ある日、不思議な夢をみた、いつも見るような感じとは少し違い、目の前が真っ暗だった。数分で周りの視界が晴れた。少し夕日が見える。雲が赤みかかっていた。
「うわー、すっげーきれい…」
彼が感傷にひたっていると向こうに何かが見えるのに気づいた。
「何だあれ…山?」夕日に照らされ逆光になっていたためここからではそれがなんなのか分からなかった。気になっておそるおそる近づいた。だが彼は後悔し目を見開いた。死体の山だったのだ。死体独特の異臭がただよう。鼻が曲がりそうだった。 彼は一瞬怯えた、目を疑った。何度も目を擦ったけれど目の前のものが消えることはなかった。
「と、とにかくここから離れないと…」動揺が消えないまま彼は死体の山から離れないといけないことでいっぱいだった。
辺りを見まわした。家一軒見あたらなかった、「なんなんだよ、夢でももう少しましなの見ろよ、俺」そんなひとり言を何度も言った。かなり歩いたのでないかと思っていると、一軒の小さな小屋が見えてきた。
「良かった、これで休める」彼は少しホッとして小屋の方に近づいた。キィと音をたてながらドアを開け辺りを見渡し中に入ると目の前には木製のテーブルに二つの椅子が向かいあっていた。そのうち一つの椅子に座り一息ついた。
「一体なんなんだここは、夢じゃないのか?何で目の前に死体が…」思い出すと吐き気がした。口を手で押さえた。家族や親友までもあの積み重なった死体に入っていたのを見てしまったからだ。吐き気を押し殺し少し落ち着きを取り戻した。彼はもう一度周りを確認すると後ろには大きな鏡があった。ちょうど彼の全身を映せるくらいだろう。「…?何だあの鏡、さっき見たときは見あたらなかったのに…」不思議に思いながら椅子から立ちあがり鏡の前近づいた。彼は鏡から見える自分の姿に驚愕した。今まで自分のことをみる余裕などなかったから気づかなかったが自分の服装は血まみれだった。後ずさりしズボンのポケットに手が触れ感触を感じ中を探った、ゆっくりとあげると血がついたナイフが入っていた。
「わー!!」彼は驚きナイフを投げ捨てた。
「なっ!なんでナイフが…どうして俺は血まみれな…」言葉を最後まで言うまえに後ろに視線を感じ鏡を見た。後ろに誰かが立っている。男性か女性かもわからない姿だった。深くフードを被って顔は見えなかった。ただ、フードの下から見える口は不気味な笑みをしていた。手には鎌を持っていた。
「ヤ、ヤバい逃げないと…ここから、でもどうやって…逃げる場所はどこにも…っ!」彼は足下にあったナイフに目にやった。
「そ、そうかこれで!」フッと気配を感じた。殺気を感じた。一瞬の目の逸らしでフードの人物がすぐ後ろにいた。
「……えっ」彼は硬直した。予想外のことに驚いたからだ。フードの人物はゆっくりと鎌を頭の上に持ち上げ、そして斬りかかってきた。その一瞬にフードが取れた。が、目の前が赤く染まり姿をみることは出来なかった。あの不気味な笑み以外は。
コメント一覧
初めまして、なかまくらと申します。
犯人は自分だった・・・と見せかけて、最後にもう一つどんでん返し! 鮮やかです。
でも、鎌を持っているという描写が死神のように見えて、少しもやもやとした余韻になっているところが良いですね。
僕も、なかまくらさんと同様に、自分オチを見ました。
しかしながら、実際のところは不明のまま終わり。
でも、不気味な笑みをしていたのは自分自身、と思うのです。多分。