月がきれいだ

  • 超短編 460文字
  • 祭り
  • 2017年12月11日 03時台

  • 著者: でんでろmk2
  •  夢を見た。
     老いた私は、親指に載せた小さな指輪を弾いて、おもちゃのクワガタのハサミにハメようと、企んでいた。
     狙いを定めて、勢いよく弾く。指輪は回転しながら弧を描き、クワガタのハサミの先端に……、
    乾いた音を立ててぶつかると、弾かれて右の方に弧を描いて飛んで行く。その先には……、
     病院のベッドをリクライニングさせて、今まさに、妻が食べようとしていたヨーグルトの中に、ポチャリ。
    「あら、まぁ、素敵なトッピング」
    「そんなトッピングがありますか」
    「ありますよ。洋一が宇宙に行く頃には、きっと」
     洋一は、彼女がまだ若い頃、交通事故で死んだ。宇宙飛行士になるのが夢だった。
     妻は、非常に気丈な女性で、私はまだ、みっつの涙しか見たことがない。もちろん、そのひとつが、洋一だ。
    「きっと、洋一が、あなたの好きな世界へ、連れて行ってくれますよ」
     ボケが、彼女に幸せを見せてくれている。悪い事ばかりではないのかもしれない。

     目を覚まし、窓を開ける。月がきれいだ。ともに見上げる者などいなくても。こちらの都合など構わずに。
     月はきれいなのだからしょうがない。

    【投稿者: でんでろmk2】

    あとがき

    同タイ遅刻、兼ねる。

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    コメント一覧 

    1. 1.

      1: 9: けにお21

      作者は誰だろうか?推理しよう。

      まず、主人公は男性なので、作者は男性である可能性が高い。

      また、主人公に妻や子供がいる。これらを描くには、それなりの経験が必要であろう。つまり、作者は年配ではなかろうか。

      会話文に個性が出ると思う。落ち着いた言い回しをしているので、作者はやはり落ち着いた大人。

      また、あとがきに同タイ遅刻兼ねる、とある。実はこれが大きなヒントで、少なくとも過去に同タイトルイベントに参加したことがある作者で間違いないだろう。また、渋い言い回しから年配の方だろう。


      以上から、私は本作の作者を、鉄工所さんと推測します。


    2. 2.

      1: howame

      ボケット
      クワガタが出てくるとすぐ茶屋さんかと思ってしまうのだがいやクワガタはキーワードだし・・・
      ある程度の年はとっているだろうから、なかまくらさんかけにおさん。けにおさんではないかなぁ。


    3. 3.

      1: 3: ヒヒヒ

      砂犬ですこんばんは。
      「ボケが、彼女に幸せを見せてくれる」の下りで切なくなりました。歴史に残した人でさえもボケて、自分自身のことすら忘れてしまう。でもそうなることで、たどり着ける境地があるのかもしれませんね。
      予想 絞り切れません、けにおさん、howameさん、キノさん……ことはさんも連想しました。


    4. 4.

      1: 鉄工所

      鉄工所さん?けにおさん?茶屋さん?

      多分、順番の通りでしょうか……


    5. 5.

      20: なかまくら

      スズメノテツパウです。
      最後の月はきれいなのだからしょうがない
      が、すごくいいですねぇ。ボケちゃって、それでも一緒にいたい。そんな風に思える人と巡り会えたのですから、幸せですね。

      さて、作者さんは、とんでもないヒントを遺して言ってしまったのだった!!!
      同タイトルを書いてないっ!(姑息なっ! といわれても容赦しませんぜ、旦那!)
      ということは、
      鉄工所さん、でんでろmk2さん、howameさん、ミチャ寺さん、なかまくらさん、ヒヒヒさんではないっ!
      ・・・ということは、だ、誰でしょう??
      女性が書いている気がするのですけどね。


    6. 6.

      3: 茶屋

      「どうもみなさん、実況のアメジストと」

      「解説のガーネットです」

      「さて、本作品の予想は割れているようですが、ガーネットさんはどう思いますか?」

      「そうですね、予想を言う前にまず感想から入りましょう。この作品は『夢を見た』という部分から『目を覚まし』までは主人公の夢であるということです。夢の中の幸せはもしかしたら目を覚ましたら辛い現実に塗りつぶされてしまうかもしれません。『こちらの都合など構わずに』の部分から主人公の苦悩がうかがえます。しかし、この最後の文の語感は非情に前向きな良い意味でのやけっぱちとでも言いましょうか、強い意志を感じます。それは夢が彼に与えた希望なのではないでしょうか?例え妻がぼけても愛し続けるというそんな素敵な感覚が私には感じられたのです」

      「なるほど、それを踏まえたうえで予想はどうなるのでしょうか?」

      「この手の作品を書く人は複数いますが、まず鉄工所さん、茶屋さん、なかまくらさん、そして蜜鬼さんが思い浮かびます。その中で誰か一人を選ぶなら蜜鬼さんだとおもいますが、他の作品を熟読する必要がありますね」

      「今回の祭りも一筋なわではいかないようですね、それでは皆さん次回の予想でお会いしましょう」


    7. 7.

      1: howame

      ボケットですが、この作品はでんでろさんかと思いましたが、いやキノさんが書いたのではないかと思いなおしました。


    8. 8.

      爪楊枝

      シラカバ針です。
      キーワード全部入りですかね?(数えてない
      夢を使ってうまく処理しましたね。特にクワガタ!
      ガーネットさんの感想が非常に的確で、あまり付け加えることがないかもしれません。
      夢を見た。がどこまでかかっているのかがポイントで、ほとんど全編に渡って夢なのが、想像を膨らませてくれます。
      基本的に夢は現実の表象ですから、現実が歪んで現れていると思うと、個々の描写の意味合いを深く考察したくなりますね。
      ボケた彼女であっても、どこか微笑ましい視点で見ているのが愛だなぁと思いました。


    9. 9.

      爪楊枝

      また予想を忘れてた!けにおさんっぽいですが違うかもしれません。保留です。シラカバ針でした。