Chapter2 仲間③

  • 超短編 2,289文字
  • シリーズ
  • 2019年10月01日 09時台

  • 著者:退会済み
  •  「ぐふぁっ…!」
     「こいつ…!何なんだよ…!」
     敵は既に血まみれだ。
     今回これくらいでいいかな?
     「今なら瀕死で許してあげる。これ以上私に斬られる前に、ここから去った方がいいんじゃない?」
     「…くそが…!」
     敵はゆっくりと立ち上がり、足を引き摺りながら去っていった。

     「あいつら…、何だったんだろう…。」
     「さあ…。でも、どこかの団体だと思う。」
     「え?どうしてそう思うの?」


     「さっき戦ってた時、胸にバッジが付いてたんだ。」

     そう、さっきの奴らはきっとどこかの団体だ。
     気になる所だが、とりあえずそれは後回し。
     今は大屋の居場所を突き止める所からだ。



     「うーん…、特にこれといった証拠はないね。」
     街中を歩き回っても、大屋が残した証拠の欠片もまだ何もない。

     「…!待って、裏路地に何かある。」
     「え?」
     私は、近くの裏路地に何か赤黒いものがあるのに気付いた。


     「これ…、血痕?」
     「…だね。痕の感じからして、既に時間が経ってる。」
     アスファルトに、赤黒く染まった血痕が残されていた。
     これはもしや大屋に関係されるものだと思う。
     でも、死体がどこにもない。
     恐らく凶器で出血させた後、その死体を別の場所に持ち去っていったと考えられる。
     「派手にやってるなぁ…。」
     「彼女を放っておいたらまずい。早くこの場所を安定させないと。
     大屋は、他にも人を殺してる。下手したら何十人もかも。」
     「そんな…。」
     (…何故大屋は人を殺すようになったのか?でも今は答えが見つかりそうにない。
     それがわかるものがこの先にあればいいんだけど、あまり安易なものではない事は確かだ。)
     「…とりあえず、大屋と繋ぐものがわかればそれでいい。
     若葉も協力してくれるよね?」
     「当たり前でしょ?この街自体が危ないもん。
     そのままの状態で暮らすなんて、考えたくもない。」
     「…だね。」
     若葉も、覚悟はできてるみたい。
     そうと決まれば、早いとここの事件を終わらせないと。



     「よお!松浦ぁ!!」
     「ん?…!」
     私は証拠探しに街を歩き回ってた途端、いきなり声をかけられた。
     その方向は…。


     上からだ。
     「あんたを探してたぜ。やっと見つけた。」
     声の主は、昨日私とやり合ったタンクトップ青年だった。
     やっと見つけたって事は…、これはもしやだけど…。

     「何か用?」
     「決まってんだろ?あんたにリベンジしに来たんだ!
     俺ぁあんたに勝つために何時間も特訓したんだ!今度こそあんたをぶちのめしてやる!!」
     正直に言っていい?


     面倒。

     でもやらないとしつこく付きまとうだろうな…。


     「…仕方ないなぁ…。もう今回だけだよ?」
     「そうこなくっちゃな!!」
     まったく、何でこんな時に…。
     まあ、彼がやりたい事だったら別にいいけど。
     「若葉、少しだけ待っててくれる?」
     「う、うん…。」


     「さあ、始めようか。

     覚悟しろ!松浦あぁ!!」

     二度目の戦いが始まる。
     鞘付きの鬼薙刀を構え、前へと踏み出したーーー。



     「ぐぅ…!」
     「はぁ…、はぁ…。」
     彼は、昨日より上達していた。
     でも、私は息を切らせながらも、勝利を掴む事は出来た。
     「畜生…!二度も負けるなんて…!
     あんた…、まさか、凄腕なのか?」
     「そんな所までではないけど…。」
     「くそ!なのに何で俺が負けるんだよ!
     あれだけ特訓してもあんたに勝てないなんて…、はぁ…。」
     私に勝てない事に悔しがる彼。
     すると、彼は座る体勢を整えた。

     「…なあ、あんた。」
     「ん?」

     「…あんたは、何で刀なんてやってるんだ?」
     いきなり、彼から問いかけられた。
     私が刀を持つ理由…。一つだけならある。


     「私はね、両親が殺されて、その仇を討つために刀を持ってるの。
     この刀は、その両親から伝授された。強くなるために。
     …あの頃は何もできなかった。ただ隠れて、親の死を迎えるだけでいた。
     その誰かさんへの恨みを晴らすため。それが、私が刀を持つ理由なんだ。」
     「……。」
     そう語ると彼は、深刻な顔をして黙り込んだ。
     でもその後すぐに微笑む。

     「…そうかい。
     あんたは…、両親のために刀を振る舞う訳かい。
     俺もその気持ちはよくわかる。俺も…、家族を失った身だからな…。」
     どうやら、私の事をわかってくれたみたい。
     「ふぅ…、それにしても、何度挑んでもあんたに勝てないって事はわかった。
     そんだけ気持ち強いもんな。あんたは…。」
     なんだかお互いの気持ちが晴れて、快い気分になった。

     「…そういう訳で…、俺ぁ決めたわ!」
     「…?決めた?」
     私は彼の発言に、キョトンとした。
     すると、土下座をし始めた。



     「「松浦の姉貴」!」



     「…は?」
     「どうかこの俺に、「姉貴」と呼ばせてくれ!!」



     ……。



     え?


     は?



     「え、ちょっと待っ……。」
     「いや、待てねえ!俺、姉貴の実力が身に染みたんだ!
     あんたん所で修行させてくれ!弟子にしてくれ!姉貴!!」
     突然彼に、「姉貴」と呼ばれてしまった。
     若葉から「お姉ちゃん」と呼ばれるのは慣れっこだけど、「姉貴」は流石に…。
     「ちょっと、恥ずかしいよ…///」
     「姉貴!目ぇ逸らさないでくれ!見捨てないでくれぇ!!
     俺、あんたとチーム組みたいんだ!
     あ、別に強制って訳じゃねえ!ただ、姉貴って呼ばせてもらうだけでも構わねえ!!
     頼む!姉貴!!」
     「うぅ…///」
     もう逃げたい、立ち去りたい…。
     姉貴って呼ばれるだけで顔が熱くなる…。
     「お姉ちゃん、ここは賛同してもいいんじゃない?多分そうしないと行かせてもらえないと思うし。」
     「えぇ…。」
     若葉…、そこは止めてよ…。
     お姉ちゃんもう恥ずかしくて耐えられないよ…///
     でももう、そうするしかないか…。


     「勝手にして…///」
     「…!姉貴ーーーーー!!」

     恥ずかしさのあまり、私ほそっぽ向いた。



     こうして、私の元にもう一人、仲間ができたのだったーーー。

    ~Chapter2 仲間 END~

    【投稿者: 2: アズール021】

    あとがき

     はい、これにてChapter2終了です。次回からChapter3となります。終盤のようにギャグ要素も入れようと思いまして。毎度言いますが、バトルシーンは難しいのでカットしていますので、どんなシーンなのかは皆さんのご想像にお任せします(笑)
     最後に仲間となった青年の名前は次回になるかな?お楽しみに。

    Tweet・・・ツイッターに「読みました。」をする。

    コメント一覧 

    1. 1.

      20: なかまくら

      彼が仲間になったんですね。
      いろいろとチャレンジしてくれたほうが好みです^^! 頑張ってください~