空を見る端末

  • 超短編 351文字
  • 日常
  • 2021年08月16日 13時台

  • 著者: 飯星ジャンカ
  • 僕の端末は人間だ。
    僕の本体が何であるかは無論僕にはわからない。
    ある日誰かが僕に複雑きわまりない機械の写真を見せて、「これが君の本体だよ」と言ったなら、僕はそれを信じるだろう。
    僕には疑う理由がないから。
    ある日誰かが醜悪な、内蔵のような生物の写真を見せて、「これが君の本体だよ」と言ったなら、僕はそれも信じるだろう。
    僕には疑う理由がないから。
    ある日誰かが僕に美しい青年の写真を見せて、 「これが君の本体だよ」と言ったなら、僕はそれを信じないだろう。
    僕には信じる理由がないから。
    そして、何れにせよ、僕の本体について語る人物は現れなかった。
    僕の端末は年を経て、劣化の始まる年齢となった。
    端末の機能停止でこの世からログアウトする日も、現実的な未来となってきた。
    惜しむらくは、僕の本体の非存在を僕が確認できないこと。

    【投稿者: 飯星ジャンカ】

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    コメント一覧 

    1. 1.

      1: 3: ヒヒヒ

      こんにちは。
      「空を見る端末」というタイトルから、様々なことを想起しました。
      本体の存在を疑う理由もなく、信じる理由もない中で、彼はどんな空を見ながら過ごすのでしょう。


    2. 2.

      20: なかまくら

      空(そら)なのか、空(くう)なのか、迷うところですね。
      ただ、どうやら、自分が美しい青年ではないということを直感的に分かっているということから、完全に空っぽがとらえられないのではなく、見えているのか、あるいは、自分の心の持ちようが自分の本体なのかもしれないなどと思索を巡らせました。