枡野は硬直していた。
すると、ピンポーンとインターホンが鳴った。
「誰だよ。こんな時に」
黒井は拳銃を台所に置き、ドアを開けた。しかし、誰もいなかった。
いや、正しくいうと、誰かはいた。だが、黒井にはその姿が見えなかった。なぜなら、インターホンを押したのは、サンタクロースであったため。もう、離婚した黒井にはサンタクロースを見ることはできなかった。
誰もいないことを確認した黒井はドアを閉めようとしたその時、栗栖の目の前で、枡野は衝撃的な行動を取った。
枡野は立ち上がり、開きっぱなしの台所の戸棚から、包丁を抜き取り、それを黒井の背中に刺したのだ。
黒井はもがき苦しみ、包丁は床に落ち、枡野は尻もちをついた。
「また儂の前で人が殺されると思って、それを避けようとインターホンを押したのじゃが、こうなるとはね」サンタクロースは栗栖に呟いた。
黒井は、意識が朦朧とする中で、懸命に台所に置いた拳銃を手にし、枡野に向けて、発砲した。
しかし照準が定まっていなかったせいか、銃弾は枡野の肩を貫いた。
栗栖は、血の海と化した玄関と台所をの悲惨な光景を、ただただ見つめるだけだった。
隣から物騒な音が聞こえたためか、隣人の主婦らしき女性が姿を見せた。
スプラッター映画のワンシーンのような、異様な光景に言葉を失う隣人。
玄関には男が背中を赤に染められ倒れていて、その先には女も倒れていた。
その隣人は異様な光景を前に、やっと我に返り、震えながらスマホを取り出し、警察に電話した。
間もなくして警察と救急車が訪れ、現場を見るなり、緊急配備がなされ、アパートの周りに規制線が張られた。
あとがき
明日でラストです。
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