Chapter1 遭遇①

  • 超短編 2,209文字
  • シリーズ
  • 2019年08月17日 18時台

  • 著者:退会済み
  •  外は生憎の雨。
     冷たい空気と雫が、身体中に染み渡る。
     「…寒い。」
     気温も低いため、本当に寒い。
     温かい缶コーヒーを飲んでも、すぐに温まる訳ではない。
     もう8月だっていうのに、冷夏かと思うくらいだ。

     そんな中で私は、街をぶらついていた。
     雨の中でチラシを配る人や、藁箒で掃除をしている人がちらほら。
     そこらの一般人みたいに、私は歩くだけの事。



     「…お姉ちゃん?」

     誰かが、私を呼んだ。
     声のした方に振り向くとーーー。


     「奈那美お姉ちゃん…だよね…?若葉だよ。松浦若葉!」
     「…若葉…?」
     そこにいたのは、松浦若葉。
     私の、実の妹だ。
     生き別れて以来、ずっと連絡も取れなかった。
     若葉は私を目にした瞬間、目から雨のように涙を流していた。
     「もう!ずっと会いたかったんだよ…!」
     若葉は思いきり私の胸へと飛び付いた。
     よほど寂しかったのだろう。

     「…そっか。まだ刀続けてるんだね。」
     「うん。」
     「私もそうだけどさ、お姉ちゃんみたいにはなれなくて…。」
     「ん?どういう事?」
     私は、若葉の発言に疑問を抱いた。
     私みたいになれないとは…。
     「お姉ちゃんは踊ったりしてるみたいに、二刀流で戦ってるでしょ?そんなの、私は真似できないなぁって思って。」
     まあ確かに私は斬裂刀を使う時は、回ったりしてまとめて斬ってるけど…。
     流石に技術を多く持っていないとできない。
     ちなみに、若葉の刀は1本だけ。
     端から見たら二刀流で踊り狂うなんて、普通の人間はできっこない。
     「お姉ちゃんはすごいよ。私のできないような事ができるもん。」
     「そうかな?」
     ちょっぴり羨ましがる若葉が可愛らしい。
     若葉もきっと私のようになりたいと、ずっと背中を追い続けていたんだろう。
     もしもそうなら話はわかる。
     若葉ほ昔からずっと、私の容姿を見てきた。
     確か、「ずっとお姉ちゃんの傍にいたい!」なんて言ってたっけ。
     あの頃に言われた言葉は忘れもしない。
     でもしばらくして、生き別れてしまったのだから、寂しい思いをさせてしまった。
     私って、悪い姉だなぁ…。


     姉になるって、何だろう?

     自分に妹ができて、姉ができる事って、どういう事だろう?

     今思えば、それがはっきりとわかっていない。

     姉って、何だろう?

     でも、若葉は…。

     私の大切な、可愛い妹。

     ずっと大切にしてきた。

     でも、生き別れたあの頃、若葉は私を嫌っているんじゃないかと、不安に思っていた。

     怖い。


     痛い。



     ずっとそんな日々を過ごしていたーーー。



     「…姉……ん……。……ちゃん…。」


     「お姉ちゃん!」
     「…!」
     若葉の大声で、私の思考は元に戻った。
     「どうしたの?ボーッとして…。具合でも悪いの?」
     「あ、ううん、大丈夫。ちょっと昔の事思い出してね…。」
     「昔の事?」
     「ほら、昔さ、私と若葉、一度生き別れちゃったでしょ?その間、実は私も寂しかったんだ。
     あんなに可愛がっていた妹と離れ離れになって…。今思えば、私は悪いお姉ちゃんだなぁって、そう思っただけ。」
     「……。」
     ああ、黙り込んじゃった。
     …と思ったら、若葉の口が開くーーー。


     「そんな事ないよ。」
     「ん?」
     「私は、お姉ちゃんが大好きだよ。昔からずっと。こんなに寂しかったんだから、嫌うなんてありえないよ。
     もし嫌ってたら、寂しがってない。お姉ちゃんもそうだったと思うよ。」
     「若葉…。」
     今まで可愛がってた妹にそう言われると、何だか安心する。
     嫌っていなくて良かったと、心から思えた。

     「そろそろ行こうか。濡れるの嫌だし。」
     「え?うん。」
     私はそう言って立ち上がる。
     今から向かうのは、私の家。
     まあ家って言うより、巣に近いかな。
     何せ狭いし、長い間借りてるみたいな感じだし。


     「ふえぇ~、ここがお姉ちゃんの…。」
     「まあ、巣みたいなものだけどね。」
     マンホールを開けた下水道に、テントが一つ建てられている。
     あれが私の巣。
     これなら家賃もいらないし、慣れれば寧ろ住み心地が良い。
     え?体洗うのはどうしてるかって?
     ……。
     それはご想像にお任せするかな。

     「土足でいいよ。何も敷いてないし。」
     「あ、うん。」
     そう言うと、若葉を中に入らせた。
     ただの貧乏生活に見えるかもしれないけど、全然問題ない。
     「ずっとここに住んでるの?」
     「うん。ここなら好き勝手できるかと思って。」
     「て、適当だね…。」
     まあ確かに適当っちゃ適当だけど。
     「でもなんか、住み心地良さそう。よく長い間住めたね。お姉ちゃん。」
     「慣れたら寧ろ良い場所だよ。」



     「お、雨が止んでる。」
     外に出ると、雨は止んでいた。
     日差しが街中を照り付けている。
     「あっついね~。」
     「もう8月だからね。さっきは結構冷え込んでたのに。」
     現在の日付は8月5日。
     気温は30℃近くみたいだ。


     「…よお。」
     「ん?」
     突然、誰かに声を掛けられた。
     後ろを振り返ると、一人のタンクトップの青年がいた。
     「お前、松浦奈那美だろ?」
     「そうだけど。」
     「丁度良かったぜ。あんた、俺と決闘しろ。」
     「…は?」
     私は彼の発言に、首を傾げた。
     決闘…って事は…、え?ここで戦うって事?
     「噂で聞いたぜ。あんた、えらい強いってな。だから腕試しには丁度良いと思ってよ。
     だからよ、今すぐ俺と決闘しろ。」
     あー、なるほど。もう私の名前は街中で知れ渡っているんだね。
     「急だね…。私は別に構わないけど。」
     「お姉ちゃん、いいの?」
     「大丈夫。すぐ終わらせるから。」
     そう言うと、私は鞘付きの鬼薙刀を構える。

     「…言っとくけど、大怪我になる覚悟で挑んでね?」
     「ああ。わかってるよ…。
     さあ…、存分に楽しもうぜ!!」

     私の鬼薙刀と彼の拳がぶつかり合うーーー。

    【投稿者: 2: アズール021】

    あとがき

    無双少女伝説 ~血狂ウ世界~ Chapter1開始致しました。
    もう文章がごちゃごちゃですが、楽しんでいただけたでしょうか。
    今回の話は結構長めなので、一つ一つ分けて投稿しようと思います。
    もう一つ、次回からこのあとがきに登場人物の紹介を書こうかと考えてみます。

    それでは次回もお楽しみに。

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    コメント一覧 

    1. 1.

      20: なかまくら

      妹との生き別れの理由が気になりますね。
      妹ちゃんも出てきて、楽しくなりそうです。