「何かあったんですか?」
「…ああ、たった今このビルで殺人事件が起きたんだ。今その現場に向かっている所であってね。」
目の前にあるのは、8階くらい建てられたビル。
この中で起きたのだろうか。
「犯人は今、どうなってます?」
「それがな…、まだ捕まってないらしいんだ。相当逃げ足が速いらしくてね。」
「あの、実際どうなってるか見せてくれませんか?」
「え?お姉ちゃん…?」
会話だけではわからないと思い、私は現場に入ろうとする。
普通はダメだけど、どうしても気になってしまう。
「いやいや、一般人を現場に入れる訳にはいかないよ。」
「もしかしたら、犯人の特徴に繋がる何かがあるかもしれません。だから、お願いします。」
「しかしだなぁ…。」
うーん、やはり難しそうか…?
「とりあえず、何か証拠が出れば俺が調べに行くけど…、それでもいいかい?」
「ええ、でも…。」
調べに行かせるのはなぁ…。
でも一般人が入れないのなら、そうしても良さそうだけど…。
「あら?なら私が案内しましょうか?」
突然、後ろから女性の声が聞こえた。
そこには、とても綺麗で上品そうな女性が一人立っていた。
「え、でも…。」
「私はこのビルの関係者なの。いいでしょ?」
「いや、関係者だからって、現場に案内させるのは…。」
「もし何かあったら、私が責任取るから。」
なんてストレートなんだろう。
思わず見入ってしまった。
「…いいんですか?」
「ええ。あなたはお巡りさんのお手伝いをしたいだけでしょ?」
「お手伝いというか…。」
「まあいいわ。付いて来なさい。」
本当にいいのか。でも中が気になってしょうがない。
私は、その女性に付いて行く事にした。
ビルの中は、いかにもオフィスって感じだ。
…という事は、ここは株式会社か何かかな?
そんな場所で殺人事件なんて、普通は考えられない。
「…ここが殺人現場ね。」
着いたみたいだ。
「あ、ちょっと、勝手に入られちゃ困りますよ。」
「いいのよ。私はここの関係者だから。
何かあったら、私が責任取るわ。」
とりあえず、中に入らせてもらった。
そこには、一人の女性の死体が転がっていた。
「うわぁ…、酷い…。」
それを見た若葉は、背筋を凍らせて呟いた。
死体には胸に銃創があり、腹に4箇所刺傷が残っている。
恐らく犯人は銃で女性を撃った後、倒れた好きに刃物で刺した…という事になるかな。
「犯人の特徴とかはありますか?」
「ああ、たった今調べたけど、こいつみたいなんだ。」
警察がそう言うと、犯人の写真を私達に見せた。
「うーん…、見た事ないですね…。」
「名前は「大屋 佐江子」。どんな人物かは、具体的にはわかっていない。」
「そうですか…。」
とりあえず、私も写真の中の犯人を探してみる事にする。
「この写真、私が貰ってもいいですか?」
「え?別にいいが…、何するんだい?」
「理由はないけど…、でも、もしも見つけた時に通報できるかと。」
「大丈夫なのか?一般人に任せる事は…。」
「いえ、こう見えて事件には慣れてます。なので、お願いします。」
「…そこまで言うなら…。」
そして私は写真を頼りにして、犯人探しを始めたーーー。
「あのさ、お姉ちゃん。」
「ん?」
若葉が何か言いたそうにしている。
何だろう?
「この写真の人、私知ってるよ。」
「…え?知り合い?」
「ううん。というか、お姉ちゃんが気付いてないだけだよ。」
若葉の口から語られるその言葉はーーー。
「この人、さっき私達を案内してた女の人だよ。」
「…!…なんだって…!?」
さっきのあの綺麗な女の人が…!?この事件の犯人…!?
でもそんな事が…。
「写真見た時、何か見た事あるなーって女の人を見てみたら、その人が犯人だった。
あの人はきっと、自分が被害者の女の人を殺した犯人だっていう事、隠してたんだよ。」
「…嘘…でしょ…?」
どうやら若葉には、さっき私達を案内していた女の人が犯人だと認識していたらしい。
バレないようにサングラスで変装していたって事か…!
くそ!何であの時気づけなかったんだ!
「…とりあえず、そいつを探そう。まずはそこから。
このまま黙っていられないから。」
「わかった。」
私と若葉は、もう一度会いに行こうと女の人の所へと走り出していった。
あとがき
~登場人物紹介~
松浦 若葉(まつうら わかば)
主人公・奈那美の妹。15歳。姉の奈那美との姉妹仲は良好であるが、奈那美が一匹狼になって以来、姉と共に過ごせられない事を苦しく思っていた。奈那美と同じで親から剣術を教わり、強くなるために幾度も姉と斬り合いをしていた。ちなみに、若葉の背負っている刀は「神楽刀」という。
好物はレモン、嫌いなものは甘い食べ物であり、姉とは正反対である。姉に頭を撫でられる事を好む。
コメント一覧
まさかの、犯人は現場に戻るってやつですね。
最初の刑事さん?みたいな人、相当抜けてますね(苦笑