黄金夜の博士は大声で叫ぶ、世界は暗すぎるのだ。
黄金の夜は朝を否定する。闇の中であるから黄金の夜は輝くのだ。
黄金のその果てを博士は模索する。
世界の為に、まだ見ぬ未来の僕の為に、今もどこかで過去にとらわれた君の為に。
三千世界を遠眼鏡で見通し、刃を潰したハサミで輝きの欠片を集める。
黄金夜の博士は自分が誰なのか知らない、博士は最初から博士だった。
だから喜びも悲しみもない、ただ焦りだけを持つ。
世界の為に黄金の夜を作るのだ。
0と1を積み重ね黄金夜の設計図を描いては破る、誰かが喜べば誰かが悲しむ。
博士はそれが我慢ならない、ただ焦りだけが彼を動かす。
手遅れになるまえに黄金の夜を作り上げなくてはならない。
錆朱の外套を羽織り、灰色の夜を破る為に博士は世界を探して、0と1を積み上げる。
実験を繰り返し、フラスコを幾万回も叩き割る。
黄金夜の博士は諦めることができない。
伸ばされた手を掴むために、打ち下ろされた鉄槌に砕かれぬように。
僕が死ぬ前に、君がいなくなる前に、黄金の夜を作り上げるのだ。
灰色の世界に博士の声が聞こえる。
僕の返事は博士には届かない。
それでも僕たちは黄金の夜を待ち続ける。
黄金夜の博士が諦めない限り。
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