周瑜の不安

  • 超短編 1,192文字
  • 日常
  • 2017年05月05日 17時台

  • 著者: 参謀
  •  曹操孟徳と対峙する。
     周瑜公瑾は鉄笛を吹きながら頭の中でこの四文字を浮かばせる。
     自分の家の庭。周りは暗く、微かに月の光が自分の顔を照らしてくれる。
     他にも音が聞こえる。自分のとは違い清らかな音。
     妻の小橋が琴を撫でていた。
     自分の音と妻の音が絡み合い、居心地よい音が出来上がる。
     そしてあの男が頭の中でゆっくり椅子に座りながら聴いている。
     あの男、曹操孟徳。
     まだ袁紹と対峙していた時に自分はあの男に商人として会った。一発で見破られた。
     あの男は西域の酒である葡萄酒を飲みながら言う。
    「噂では俺は大喬と小橋を欲しがってると言うが違う、俺は貴公が欲しい。俺の元に来い。全軍の水軍の指揮をさせてやる」
     笑いながら言う。
     思いっきり息をする。全身が粟だった。
    「お前は水軍を率いて、南下し、俺は歩兵と騎馬を率いて西に行き、ペルシア・天竺・ローマを征服しようではないか!!」
     曹操は子供のような目をして笑う。
     
     妄想・不可能・阿呆の戯言

     色んな言葉が出てくるが、なぜかこの男なら可能だと思った。
     そんな事を考えた自分に腹が立った。
     鉄笛の穴を立てづづけに押さえる。
     妻との音が微かに乱れる。
     構わない。
    「お前の友に言え。今から全軍を率いて俺の元にはせ参じろと。お前の見る夢をこの曹操が見せてやると」
     高圧的な態度。しかし曹操はそれを思わせなかった。
     妻の音と離れる。いつから自分は曹操に自分の音を聞かせていた。
     自分は曹操の答えに対してニコと笑うだけで答えなかった。
     しかしの心の中で嵐が吹いていた。

     憧れ・嫉妬・軽蔑

     すべての感情が暴れていた。
     何も言わない自分に曹操は笑いながら、
    「笑いがらもその目の奥には俺に屈しない目をしてるな」
     当たっていた。心が嵐の中でもその地の奥には友と約束が眠ってる。
    「お前と同じ目をした男がいる」
     その男の事の名前が出てくる。

     劉備元徳
     
     同時に言う。
     つい口が出てしまった。曹操は大きな声で笑い。
    「そうだ。お前がポロリと出た名前。俺が最も屈せさせたい男」
     曹操は葡萄酒を飲み、
    「そして貴公とその友も同じ列に並ぶ」
     
     屈させたい男。

     嵐が止まった。そして激しく燃え上がる物が出てくる。
     鉄笛に息続く限り吹き込む。音がおかしくなる。
     聴け。曹操。これが周瑜公瑾の音だ。
     おかしくなるが、鋭くなる。それが曹操の心臓を貫く。しかし曹操は笑っている。
     
     友がいれば!!

    「あなた!!」
     妻の声がした。自分はハッと我に返る。曹操が消える。
    「あなた。大丈夫?」
    「ああ」
     全身が汗だらけだった。
    「すまない。続けよう」
    「は、はい」
     妻は戸惑いながらも琴を弾き始める。自分も吹き始める。
     友がいた。その友となら確実に倒せるだろう。しかし今は......
     自分は吹きながら月を見る。果てして勝てるのだろうか?あの曹操に? 
     激しく燃えていた物が揺らいでる。確実にあった友との約束も揺らいでいる。
     あの曹操を恐れている。
     自分は月を見続けながら吹いていた。
     自分の未熟さを笑いながら。

    【投稿者: 参謀】

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    コメント一覧 

    1. 1.

      爪楊枝

      赤壁前夜といった感じでしょうか?
      曹操と周瑜が実は面識を持っていたというアイデアですね。
      気宇壮大な感じが出ていて面白いです。
      細かく読むと、ツッコミどころは満載ですが、
      (銅雀台の賦を詠んだタイミングと周瑜と会えるタイミングが不順 等)
      好きなことが伝わるので、無粋なツッコミはしません。
      ただ、「姓名+字」という名称表記はありえないので、やめた方がいいかも。
      三国志はいいですよねぇ。僕も何度も何度も読み返しました。
      やっぱり、歴史小説は面白いものです。


    2. 2.

      参謀

       爪楊枝さんコメントありがとうございます。
       はい、赤壁前夜です。歴史検証の無視してパッとした勢いで書きました。(笑)
       気宇壮大な曹操も面白いかなと思い書きました。
       
       

       


    3. 3.

      1: 9: けにお21

      三国志は昔漫画で読んだけど、もう忘れてしまいました。

      傲慢さは曹操っぽかったです。

      周瑜は賢かったんじゃなかったかな?

      劉備は人望があるんですよね。

      うーん、もう一回読み直さないといけない。


    4. 4.

      参謀

      けにおさん 
      コメントありがとうございます。
      この作品は私の勢いと妄想で作った作品です。
      私の独断と偏見で書いてます。