「どうした」、僕は言う。思念を維持できぬ崩れかけた体で。「どうしよう」、彼女は答える。どうにも薄汚れた物理と意識で。
僕の右腕は落ちた。狙撃によって。「くだらないな」僕は嘯き、膝を折り曲げ、横たわる彼女の横で胡座をつくる。「もう、どうしようもないのかもな」。彼女にか、それとも自分にか、僕はつぶやいたと思う。座り込んでからのことは、あまり覚えていない。なんとうなく、彼女が、土に汚れて横たわったまま、綺麗な瞳で、鬱陶しそうに三白眼を僕に向けていた気がする。とても煙草を吸いたかったが、手元には何もなかったことはよく覚えている。逆に言うと、ほとんどそれ以外の記憶は、以降はない。故に、これからは彼女の記憶になる。彼女は言う。「ねえ、あなたは軍属なの?」、ほどけかけた僕はその問いには答えたらしい。「ああ、そうだよ。軍属だ」。そう答えた僕の顔は多分あおざめていたことだろう。彼女はそれを聞いて笑ったそうだ。「あはは、残念だね、不幸をどうしようもなく不幸にしてるくせに、あたしにどうしようもないなんて言ってるんだからさ」、そんな嘲りのあとで彼女の逆襲が始まる。「どうしよう、じゃなかったね、この軍属が。あなたと契約してあげる。どうしようもなく幸福にしてあげる。残念だね、生き延びさせてあげるよ。あなたは力を手に入れる。ちょっとまずいくらいのヤツをね」。彼女はそう言う。とても強気な言葉だ。僕は憐れむ。彼女の混迷した言葉に。でも、彼女があばら骨のあたりから僕の中に侵入した。
あとがき
ふざけたんです
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