私の名前はアイリス・オルコット。シルバリ国に住んでいる。
私は家の門を開け中に入った。
「父上、母上。ただいま帰りました」
「お帰り、アイリス」
家の奥から私と同じ髪色の母が出てきた。
「ねえ見て!ローズにお花の冠を作ってもらったの」
「よかったわね」
母は私の頭を優しく撫でてくれた。その状態のまま私は辺りを見渡した。
「父上はどこにいるの?」
「うーん、この時間だと教会にいると思う」
「行ってきてもいい?」
「ええ、いいわよ」
そして、再び私は家を出た。
教会に着くと全身を鎧で覆った私の父がいた。
「父上、何をしているの?」
「ああ、アイリスか。」
私の父は貴族でありこの国を支える騎士団の団長である。剣を持たせたら国一番の腕だ。
「今から神様に祈りを捧げようとしていたんだよ」
「なら、私もやる」
私と父は十字架の前に跪き祈りを捧げた。
(どうか、ローズとずっと友達でいられますように)
ゆっくりと顔を上げた。
「アイリスはなにを願ったんだ?」
「秘密」
「なんだ、教えてくれてもいいじゃないか。」
「ふふ。ねえ、父上」
「何だ?」
「私に剣術を教えて下さい」
「はは、急にどうしたんだ?」
「父上のような素晴らしい騎士団長になりたいのです」
「そうか、アイリスがそう言ってくれて父さん嬉しいぞ」
そう言って、父は頭を撫でた。
「いいぞ、教えてやる。お前を立派な団長にしてやる」
「ありがとう。私、頑張る!」
「さあ、家に帰ろう。母さんが夕飯を作って待っているからな」
私たちは教会を後にした。家に向かって歩いていると進行方向から母が走ってくるのが見えた。
「あなた、大変よ!」
「どうした?」
「国中で謎の生き物が現れたという連絡がきたのよ」
「分かった、私は様子を見てくる。二人は家に帰ってなさい」
「気を付けてね」
「ああ」
父は走って行ってしまった。
「父上平気かな?」
「大丈夫よ。さあ、家に帰りましょう」
私と母は夕焼けで紅く染まった道を並んで歩いた。
日が昇るのと同時に目が覚めた。カーテンを開けリビングへと向かった。すると椅子に父が座り朝のコーヒーを飲んでいた。
「父上!おかえりなさい」
「ただいま。相変わらず起きるのはやいな」
「もう習慣になってて。ところで昨日の件はどうだったの?」
「うーん…。それが正体が分からないんだ。人の形をした影のようなものだった。人に危害を与えるそぶりは見せずただ立っているだけ。強いて言うなら、誰かを探しているようにも見えた」
「それらは今もいるの?」
「ああ、日が昇る少し前に地面の中に消えていったのもいたが何体かはまだいるはずだ」
「そっか…」
私と父が黙り悩み始めると台所から母が出てきた。
「二人とも、朝市に行ってきたいのだけど朝ご飯はまだいいかしら?」
「うん、まだ大丈夫」
「俺も付いていこうか?」
「いいえ、さっきまでお仕事だったんだから少し休みなさい」
「分かった。気を付けて」
「行ってきます」
そう言うと母は出ていった。
それから私たちは謎の生き物に対して色々と意見を出し始めた。
それから一時間後。
「母上遅いね」
「そうだな。様子を見に行くか」
そうして私たちは家を出た。すると玄関の前に見たことのある籠が落ちているのを父が見つけた。
「これは…」
「母上の籠に似ている」
「と、とにかく二手に分かれて探そう」
それから国中の至る所を探したが母は見つからなかった。色々な人に話を聞いてみるとどうやら居なくなったのは複数の人らしい。とある人の証言によれば例の謎の生き物に取り込まれ地面の中に消えていったらしい。
日も沈み辺りが暗くなった頃、私は父と国の広場で落ち合った。
父の顔は疲れ切っていた
「どうだった?」
「見つからなかった。でも居なくなったのは母上だけではなさそう」
「こっちも同じだ。兵士も何人か居なくなっていた。とにかく被害の規模をまとめるために一旦家に戻ろう。お前に渡したいものがある」
「わかった」
家に付くと父は自分の部屋から細長い箱を持ってきた。
「本当なら誕生日に渡すつもりだったのだが…まあ、少しぐらい早くてもいいだろう」
渡された箱をそっと開けると中には二本の剣が入っていた。片方の剣はとてもシンプルで練習用だと分かった、もう一方は
白く、剣全体に装飾がしてありとてもよく手に馴染んだ。
「いいかアイリス、剣を持った以上お前は騎士だ。これからは剣に忠誠を誓い自分の最期まで戦い抜け」
「わかりました」
私は剣を立てその前に跪いて教会の十字架に向かって祈りを捧げた。
あとがき
ここまでお読みいただきありがとうございます。
お久しぶりです。前回投稿してからかなりの時間が空いてしまいました。
シリーズものなのでもうすこし頻繁に投稿したいと思っているのですが…なかなか難しそうです。
さて、こんな反省文モドキを書いておきながら、次回の投稿は本来の短編小説を予定しています。
もし機会がありましたら、お読みいただけるととてもありがたいです。