キミと冷蔵庫

  • 超短編 651文字
  • 恋愛
  • 2020年05月28日 14時台

  • 著者: 紙袋あける
  • 「……は?」
    「ちょ……」
     冷蔵庫を開けたら、彼女が何か言いたげにごろりと転がり出てきた。
    「冷えっ冷えだな」
    「そりゃ……冷蔵庫にいたんだもん……」
    「風呂、入っとくか? 布団がいい?」
    「……なんで動揺しないのよあんたは」
    「まぁまぁ」
    「まぁまぁじゃねぇ」
    「……布団」
     彼女を抱き上げて布団に運んで、毛布をかけてやる。
     こういう時、彼女が小柄で良かったなって思う。
     だって、なんか男らしさをアピールしやすいじゃないですか。これは内緒の話なんだけどね。
     毛布にくるまった彼女は、ガタガタと歯を鳴らしながら俺をにらんでくる。
    「ぜんっぜん驚かない!」
    「だってそりゃー、もう慣れてるし」
    「しどい!」
     この間は土間、この間は押入れ、その前は洗濯機…と来ればあー、次は冷蔵庫かなぁという予想はつく。
    「まぁまぁ、サプライズしたい気持ちはありがたく受け取っておくから」
    「何よそれ~…あんた何やっても驚かない、つまんない!」
    「別にいいんじゃない?」
    「よくないよ!」
    「いいんだよ」
     俺は後ろから彼女を抱っこする。
     彼女の肩が小さく跳ねた。俺は気にしないで続ける。
    「だって」
    「……だって?」
    「怖くはないし驚かないけど、可愛いとは思ってるし。そういうとこ」
    「~~~~~~っ!」
     彼女は俺の方を向いてポカポカ胸を叩いてきた。
    「ちくしょー今度は絶対驚かせてやる~!」
    「はいはい」
    「許さん!」
    「可愛い」
     噛み合わないけれど楽しい、イマイチ頓珍漢な会話。
     幸せだなぁ。
     最後にひとつ、ぎゅっと強く彼女を抱きしめて、その日はお開き。
     願わくば、こんな日々が続きますように。

    【投稿者: 紙袋あける】

    あとがき

    甘々が書きたかったんですテヘー。
    読んでくださりありがとうございました。

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