「あの人じゃない?」
見つけた。あの女の人。
見た目が一致してる。
「あの!」
「ん?あら、さっきの子じゃない。どうかしたの?」
面と向かえば微笑みを浮かべる。
けど、若葉が犯人見つけたって言うから、ダメ元でやってみる。
「さっきの事件の話ですが…。あなた、この人をご存知で?」
私はさっきの写真を女の人に見せた。
女の人はその写真を凝視して、考える素振りを見せる。
「うーん、これがどうかしたの?」
「この写真の人物が犯人みたいなんです。何か心当たりは?」
「……。」
黙り込んだ。
ここで言ってしまうチャンスかな。
「「大屋 佐江子」を、ご存知ですか?」
「……。」
名前を言い出すと、また黙り込む。
どうやら当たりだったみたい。
「…あーあ、バレちゃったか。」
女はそう言うと、変装していた身ぐるみを脱ぎ捨てた。
正体を現したのだ。
「…それがあんたの姿ですか?」
「もう言い逃れできそうにないからね。これ以上知られてしまったら、取り返しようがないもの。
そうよ。私が「大屋 佐江子」。」
そう言うと、女…大屋 佐江子は、本当の自分を明かしたのだ。
ヘッドドレス、胸元が大きく開いた赤黒のワンピース、赤のハイヒールを着用していた。
流石に女の私でも、胸元に今にも見えそうな部分がある思ってしまう。
…何がとは言わないけど。
「それじゃあ…、やっぱりあなたが…?」
「ここまで知られた以上、あんた達を見過ごす訳にもいかないからね。
大人しくここで死んでもらうわ。」
殺気漂うオーラが感じる。
どうするか…。今の若葉も敵わなそうだし…。
「…お姉ちゃん。」
「…?」
「…やろう。」
「…え?」
突然、若葉が口走った。
もしかして若葉は…、こいつと戦うのか?
「若葉…、本気なの?」
「本気だよ。そうでなかったら何?
私だって、もう守られる立場は卒業したの。」
「…若葉…。」
若葉は私と同じ、刀を教わっていたが…。
他人の前になると、いつも私の陰に隠れていて、物凄く人見知りだった。
そんな人見知りな妹が、こんなに成長するなんて思わなかった。
「へぇ…、いい度胸してるじゃない。でも、私はそう簡単には倒されないわよ?」
「そんなの、やってみないとわかんないじゃん。」
若葉は本気の目をしていた。
私も、腹括って刀を構える。
「じゃあ行くよ。若葉。」
「さあ、地獄の時間を味わいなさい!!」
戦いが始まった。
私と若葉の刀と、大屋の拳が今、ぶつかり合うーーー。
「うぅ…!」
長い戦いが続いた中、大屋は膝まづいた。
「卑怯よ!1人相手に2人がかりなんて!」
「2人相手にしちゃダメなんて言ってないでしょ?」
つい正論(?)を言ってしまった。
まあ、それが私の癖というか…ね…。
「…でも、大したもんだよ。あの現場で女の人殺したのに、それを隠していたなんてね。
よく逃れたよね。その罪から。」
「……。」
大屋は黙り込むと、ゆっくりと立ち上がる。
「うふ…、うふふふふ……。」
すると、何故か笑い出した。
「でも…、あんた達の負けよ。」
「…は?」
「ここで私を捕まえられないようじゃ、あんた達の負け。私を捕まえるまでずっとそれよ。」
「なに!?」
大屋がそう言うと、若葉が急に歯向かう。
若葉は、大屋に殺気を立てているように睨んでいた。
「それじゃ、負け犬はそこでお座りしてなさい。」
大屋はそう告げると、若葉の足が動く。
「待て!」
「若葉!」
スチャッ
「!?」
バンッ!
「あっぶな!」
突然大屋は銃を若葉に向け、撃ってきた。
間一髪で頭を下げさせ、何とか銃弾をかわす。
「…大丈夫?」
「うん…。」
「ダメだよ。1人で歯向かっちゃ。下手したら若葉が死んでたんだよ?」
「…ごめんなさい…。」
「…とりあえず、今の騒ぎをお巡りさんに報告した方がいいね。」
そう言うと、殺人現場にいたお巡りさんに報告しに、ビルへ向かった。
「…そうか。そいつが犯人だったんだな。
で、バレないように変装していたと。」
「ええ。私の見る限り、相当の強者です。並の人間には敵わないくらい。」
犯人…大屋佐江子は、普通の人間じゃ敵わない相手だ。
下手したら、すぐに殺される。油断禁物だ。
「とにかくわかった。大屋佐江子は、こっちで注意をかけておくよ。」
「ありがとうございます。」
私と若葉はお辞儀をし、警察署を後にした。
「…こんな綺麗な夜景があったんだね。」
「うん。」
私達が今いるのは、殺人現場とは別のビルの屋上。
非常階段から昇った所。
「ねえ、お姉ちゃん。」
「ん?」
「お姉ちゃんは…、大屋を追うの?」
「…当たり前でしょ。」
彼女が放った言葉…捕まえないと私達が負け続ける。
そんなのは嫌。負けるのだけは。
私は昔から負けず嫌いだった。
私が古武道を習ったのも、勝負に負けたくなかったから。
どちらかと言えば、強気なのは私の方。
何にも縛られたくなかった。
亡くなった両親の仇を討てないようじゃ、彼女の言っていた通り、負け続ける。
あの頃は、何もできなかった。
いつか両親を殺した奴を見つけ、仇を討ってやる。
そればかり考えていた。
「…昔からだよね。お姉ちゃん。」
「…え?」
「勝負は勝たないと意味がないって想い。
お姉ちゃんが小さい時、上手くいかなくてずっと泣いてたよね。
それを見て思ったんだ。「お姉ちゃんは負けず嫌いなんだ」って…。」
「……。
…まったく、よくそんな事覚えてたね。
若葉だって私に頭撫でられるの、まだ好きじゃん。まだまだ子供な所。」
「ふぇ!?そ、そんな事ないよ~。大体お姉ちゃんもまだ子供でしょ?」
「ふーん…。」
じゃあちょっと意地悪しようかな。
「ふぁっ。えへへ~。」
「ほら、子供じゃん。」
「うっ、も、もう!お姉ちゃんの意地悪~!」
「ふふっ…。」
やっぱりいくつになっても子供だなぁ。
それが、私の可愛い妹。
大屋佐江子。
彼女は、絶対に捕まえる。
そうなるまで、私は何度でも挑んでやる。
私が勝つまで、絶対に諦めないからーーー。
~Chapter1 遭遇 END~
あとがき
とりあえずこれでChapter1は終了となります。バトルシーンは書くのが難しいのでカットさせていただきました。どんなバトルなのかは、皆さんのご想像にお任せします(笑)
次回からChapter2です。色々と文章が成ってないかもですが、次回もよろしくお願いします。
登場人物紹介に関しては、その人物が登場したらまたあとがきに書こうと思います。
次回から投稿が遅れます。ご了承ください。
コメント一覧
当面の敵も現れて、ともかくひと段落でしょうか。
昔のことを覚えていすぎる妹が伏線のような気がしてならないなかまくらでした。