僕の端末は人間だ。
僕の本体が何であるかは無論僕にはわからない。
ある日誰かが僕に複雑きわまりない機械の写真を見せて、「これが君の本体だよ」と言ったなら、僕はそれを信じるだろう。
僕には疑う理由がないから。
ある日誰かが醜悪な、内蔵のような生物の写真を見せて、「これが君の本体だよ」と言ったなら、僕はそれも信じるだろう。
僕には疑う理由がないから。
ある日誰かが僕に美しい青年の写真を見せて、 「これが君の本体だよ」と言ったなら、僕はそれを信じないだろう。
僕には信じる理由がないから。
そして、何れにせよ、僕の本体について語る人物は現れなかった。
僕の端末は年を経て、劣化の始まる年齢となった。
端末の機能停止でこの世からログアウトする日も、現実的な未来となってきた。
惜しむらくは、僕の本体の非存在を僕が確認できないこと。
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