始まり

  • 超短編 2,630文字
  • シリーズ
  • 2018年03月19日 12時台

  • 著者: リオン
  •  東京秋葉原。
     人通りが多い中、18歳と16歳の兄妹がいる。
     兄の名は、「高梨 來斗(たかなし らいと)」。
     針葉樹の近くに寄り掛かり、携帯を弄っていた。
     「お兄ちゃーん!」
     少女の声が聞こえた。
     少女は來斗の妹、「智尋(ちひろ)」。
     來斗は妹の智尋と待ち合わせをしていた。
     「ごめんね、遅くなって…。」
     「別にいいよ。そんじゃあ行くか。」

     來斗と智尋は、仲のいい兄妹。
     智尋は幼少期から來斗に憧れており、來斗のような人間になりたいと意気込んでいた。
     しかし智尋は、長い間ずっといじめられてばかりだった。
     そんな中助けてくれたのは、兄の來斗。
     智尋にとって、來斗はかけがえのない存在だった。
     「そういや智尋。高校生になってから友達できたか?」
     「ううん、まだ全然…。」
     「そうか。まあ、今までの友達とはもう離れ離れになっちまったもんだし、何かあったら、兄ちゃんがサポートするからさ。」
     「うん、ありがとう、お兄ちゃん。」

     「ん…?何だろ、あれ…。」
     街中を歩いていると、多数の人が集まっているのを見かけた。
     「ちょっと行ってみるか。」
     恐る恐る近寄る來斗と智尋。
     その先には…。
     「え…、何あれ…!」
     「どうしてあんなものが…?」
     二人が目にしたのは、蜘蛛のような気味の悪い物体だった。
     近くには警官や自衛隊がいたようで、周りには一般人が集まっていた。
     「物体を確保。これより焼却を始める。」
     自衛隊がバーナーを物体に向け、火をかけると…。

     「グギャアァァァァアッ!!」
     「…!何だ…!?」
     「まだ生きてたのか!」
     物体が突然動き出し、周りがざわめいた。
     どうやら、あの物体は蜘蛛型のクリーチャーだったようだ。
     そして…。

     グシュッ!ザシュッ!!
     「ひぃっ!!」
     「…!きゃあぁぁぁあっ!!」
     近くにいた女性が悲鳴を上げると、人々は一斉に逃げ出した。
     「おいおい、マジかよ…!」
     來斗は呆然と立ち、物体が離れたところで、警官や自衛隊がいたところへと近寄った。
     「これはひでえ…、なんてことを…!」
     來斗が目にしたのは、首を切り落とされた警官と、内臓を抉られた自衛隊の死体だった。
     「お兄…ちゃん…。」
     智尋は怯え、立ち竦んでいた状態でいた。
     確かに、智尋には衝撃的だった。
     智尋は顔色を悪くさせ、今にも嘔吐しそうな状態だった。
     「…とにかくここから離れよう。それから落ち着こう。な?」
     「うん…。」
     胸を抑え、嘔吐を止めようとする智尋。
     二人はその場から、すぐに離れた。

     「う″えぇっ…!ゲホッ…!ゲホッ…!」
     公衆トイレで、智尋は便器に胃液を吐いた。
     女子トイレで仕方なかったが、來斗はそばで智尋の背中を擦った。
     「大丈夫か?」
     「はぁ…、はぁ…、う″ぇっ…!」
     「無理に全部吐かなくていいからな?兄ちゃんが背中擦ってやるから。」
     「ゲホッ…!ゲホッ…!」
     智尋の嘔吐は止まらなかった。
     智尋は気持ち悪さが込み上がり、嘔吐せずにはいられない状態だった。

     「はぁ…、はぁ…。」
     「落ち着いたか?」
     「うん…、何とか…。」
     「また気持ち悪くなったらすぐ言えな。無理だけは絶対にするなよ。」
     「うん…、ありがとう…。」
     智尋の嘔吐は、ようやく止まった。
     口から胃液が垂れ流れているが、落ち着いてはいるようだ。

     「奴は…、まだいるか。」
     蜘蛛型のクリーチャーは、紛れもなく人々を襲っていた。
     女性や小さい子供まで無差別に、無惨に殺し続けるクリーチャー。
     あのクリーチャーがいる限り、街中は地獄だ。
     來斗は握り拳を作り、クリーチャーを虐殺しようと考え込んでいた。
     「お兄ちゃん、どうするの…?」
     「…。」
     「このままじゃ、町中めちゃくちゃ…。私、そんなの嫌だよ…。」
     智尋はすでに怯えていた。
     「…殺すしかないだろう。」
     「…え…?」
     「奴が人を殺しているのならば、逆にこっちが奴を殺せばいいんだ。」
     「殺すって言っても、それができる物なんてどこにあるの…!?」
     「それは…。…!」
     來斗は、向こうの建物に何かがあるのに気が付いた。

     「…これを使おう。」
     「それって…、鉄パイプ…?」
     來斗が手にしたのは、鉄パイプだった。
     どうやら、向こう側に見えた工事現場から取ってきたらしい。
     「でも、そんなんであいつを倒せるのかな…。」
     「一か八かだ。行こう。」
     來斗と智尋は鉄パイプを構え、クリーチャーに近寄った。

     「おらあぁっ!!」
    ドゴッ!
     來斗は鉄パイプをクリーチャーに殴り付けた。
    「グギャアァァァァアッ!!」
     「ちぃ…!やはり一発じゃ死なないか…!」
     当たり前のように、クリーチャーは鉄パイプに殴られても平気だった。
     「智尋!奴の気を引け!その隙に兄ちゃんが奴を殴る!」
     「え!?私が!?」
     「お前が何もしなかったら、兄ちゃんは死んでもいいのか?」
     「それは…、嫌だよ…。」
     「なら、そうしか道はない。行くぞ!」
     智尋は少々怯え気味だが、もうやるしかなかった。
     今まで來斗に守られた智尋。今は智尋が來斗を守りに行く番だ。

     「お化けさん、こっちだよー!」
     「グ?ギイヤアァァァァアッ!」
     クリーチャーは智尋に気付き、襲う。
     その隙に來斗は後ろから攻撃するが、クリーチャーが速すぎるためなかなか狙えない。
     (くそっ、他に何か方法は…!?)
     「お兄ちゃん、これで本当に倒せるの!?」
     「少し待て!他の方法を考える!」
     クリーチャーの気を引くのはいいが、それだけだは倒せなさそうだ。
     「(…!あれを使うか…!)智尋!針葉樹だ!」
     「…!あれか!」
     來斗はクリーチャーを針葉樹のところまで気を引かせることを、智尋に指示した。

     「てぃっ!」
     ドゴォッ!
     「グギャアァァァァアッ!!」
     智尋はクリーチャーから逃れ、クリーチャーは針葉樹に激突した。
     (やはり弱点は頭か…!)
     クリーチャーは真っ先に直進したため、一度動き出したら曲折できないだろう。
     その一面を見て、來斗は針葉樹に激突させようと作戦を立てていた。
     「ぶっ刺してやる!」
     ザシュッ!!
     「グッ!?ギイィヤアァァァァアッ!!!」
     來斗は鉄パイプをクリーチャーの頭に刺した。
     頭から多量の血が噴き出す。
     「智尋!鉄パイプを奴の頭に刺すんだ!」
     「う、うん!」
     智尋は勇気を出して向かう。
     「てえぇぇぇえいっ!」
     ザシュッ!!
     「グギヤアァァァァアッ!!」
     ダイナミックに刺さり、やがてクリーチャーは倒れた。
     腕が刃じみて苦戦するのかと思いきや、そうでもなかった。

     ドオォーーーンッ!!
     「ひゃっ!」
     「…!何だ!?」
     突然、爆発音が鳴り響いた。
     人々はざわめき、逃げ惑う。
     「こうしちゃいられない。智尋、行くぞ!」
     「う、うん!」
     爆発が起きたところへ向かう來斗と智尋。
     ここから、二人に襲いかかる恐怖が始まる。

    【投稿者: リオン】

    あとがき

    皆さんお久しぶりです。
    早速新シリーズを書いてみました。
    何でもかんでも話の途中で新シリーズ書いてしまう自分ですが、投稿したくて仕方ないんです(笑)
    今回は自分の空想の世界で考えた物語を小説にしてみました。
    またもやサバイバルホラー系ですが、楽しんでもらえると嬉しいです。

    Tweet・・・ツイッターに「読みました。」をする。

    コメント一覧 

    1. 1.

      20: なかまくら

      智尋さん勇敢すぎでしょうww
      これでいじめられるとか、いじめるほうの鈍感さがやばいですね。
      いじめっ子が、クリーチャーに追い詰められて、智尋さんが助けに来る展開とか、ないかなぁ・・・。