Chapter4 血戦③

  • 超短編 2,236文字
  • シリーズ
  • 2019年11月21日 11時台

  • 著者:退会済み
  • 《涼介視点》
    ~1ヶ月前~
     俺は姉貴達と出会うまでは、ずっと大屋軍の手下でいた。
     俺はその時、あの大屋…佐江子様の一面を見てしまった。
     それからが問題だった。


     『西園寺、何してるの?出撃の時間よ?』
     『……。』
     『西園寺、聞いてるの?』

     『…出撃はいいけどよ…。
     俺さ、佐江子様のある一面見たんだよな。』
     『…?』
     ここで俺は、佐江子様のある一面ってのを暴露する。

     『佐江子様はさ、手下にご褒美っつって、毎回手下とやってんだろ?』
     『…は?』
     『正直な事言ってもいいか?佐江子様は、あんな事して恥ずかしくないの?』
     『…さっきから何言ってんの?ご褒美はご褒美でしょ?
     任務で疲れた手下達を癒してあげるのが、主将である私の利権なの。
     たかが恥ずかしいなんて、そんな事…。』
     『主将なら何でもしていいのか?』
     『…!』
     『こんなろくでもねえ軍の中で手下とやってるなんてよ…。
     まるで変態女教師とおねだり男子生徒じゃねえか。』
     『西園寺…!』
     『俺はあんな付き合いには御免だからよ…。


     大屋軍、脱退するわ。』
     『はあ!?』
     『いくらご褒美っつっても、わざわざあんな事される義理はないんでね。』
     『…ふん、あんただって求めてたじゃない。
     いっつも私の近くにいる時、チラチラと私の胸を見てたじゃない。
     本当はあんたにもやらせてあげたかったのに…、チャンスを無駄にしたわね。残念だわぁ…。』
     佐江子様にそう言われた俺は、彼女を睨むように見た。

     『…俺がそんな目でてめえを見てたと思うか?』
     『…はあ?』
     『正直ひいてたよ。てめえのそういう所。
     いつもは力強く手下を慕ってたってのに、その裏の姿は紛れもねえ変態だって事によ。』
     『……。』
     ここで俺は、決意したんだ。

     『だからよ、俺はこの軍辞めるから。そこんとこよろ。』
     俺がそう言うと、佐江子様は怒りが混み上がったせいか、俺を睨んだ。


     『…あんた、そんなに死にたいの?主将にそんな大口叩いて…。
     覚悟はできてるんでしょうね!?』
     『……。』
     そうだよ、佐江子様は…。

     言う事を聞けない手下には殺意持ってんだ。
     『駆け出しの頃のあんたはとっても可愛かったのに…。
     今は言う事の聞かない野良犬ね!』
     そう。俺は野良犬だよ。
     あんな一面見たら、流石に俺もひくよ。
     そこで俺は、ある提案をしたんだ。


     『…じゃあこうしようか。
     今から俺は窓から外に出る。てめえは逃げてる俺を追いかける。』
     『…なに?』
     『…「人生最後の鬼ごっこ」って訳よ。
     命張って逃げてる俺を捕まえてみろってんだ。』

    バリンッ!!
     『西園寺!』
     俺は窓に向かって走り、飛び出した。
     死ぬような高さではないが、外に出る事は変わりない。
     『んじゃ、一旦さよならだな。』
     『…!おい!!西園寺!!!』
     『追いかけるの諦めて逃げんじゃねえぞ!俺とてめえの勝負だ!!
     俺を殺すまで鬼ごっこは続くぜ!あばよ変態主将さんよ!!』
     『西園寺!!!!』


     『あのクソガキ…!


     絶対にぶっ殺してやる…!!』



     ここまでが、俺と佐江子様…大屋の、関係だったーーー。



    《奈那美視点》
     …これが、涼介の真実だ。
     「そうだったんだ…。それで今、大屋から逃げてるって事か。」
     「ああ。お蔭様で、奴らは活動しまくってる。人殺しのな…。」
     「というか、涼介のそのやり方も結構反抗的な気がするけど…。」
     「そこはそっとしておけよ。あれしか方法なかったんだし…。」
     「それもそうか。」
     まあ、私もあんな軍には無理矢理にでも抜け出したくなる。
     「だからよ、姉貴。姉貴も協力してほしいんだ。」
     「……。」
     「俺が奴らに捕まらないよう、俺の護衛を頼みたい。
     もちろん、嫌なら断ってもいいが…。」
     今の涼介の話を聞いて、私は思う。

     涼介は、見た感じ荒くれ者だけど、根は良い奴だ。

     初めて私を「姉貴」と呼んだ時は、最初は混乱したけど、今はそうでもない。

     寧ろそう呼ばれて悪い感じはしないし、正直嬉しかった。

     それから私は、涼介を弟みたいな存在と思っていた。

     両親を亡くし、私の本当の家族は若葉だけだけど、涼介も家族のようなものだ。

     だから…。


     「ここまで聞いて断るなんて言うと思う?」
     「…え?」
     「わざわざ大屋軍から抜け出してここに来たんでしょ?涼介の事情がわかったら、尚更だよ。
     あんたが死なないように、私達もサポートするから。」
     私は、涼介が仲間に入ってから考えた。
     本当のではないけど、涼介は…。


     私の「家族の一人」だ。


     「……。
     フッ、馬鹿野郎だな。」
     「馬鹿野郎はどっち?」
     「さあてねぇ。比べもんになんねえや。」

     そう言われて、私と涼介はお互い笑った。

     私みたいな女は…、馬鹿でもいいんだよ。



     「なあ、姉貴。」
     「ん?」
     「若葉はどこ行った?」
     「…え?」
     そういえば、若葉の姿がどこにもない。
     「…!ひょっとして、まだ外に…?」
     嫌な感じしかしない。
     私は急ぎ足で巣から出た。



    《若葉視点》
     「うぅ~…!ん~…。」
     ちょっと空気を吸いに、私は外に出ていた。
     空は曇り空。
     このまま太陽や月が出ないなら、私は嫌だな。
     お姉ちゃんと再会して、巣から出た時の快晴を早く見たい。
     大きな溜め息が出る。



    ザッ…ザッ…


     「…ん?」
     突然気配を感じた。
     用心のために神楽刀を持ってきておいて良かった。
     私はすぐに刀を構える。



     …でも。



    パシュッ



    ザクッ!
     「うっ…!?」
     もう手遅れだった。
     何かを打たれた。
     「ぅぁっ…!」
     誰かなのかを確かめる前に、私は神楽刀を弾かれた。
     そして…、意識が遠のいていく…。



     「捕 ま え た ♪」


     聞き覚えのある声。



     しかし、とうとう瞼が落ちていく…。




     そして私は……。





     何者か……、確かめられないまま………。






     意識が…………、途切れてしまった……………。






    【投稿者: 2: アズール021】

    あとがき

    あとがきが思い付かない(泣)

    Tweet・・・ツイッターに「読みました。」をする。