満月

  • 超短編 1,821文字
  • 恋愛
  • 2017年04月16日 00時台

  • 著者: 1: 9: けにお21
  • 32歳 独身女性 橘幸子

    友達がいない
    話し相手になってくれる友達がほしい
    ミクシーやチャットなどではなく、実物としての人と顔を付き合わせてお喋りしたい
    幸子は友達がいないことに悩んでいた


    女というものはよく喋る、また、よく話が脇道にそれる、得てしてどうでもいい自分の日常の不満などの話題になる
    本人はそれで、楽しいかもしれないが、一方的に聞く方はつまらない
    それが長時間ともなればキツい
    女友達とは、ストレスを発散するどころか、ストレスをためる結果になるのだ
    それが分かっているので、女友達を作ることをやめた

    一方、男は、容姿が悪い私など構ってくれない
    どうして、男と言うものは容姿で女を判断するのだろうか
    観賞用の小動物のように女のいう生き物を品定めするのだろうか
    ともかく、男は、女性として美しくない私には見向きもしない
    結果、私には、今まで彼氏はおろか男友達すらいない

    こういった理由で友達ができず、中学からは団体行動を拒み、孤立した
    学校帰りも真っ直ぐと家に帰り、一人で過ごす時間が多くなった
    部屋に引きこもり、よく本を読んで、本の中に浸った

    今も変わらない
    読書もするが、それではあまりにも寂しいので、ゲームチャットやミクシーに書き込みしている
    ネットでは男性も相手してくれる
    でも、物足りない
    寂しい
    私は実物大の友達がほしいのだ
    相手の顔を見ながら、心を打ち明けて話をしたいのだ
    一緒に笑ったり、泣いたりしたいのだ
    人の温かみをその目で、その手で感じたいのだ

    ある夜、バイト先のパン屋からひとりで住む古いアパートに帰り、いつものように独りわびしくコンビニ弁当を食べ、いつものようにパソコンを開き、ミクシーにアクセスしようとしていた

    バタン

    突如、暑いため開けていた部屋の窓から黒いもの中へ飛び込んだ

    コウモリだ

    私の前で、ドロン
    白煙ととも、漆黒のマントを羽織った、タキシード姿の男が現れた

    お邪魔します
    男は、膝をつきお辞儀をした

    ハリウッドスターにでてくるようなイケメンだ、真夏なのに暑くないのかしら

    お嬢さんは今寂しいのでしょう

    え、どうして分かるの

    ふふ、それなら私が話相手になりましょうか

    その日から、毎晩イケメンは窓から飛んで来て、私の話し相手になってくれた、友達になってくれた

    その交換条件として、血を吸わせあげた

    吸われるときはときは、痛くはないが、せつない気持ちになる

    毎晩、アパートで話をする、いろんな話をする

    子ども頃の話、趣味の話、仕事の話、彼氏がいない話など

    彼はもっぱら聞き役で、私の話を熱心に聞いてくれる

    そのうち、会社から帰るとシャワーを浴び、化粧をし直し、綺麗な服を選び、彼が来るのを待つようになった

    そんなある日、仕事場の人間関係の悩みごとを相談したら、昔のイタリアの諸島で起きたエピソードをまじえ、的確なアドバイスをしてくれた

    優しい、頼りになる、この人なら

    好きです、お願いです、私を女にしてください

    椅子に優雅に腰掛けていた彼はゆっくりと立ち上がると、豊かな腕で私を抱きかかえ、ベットへと運んだ



    それから50年が過ぎた

    欠かすことなく、彼は毎晩通ってくれ、私は彼に血を吸われ続けた

    嬉しかった、幸せな日々だった

    そこには愛があった、こんな私を愛してくれた

    でも、私も年だ、82になる

    それに大病を患っている

    寝たきりだ

    まもなく死ぬだろう

    彼も、最近では、私の体を気遣いあまり血を吸わなくなった

    姿は相変わらず若いが、最近は元気がない

    私の血をあまり吸わないからだろう


    バタン

    いつもの窓から彼が来た

    フラついている、骸骨のように痩せている、明らかに血が足りていないのだ

    もういいのよ、私はこんなおばあちゃんになってしまったわ、病気も患い、動くこともままならない、だから、ね、あなたはもっと若い元気がある子のとこに行きなさい

    駄目なんだ、あなたから離れられない、私は1000歳を超える、今まで多くの女性の血を吸い続けてきた、でも終わりにしたいんだ

    どうして

    あなたに出会い、あなたを愛した、あなたがいない世界で生き続けることに意味はない

    このまま血を吸わなければ、本当に死んでしまうわよ

    私にとってあなたが世界で、すべてなのだ

    痩せこけた彼は、そっと私に近づき、私の目から頬に流れる涙を口ですすった

    ぽたっ

    彼の目からも大粒の涙が私の顔に落ちた


    二ヶ月後、異臭がするとアパートの住人が騒ぎ、大家が部屋を開けた

    そこには、明らかに死体と分かる老女と干からびたコウモリが一匹。

    コオモリと老女は顔を寄せ合い、静かに、静かに、お互いを見ていた。

    【投稿者: 1: 9: けにお21】

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    コメント一覧 

    1. 1.

      1: 9: けにお21

      別のサイト作。

      実は、恋愛好きなのです。 恥ずかしいな


    2. 2.

      1: 9: けにお21

      読み返すと、若干描写が危ういな・・・って気がするが、どうか許してください


    3. 3.

      1: 鉄工所

      原文ママで祭りに出れそうです

      描写は全然OKです!


    4. 4.

      1: 9: けにお21

      読んでいただき、ありがとうございます。

      先日は楽しかったです。

      僕の書き物らしくなかったですかー!w

      描写、若干エロいけど、なんとか許容範囲ですかー

      ありがとうございます!