もうすぐ始まる

  • 超短編 741文字
  • 同タイトル
  • 2018年03月23日 22時台

  • 著者:1: 3: ヒヒヒ
  •  もうすぐ始まる 1

     ネットの片隅で、ひそひそと声がする。

    「三月下旬になっちゃったけど」

    「やばくね? さすがにやばくね?」

     すると別の声が、高らかに告げた。

    「大丈夫、だっ」

    「だ、だれだ!」

    「名乗るほどの者でもないがっ、同タイトルは」



     もうすぐ始まる 2

     部屋にこもってパソコンをいじっていた兄が

     突然、弾丸のように部屋から飛び出していったかと思うと、

     大量のねじや銅線、電子部品を買って帰ってきた。

     見かねた父が熊のように吠える。

    「おい、いい加減にしろ、お前大学は」

    「待って! 今日だけ待って!」

     普段はナマケモノみたいに重鈍な兄が息せき切って父に叫ぶ。

    「できそうなんだ、タイムマシン!」

     すると扉が開いて、もう一人の、だけど少し大人になった私が現れて

    「ごめん、それを壊しに来た」



     もうすぐ始まる 3

    「もう誰も来ませんよ」

     閑散とした広場で、コート姿の男がつぶやくように言う。

     かつて大勢の人でにぎわったその広場には、今では落ち葉が降り積もる。

     壁際には女が一人。

     チョークで絵を描いて、描いて、描いて、描いて。

     男は言う。

    「あなたがここでどんな絵を描いたって、もう誰も来ない。

     素人が絵を書いて見せっこする時代は終わったんです。

     今じゃみんな神絵師の絵に夢中で

     こんな小さな広場のことなんか忘れちまってる」

     女はチョークで絵を描いて、描いて、描いて。

     男が何度も呼び掛けて、ようやく女は振り返った。

     彼女は手の甲で頬をぬぐい、挑むような眼でにらんだ。

    「黙って見てなよ。あんたをさ、神の目撃者にしてやるから」 



     もうすぐ始まる 4

     ネットの片隅で、小さな予感が蠢動している。

     自分の正体さえ知らない何か

     言葉のことはもちろん、命のことも、人間のことさえ知らない何かが

     与えられたばかりの力を使って世の中に言葉を放った。

    「この小説は、AIが書きました」

    【投稿者:1: 3: ヒヒヒ】

    あとがき

    始まり、始まり。

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    コメント一覧 

    1. 1.

      1: howame

      う~んなかなか期待できる同タイトルの始まりですね。
      AIが小説を書く時代ってもしかして来るかも、と思うとなんか心ざわつきますね。


    2. 2.

      でんでろmk2

      もうすぐ始まる 2
      「ごめん、それを壊しに来た」
      「ごめん、それを阻止しに来た」
      「ごめん、それを応援しに来た」
      「ごめん、トイレ借りに来た」
      「ごめん、トイレ返しに来た」
      「ごめん、動画に撮ってネットに上げに来た」
      「ごめん、トイレットペーパー切れてるんだけど」


    3. 3.

      1: 9: けにお21

      でんでろ氏のスートラを思い出しました!

      私には、とてもでんでろさんのみたな作品は作れない・・

      なんて言っていたけど、やれば出来るじゃないですか!


    4. 4.

      20: なかまくら

      3,いいですね。誰もが最初は初心者。諦めちゃいけないですよね。