」
「うん。そうだと助かる。」
「若葉は俺の大事な仲間だ。そんな奴が監禁されたら、黙ってられねえよ。」
「ああ。そうだね。とりあえず付いて来て。現場まで案内するから!」
私は涼介と同行し、大屋のいる殺人現場のビルまで走り出した。
「ここだよ。大屋はここにいる。」
大屋が事件を起こしたビルに辿り着いた。
「結構高えな。こん中に大屋がいるって訳か。」
「大屋はそう言ってた。行くよ!」
若葉、待ってて。今助けに行くからーーー。
バンッ!
勢いよく出入口の扉を開ける。
「松浦だ!」
「西園寺もいるぞ!」
どうやら待ち構えていたみたい。
でもこっちも準備万端。
「姉貴。」
「ああ。わかってる。
行くぞぉっ!!」
私は斬裂刀を構える。
1人残らず始末してやるーーー。
「姉貴、まだ奥にもいるみてえだ。」
涼介の言う通り、大屋軍の手下達はまだまだいるみたいだ。
「大丈夫。やる事はただ一つだから。」
「へっ、行くっきゃねえよな!」
もう一刻も早く若葉を助けないと、若葉に危険が迫るだけだ。
薙ぎ倒しながらも、全速力で駆け抜ける。
「あそこの扉、守衛がいるみたいだな。」
「…となると…、あそこに大屋と若葉が!」
守衛があの扉の近くにいる。
あそこまで走り出そうとしたその時…。
「待ちやがれ松浦!西園寺!!」
「くそ…!」
この、肝心な時に…!
「姉貴、先行け!ここは俺が食い止める!」
涼介は私の前に立ちはだかり、後ろから追っている手下を止めようとする。
「でも…!」
「いいから先行けっての!若葉は姉貴の大切な家族だろ!?」
「……。」
涼介の身も心配だけど、ここは言う通りにするしかない。
「…わかった。死ぬんじゃないよ。」
「言われなくてもわかってる。」
私はそう告げ、涼介を置いて守衛の所へ向かった。
「おいてめえらぁ!!てめえらの相手はこの西園寺涼介だオラァ!!!」
「あ?てめえは…、松浦!?」
「あんたらが守衛頼まれてるって事は、大屋はここにいるんだね?」
「ふん、確かにいるけどよ…。佐江子様の邪魔はさせねえぜ?
今すぐぶっ殺してやる!!」
2人相手なら、斬裂刀を使おう。
無数の血が飛び散る中、私は手下を斬る…。
斬るーーー。
斬りまくる!!
…ここまで来れば、ちょろいもんだよ。
バンッ!
扉を開けた先は、だだっ広い大部屋。
ここは…、飲食ルームだろうか。
沢山の椅子やテーブルが並べられている。
「…!若葉!」
奥には若葉がいた。
真正面からは見えないが、手首を縄で縛られてるみたい。
「ん…、…!お姉ちゃん…!」
若葉はゆっくりと目を開け、私がいる事に気付いた。
「え…?何これ…。私、縛られてる…?」
「大丈夫、今助けるから。」
若葉は、気を失ったまま大屋に連れて行かれたのだろうか。
そう思いながら若葉に近付こうとした時だった。
「あら、もう来てたのね。松浦。」
「…!」
声のした方へ向くと、大屋が姿を現した。
「西園寺は?一緒じゃないの?」
「そんな訳ないじゃん。
あんた、何は考えてるの?妹を監禁させて。」
「別に監禁した訳じゃないわよ。ただあんたの妹の目を瞑った顔が見たかっただけ♪」
「嘘つけ!あんたの考えてる事はもうお見通しなんだよ!
そうやって私の見えない所で、こっそり妹を殺そうとか考えてたんだろ!?」
私は、絶対に妹をこんな目に遭わせたくなかった。
私は、両親を失った身だ。
ましてや妹まで失わせる訳にはいかない。
「はぁ…。あんたみたいなのはすぐに口止めしないとダメね。
妹を返してほしかったら、まず私を止めなさい?」
「…言われなくてもわかってるよ。そんなの。」
「ただ、今回はうまくいくかしらね?」
大屋はそう言って嘲笑うと…。
ジャキンッ!
「…!」
大屋はなんと、ショットガンを所持していた。
今回は刃物じゃないのか。
「今回はこれで殺してあげる。」
私は迷わず、鬼薙刀を構えた。
「あんたの何もかもに…、
…風穴を開けてあげる!!」
さあ、ショットガンを所持した大屋はどのくらいの強さなのか。
受けて立ってやる!