分度器(童話)

  • 超短編 381文字
  • 日常
  • 2017年06月12日 23時台

  • 著者: 秋水
  • 図工の時間で分度器を作った。
    僕は間違えることのないように綺麗を心がけて作った。
    とても誇らしいできだったので、皆にも自慢できる作品だと思った。

    そして、皆次第に完成しだすと、自然にお披露目会が始まった。
    其処で、僕はあることに気が付いた。
    (A君の角度バラバラだ・・・)
    僕は正確に作っていたので、直ぐにA君の分度器の何処がズレているかを指摘した。
    すると、意外な返事が返ってきた。
    「何言ってるの、君がズレてるんだよ。B君だって僕とおんなじになったんだよ。」
    僕は慌てて周りを確認すると、A君に似ている人達が多く居ることに気が付いた。
    そして、今一度自分の分度器を見直すと、僕が間違えてたんじゃないか・・という気がしてきた。
    あれだけ正確に時間をかけて綿密につくったはずの分度器に誤差があったなんて・・。
    僕は分度器を両手で持つと、直すことを決意した。

       「ねぇ、A君分度器みせて!!」

    【投稿者: 秋水】

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    コメント一覧 

    1. 1.

      20: なかまくら

      国語の教科書に載っていそうなお話ですね。自分を相対的に観られたらちょっと大人になれますね。


    2. 2.

      1: 9: けにお21

      何が正解で、何が間違いなのか?
      一般的には、多くの人から支持されたことが正解なのでしょう。

      しかし、実際には、少数もしくは一人の人が言ったことが、真の正解なのかも知れない。

      人の波を目の当たりにすると、異なることに怖くなり、さっきまで強く信じていた信念をアッサリと捨てて、正しく作ったはずの分度器までもを壊してしまうのが人間。目の当たりにした人の波に自らも乗る。

      流されると言うことは、滑稽で、怖いことですが、人が生きていくための処世術であり、主人公の取った行動は正解であったように感じました。

      赤信号みんなで渡れば怖くない。


    3. 3.

      参謀

       集団心理は怖いですね。 いくら正しくても少数派になれば不安がでてきますから