グラース家の人々

  • 超短編 422文字
  • 日常
  • 2020年06月15日 12時台

  • 著者: ちくたく
  •  そうやってあなたは街を雨にする。かなしい歌を歌い継ぐ。あなたは夢の主人公だ。あたしは夢を見ている。あなたはあたしの夢の中でいつも幸福を壊す。あなたのことは嫌いだけど、あなたについてあたしは知らない。

     困ったので夢の中で判事に聞いてみた。あなたについて聞いてみた。結果、連邦会議所で判明したところによるとグラース家の三男でテロリストということだそうだ。それは困ったことだとあたしは思う。何しろグラース家といえばどしがたい放蕩家族なので。うちの一族も昔から近所なので関わりはあり、あたしの祖母の祖母は因縁により納屋を焼いた。

     さて納屋を焼かれたグラース家のひとびとはこまったみたいだ。だからあたしは彼を地下室に匿う。常に夜のようなその世界はグラース家の(そのグラースという名前の!)きらきらめいた場所とは違って、彼は非常にちぢこまって見えた。

     残虐性があたしの中に発生する。地下室は納屋と異なる温度で焼かれるのかも知れない。焼いてやるのはきっとあたしだ。

    【投稿者: ちくたく】

    あとがき

    サリンジャー久しぶりに読みました。

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    コメント一覧 

    1. 1.

      3: 茶屋

      うーん、夢物語の中をさまようような『あたし』と冷静に一歩引いて読むとゾッとするこの流れがあって、つまり魔女ですね(謎


    2. 2.

      20: なかまくら

      なるほど、魔女狩りかもしれません。