クフゥクトゥ氏と一緒に電車に乗った。わたしは町はずれに住んでいるが、たまたま便利な場所に駅があるのでよく電車を利用する。可愛らしいカラフルみたいな電車だ。電車の交通はどこかに行くにはとても都合が良い。その窓から見えるうつろいゆく景色もとても良い。
クフゥクトゥ氏と隣に座る。昨晩約束をしたのだけど、クフゥクトゥ氏は少し疲れているみたいだ。眼をうろうろしている。フクロウだから昼は眠いはずだし、ほんらいは飛んでいけたら良かったのだが昼間は目立つので、わたしの願いで遠慮頂いたからかもしれない。クフゥクトゥ氏は言う。「ほっほ、まだつかないのかな、ほっほ」。わたしは答える「もうすぐですよ、もうすぐ、海が見えます」。ほっほ、首は回転する、「駅は?」、「えっと?」、「ほっほっほ、駅だよ、わたしは駅というものが見たいのだ、純粋な駅だよ、新しい満月みたいに純粋な、ね」、「なるほど、もう少ししたら駅がみえますよ、それから海も、たぶん、とてもしっかりとした海も、そうですねきちんとした駅も」、ほっほ、ほっほー。首はクルクル回転する。
それから海はある。牡蠣が有名な海だ。そうだ、われわれは牡蠣を焼きにきたのだ。昨日のテレビ番組にのせられて。美味しそうだねなどと話していたから。駅も近づき、車掌さんが仕事する。クフゥクトゥ氏は席で興奮によって羽根を大きく広げながら思わず声をあげそうになるものだから、わたしはその羽根のいち部分をいたずらして黙らせた。そうしているうちに駅に着いた。駅の名前を車掌さんが言う、さあ、到着だ。
電車を降り、あたたかな太陽に誘われて、楽しみのほうに向かう。クフゥクトゥ氏も楽しげだが、知らぬ駅だからほんのりと体を小さくたたんでいる。「行こう」、駅を降りてわたしは言う。クフゥクトゥ氏も、ほっほと答える。でも、クフゥクトゥ氏は少しだけおびえているのかもしれない。降りたことがない駅だから。でも。わたしは思う、そういった旅がいっとう楽しいんだ。だからわたしはなるたけ元気に、「行こう」もう一度そういった。
あとがき
冬になったら、牡蠣小屋に行くのが好きです。
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