Chapter1 遭遇③

  • 超短編 1,691文字
  • シリーズ
  • 2019年08月27日 14時台

  • 著者:退会済み
  •  「何かあったんですか?」
     「…ああ、たった今このビルで殺人事件が起きたんだ。今その現場に向かっている所であってね。」
     目の前にあるのは、8階くらい建てられたビル。
     この中で起きたのだろうか。
     「犯人は今、どうなってます?」
     「それがな…、まだ捕まってないらしいんだ。相当逃げ足が速いらしくてね。」
     「あの、実際どうなってるか見せてくれませんか?」
     「え?お姉ちゃん…?」
     会話だけではわからないと思い、私は現場に入ろうとする。
     普通はダメだけど、どうしても気になってしまう。
     「いやいや、一般人を現場に入れる訳にはいかないよ。」
     「もしかしたら、犯人の特徴に繋がる何かがあるかもしれません。だから、お願いします。」
     「しかしだなぁ…。」
     うーん、やはり難しそうか…?
     「とりあえず、何か証拠が出れば俺が調べに行くけど…、それでもいいかい?」
     「ええ、でも…。」
     調べに行かせるのはなぁ…。
     でも一般人が入れないのなら、そうしても良さそうだけど…。


     「あら?なら私が案内しましょうか?」
     突然、後ろから女性の声が聞こえた。
     そこには、とても綺麗で上品そうな女性が一人立っていた。
     「え、でも…。」
     「私はこのビルの関係者なの。いいでしょ?」
     「いや、関係者だからって、現場に案内させるのは…。」
     「もし何かあったら、私が責任取るから。」
     なんてストレートなんだろう。
     思わず見入ってしまった。
     「…いいんですか?」
     「ええ。あなたはお巡りさんのお手伝いをしたいだけでしょ?」
     「お手伝いというか…。」
     「まあいいわ。付いて来なさい。」
     本当にいいのか。でも中が気になってしょうがない。
     私は、その女性に付いて行く事にした。



     ビルの中は、いかにもオフィスって感じだ。
     …という事は、ここは株式会社か何かかな?
     そんな場所で殺人事件なんて、普通は考えられない。
     「…ここが殺人現場ね。」
     着いたみたいだ。
     「あ、ちょっと、勝手に入られちゃ困りますよ。」
     「いいのよ。私はここの関係者だから。
     何かあったら、私が責任取るわ。」
     とりあえず、中に入らせてもらった。

     そこには、一人の女性の死体が転がっていた。
     「うわぁ…、酷い…。」
     それを見た若葉は、背筋を凍らせて呟いた。
     死体には胸に銃創があり、腹に4箇所刺傷が残っている。
     恐らく犯人は銃で女性を撃った後、倒れた好きに刃物で刺した…という事になるかな。
     「犯人の特徴とかはありますか?」
     「ああ、たった今調べたけど、こいつみたいなんだ。」
     警察がそう言うと、犯人の写真を私達に見せた。

     「うーん…、見た事ないですね…。」
     「名前は「大屋 佐江子」。どんな人物かは、具体的にはわかっていない。」
     「そうですか…。」
     とりあえず、私も写真の中の犯人を探してみる事にする。
     「この写真、私が貰ってもいいですか?」
     「え?別にいいが…、何するんだい?」
     「理由はないけど…、でも、もしも見つけた時に通報できるかと。」
     「大丈夫なのか?一般人に任せる事は…。」
     「いえ、こう見えて事件には慣れてます。なので、お願いします。」
     「…そこまで言うなら…。」

     そして私は写真を頼りにして、犯人探しを始めたーーー。



     「あのさ、お姉ちゃん。」
     「ん?」
     若葉が何か言いたそうにしている。
     何だろう?

     「この写真の人、私知ってるよ。」
     「…え?知り合い?」
     「ううん。というか、お姉ちゃんが気付いてないだけだよ。」
     若葉の口から語られるその言葉はーーー。



     「この人、さっき私達を案内してた女の人だよ。」



     「…!…なんだって…!?」
     さっきのあの綺麗な女の人が…!?この事件の犯人…!?
     でもそんな事が…。

     「写真見た時、何か見た事あるなーって女の人を見てみたら、その人が犯人だった。
     あの人はきっと、自分が被害者の女の人を殺した犯人だっていう事、隠してたんだよ。」
     「…嘘…でしょ…?」
     どうやら若葉には、さっき私達を案内していた女の人が犯人だと認識していたらしい。
     バレないようにサングラスで変装していたって事か…!
     くそ!何であの時気づけなかったんだ!

     「…とりあえず、そいつを探そう。まずはそこから。
     このまま黙っていられないから。」
     「わかった。」
     私と若葉は、もう一度会いに行こうと女の人の所へと走り出していった。

    【投稿者: 2: アズール021】

    あとがき

    ~登場人物紹介~
    松浦 若葉(まつうら わかば)
     主人公・奈那美の妹。15歳。姉の奈那美との姉妹仲は良好であるが、奈那美が一匹狼になって以来、姉と共に過ごせられない事を苦しく思っていた。奈那美と同じで親から剣術を教わり、強くなるために幾度も姉と斬り合いをしていた。ちなみに、若葉の背負っている刀は「神楽刀」という。
     好物はレモン、嫌いなものは甘い食べ物であり、姉とは正反対である。姉に頭を撫でられる事を好む。

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    コメント一覧 

    1. 1.

      20: なかまくら

      まさかの、犯人は現場に戻るってやつですね。
      最初の刑事さん?みたいな人、相当抜けてますね(苦笑