小さくても大きな幸せ

  • 超短編 754文字
  • 日常
  • 2019年07月04日 20時台

  • 著者: 3: 寄り道
  • ここんとこずっと、旦那の帰りが遅い。
    旦那と結婚して、早いもので25年目。
    良くも悪くも、25年も連れ添っていると、結婚した当初に比べると新鮮味は薄れていき、帰りが遅くなるという報告メールも、もう届かない。
    はたから見たら、幸せな家族なんだと思う。
    結婚してすぐに生まれた娘は、成人になるとすぐにアパレル企業に勤め始め、長男は大学に入り、今日は友達と勉強ということで、家に帰ってこない。次男は、自室でテレビを見ている。
    今日も、次男と私と、帰ってくるか分からないが、一応、旦那の分の料理を、食卓に並べ、次男の部屋のドアをノックし「晩ご飯できたよ」と一声かける。
    次男は食卓に乗っていたリモコンを手に取り、テレビを点け椅子に座る。
    濡れた手をタオルで拭い、私も椅子に座り「頂きます」と手を合わせる。
    「どう?」と訊くと「うまいよ」と応えてくれる次男。その言葉に作ってよかったと思う反面、目尻の先にある、ラップにくるまった料理にため息がでる。
    今日も帰りは遅いのかな。
    食べ終えた食器を片付けるさなか、玄関先から物音が。
    「ただいまー」とリビングのドアが開いた。
    帰ってきたのは旦那だった。
    「今日は帰り早いんですね」
    「当たり前だろう。今日は、25年目の結婚記念日じゃないか」
    「覚えてたんだ」
    旦那はスーツのボタンを外すと、手に持っていたコンビニ袋を私によこし「ごめんな。25年目の結婚記念日なのに、こんなのしか用意できなくて」
    中に入っていたのは、ケーキだった。
    「今度、休みのときに、改めて25年目を祝おうな!」
    旦那が早く帰ってきた。
    今日が、25年目の結婚記念日。それを忘れていなかった。
    たったそれだけのことなのに、目に熱いものが溜まっていた。
    照れを隠すように「今、お味噌汁温めるね」そう言って、食器棚から、ケーキフォークを2つ取り出した。

    【投稿者: 3: 寄り道】

    あとがき

    今の僕には、結婚はおろか、彼女すらいない状況で、さらにいうと父子家庭で育ったものだから、結婚と聞くと、どこか漫画や小説、ドラマみたいな感覚になってしまうんです。
    ですが最近、クラスメイトだった友達が結婚すると聞いて、もうそんな歳なのかあ、、、と思っていたら、ふとこんなのが出来ました。
    結婚ってなんなんでしょうね。
    こんな妄想を書いても、まだ “結婚” は幻想のままです。

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    コメント一覧 

    1. 1.

      2: 幸楽堂

      結婚ですか……少なくとも恋愛の延長として考えたらあかんと思います。恋愛はお互いにいいとこしか見せない。結婚して寝起きを共にする生活になると、経済的な現実問題もあるし、顔だってメイクなしのド素顔を見せつけられることにもなり、いままで見てこなかった相手の汚い面も見なきゃいけなくなる。そして幻滅することもあります。それに耐えられるほどの愛情っていうのは、人間の外面ではなく内面です。人間性です。そこで互いに敬い合う気持ちがなければ結婚生活は長続きはしません。そのことだけは若い人たちに伝えておきたい。