君のしおり

  • 超短編 897文字
  • 日常
  • 2017年09月22日 00時台

  • 著者:
  • 愛は可愛いものが好きだった。
    テディベアシリーズのストラップを見つけては集めてたし、一緒にお出かけしては可愛いものを見つけて笑顔で教えてくれた。

    愛はお喋りだった。
    いつも私に話しかけてきて、色んなことを教えてくれた。このブランドの服は素敵。この女優さんはとっても綺麗。
    お昼の時間にやってきては、笑顔で話してくれた。他愛もない会話だが、話し上手の彼女の話はいくら聞いても退屈しなかった。

    愛は人といるのが好きだった。
    ここのお店、多分気に入るから一緒に行こうとさそっては、私とお店を巡り歩いた。私から誘うと、二つ返事でどんな所でもついてきてくれた。

    だけど、ある日、図書館に行きたいと言ったら断られた。静かな雰囲気が苦手なんだそうだ。彼女の性格からしたら確かにそうだろう。是非二人で行きたかったが、仕方なく、私はひとりで図書館へ行った。


    翌日。私は一冊の本を借りてきた。
    愛は聞く。何の本?
    私は題名を読んだ。『心を映す本』。
    おすすめ。気になったら読んでみて。

    その次の日。私が本を返しに行こうとすると、愛にその本を貸してほしいと言われた。
    私は嬉しくなって、司書さんに二度借りさせてもらった。

    また次の日。
    愛は死んだ。交通事故だった。
    前を見ないで歩いていて赤信号を渡ってしまったそうだ。彼女の手には一冊の本が落ちていたと言う。
    私が貸した本だった。

    警察の人が来て、本を見せられた。
    一番彼女と近しい存在だったので話を聞きに来たらしい。本には知らない
    しおりが挟まっていた。
    愛のものだった。彼女のものとは思えないくらい質素で渋いしおりだった。
    警察の人か教えてくれたのだが、
    近くにいた人の話によると、彼女が
    しおりを挟んだ瞬間に事故が起こってしまった、とのことだった。
    その時、彼女は泣いていたのでよく覚えていたらしい。

    私は気づいた。
    つまり、このしおりは彼女の人生の最期に読んだ場所を示している。
    彼女が死ぬ直前に過ごした時を示しているのだ。

    単純に気になった。本を好きではなかった彼女がそこまでして読み進めたかったもの。涙するほど、心に残ったページを。
    貸したのは名言集だった。



    そこには一言、「自分らしくありなさい」
    と、書いてあった。

    【投稿者: 傘】

    あとがき

    初めて、日常ものを書いてみました!
    難しいですね…しかも、シリーズものになりそうな予感。
    私の使っているしおりは、鈴蘭が切り絵されているしおりで、とっても素敵なんです!本を読む時って、何かひとつにこだわるとすごく楽しさが倍増しますよね!読む場所、しおり、本のお供とか。
    元気ではつらつ、クラスの人気者だった愛ちゃんは、自分らしくとの言葉にどんな風に感じたんでしょうね。
    本当は地味な物の方が好きだった?
    それとも本が実は好きだとか?
    色んな想像を膨らませながら読んでくださると幸いです

    Tweet・・・ツイッターに「読みました。」をする。

    コメント一覧 

    1. 1.

      1: 9: けにお21

      想像が膨らみましたw

      おっしゃる通り、愛さんは、可愛いもの好きに見せて、実は渋いもの好きだったのかな?

      事故に遭う前、主人公が渡した本を読んで、「もっと自分らしく生きよう!」、と決意したのかも知れませんね。

      傘さんは、すずらんの切り絵のしおりですか。すずらんは白くて丸くて、可愛くて良いですよねー。
      ナイスセンスです!

      また、僕は独り者だが、話し相手がいると本作の主人公のように楽しい人生を送れるのかなあ、なんて思いました。


    2. 2.

      20: なかまくら

      最初、場面が転々とするのを読んだだけで、なんとなく悲しい結末を想像してしまいました。
      彼が立ち直るような、救いの物語があれば読みたいですねぇ。