天空と大地に縛られた深海魚

  • 超短編 699文字
  • 日常
  • 2017年06月12日 23時台

  • 著者: 秋水
  • ザーザー
    海は波を打ち、光を乱反射させてキラキラ輝いていた。
    中には魚がいる。僕にはわかる。
    けれど、どんな暮らしをしているか僕にはわからない。
    また、海底には何が眠っているのか僕にはわからない。
    インターネットで調べても、面白みのない出鱈目しか書かれていない。
    なぜ、出鱈目と思うかって僕が見たことのない話だからだ。
    だから、今日僕はここに来た。
    僕は、元来金づちだ。
    故に、海底まで潜ることができる。
    どちらかといえば、僕は深海魚だ。
    浅瀬の際では、息をすることが難しい。
    深海で息をする僕と、浅瀬で息をする彼らが共存するのは難しい。
    どちらかが、損をする。
    その損を思いやることが、浅瀬のものには理解できない。
    何故なら、深海魚ではないからだ。
    まぁ、いいや。

    「よし、僕の居るべきところに帰るとするか。」
    堤防まで歩いて、あと一歩で海というところまで来た。
    自分の鼓動が大波打っているのが、わかった。
    様々な記憶を必死に蘇えらせようとしたが、僕には様々な記憶はなかった。
    僕の道には、誰も存在しない。此れからも、登場しないとは限らないけれど。
    僕が生きることは、僕を苦しめているだけだと分かった。
    何で苦しむかって、此処は浅瀬の魚が生きやすい大河だからだ。
    僕が啓発したところで、其れは深海の勧めだ。
    浅瀬の勧めとは異なる。彼らが浅瀬の生き物であるなら、其れに見合った勧めを貰うべきだ。
    だって、過去に勧めたことで死なせてしまった魚がいるんだから。
    もう、名前も覚えてない。出来の悪い魚だったな。

    僕は今一度、たっている堤防から海を眺めた。
    綺麗だ。
    僕は気が付くと、海に沈んでいた。
    ゴボゴボッ・・・。

    こうして僕は深海に消えた。すごく心地が良かった。

    【投稿者: 秋水】

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    コメント一覧 

    1. 1.

      20: なかまくら

      初めまして、なかまくらと申します。こちらの管理人もしています。
      深海への憧れは、逃れたい心から来ていて、それを読むと苦しくなりますね。
      >僕が啓発したところで、其れは深海の勧めだ。
      これが分かっていて死んでしまうというのは、そういう人間から死んでいく、そういうものなのかもしれませんが、生きづらい世の中ですね。

      ところで、こちらのサイトですが、なるべく連続投稿は避けてください。
      トップページに5作品しか掲載しないため、ほかの作者さんの作品がどんどん流れて、目に付きにくくなってしまいます。
      ほかの作家さんの活動を尊重しながら、ご利用いただければ幸いです。


    2. 2.

      秋水

      >なかまくら
      すみません。そんなこととは知らず失礼を働いてしまいました。


    3. 3.

      20: なかまくら

      >秋水さん
      いえ、また投稿して下さいね^^; 楽しみにしています。


    4. 4.

      1: 9: けにお21

      浅瀬は居心地の悪い現在。深海は主人公にとって居心地の良い理想郷、に感じました。

      どこかに、真の居場所があるのではないか? との主人公の思いが、深海に託されているのかなって気がしました。


    5. 5.

      ことは

      秋水さん、はじめまして。ことはと申します。水族館で展示される深海魚は幼魚のときから地上で暮らすために生きていますが、実際はどう思いながら泳いでいるのかな、なんて思ったりします。今回のお話は比喩ですね。テーマもまた、深海のように、暗くて深いですね。また投稿してくださいね。次回作楽しみです