カニなんて食べられない

  • 超短編 573文字
  • 三題噺
  • 2018年11月04日 08時台

  • 著者:1: 2: ヒヒヒ
  •  今では誰も、カニを食べたいなんて思わない。

     昔、カニと言えば誰もが喜ぶ御馳走だった。幼い頃、日本の富豪が上海カニを空輸しようとした小型機が近所に墜落して、町中が大騒ぎになったことがある。幸い人間の死傷者は出なかったので、燃え盛る飛行機とその積み荷を眺めながら「食べて供養してあげたいね」と言い合ったものだ。

     空襲警報を聞いて空を見上げると、雲間に輸送機が見えた。ずんぐりとした図体の後部から、小さな黒い粒を落としていく。

    「座標、106.69。2分後には戦闘が始まります。非戦闘員は速やかに退避してください」

     粒は地上に落ちると、やがて八本の足を広げ、カニに酷似した姿となった。戦闘用自律機械。横歩きで地雷陣地を走破し、二本のアームで敵を切り裂く。カニは横歩きしかできないと馬鹿にされていたが、とんでもない。彼らの走行性能は、今では人間をはるかに凌駕している。

     私たちの基地からも、同じような形の機械が飛び出してきた。鋼鉄のカニたちは、本物と違って、威嚇やダンスはしない。せめて戦う前に、鋏をぶんぶんと振り回したりしたら、愛嬌もあるのだろうか。彼らは速やかに接近して、迅速に目標を切断する。

     今、味方のカニの腕が切断されて宙に舞った。傾きかけた日を受けて赤く光る。カニの赤いはさみが、豪華なご馳走を象徴したのも昔のこと。今ではそれは、どす黒い血に濡れている。

    【投稿者:1: 2: ヒヒヒ】

    あとがき

    チャットでもらった三題噺です。お題は「墜落」「106.69」「上海ガニ」

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    コメント一覧 

    1. 1.

      1: 8: けにお21

      面白ーい!

      昔のアニメ、ヤッターマンを思い出しました。古いから知らないよね。

      確か、敵も味方も、小型ロボが出てきて、ロボ同志で戦うのだ。

      また、三つのワードが、自然に使われていて、素晴らしい〜


    2. 2.

      AsakuraTouki

      カニの天敵イカがいずれ・・・


    3. 3.

      尾長

      面白かったです、カニ、結構無機質で怖い顔してますよね…。
      あとここ何年か食べていません…(貧乏)