Q-Shock

  • 超短編 1,377文字
  • ジョーク
  • 2018年02月27日 23時台

  • 著者: でんでろmk2
  •  ステージにイスが5つ密着して横に並べられている。
     右端のイスにコートを着て帽子を目深にかぶった男が座っている。

     設定としては、電車の中。やがてアナウンスが入る。

    「秋葉原~、秋葉原~」

     AとBの2人がイスの向かって左から乗り込んできて、Bが左端、AがBの右隣のイスに座る。

    A「いやー、とうとう買っちゃったよ、Q-Shock」
    B「さすが、アキバ、安かったよなー」
    A「税込みでニッキュッパ」
    B「298円とはなー」
    A「……なんか、今頃、不安になってきた」
    B「……なんか日本語たどたどしかったよな?」
    A「見てみよう」
    B「お、おう!」
    A「ストップウォッチ機能とか試してみるか?」
    B「あ、じゃあさ、ただ試しても面白くないから、俺が目をつぶって10秒経ったと思ったら、『ストップ』っ
      て言うのやろう」
    A「あ、ああ、そうしよう」
    B「あ、足でリズム取るのアリな?」
    A「OK。いくぞ! はい、スタート!」

     Bは黙って足でリズムを取り始めるが、8つ足で「トンッ」とやったところで、ピタリと動きを止める。

    A「おい、何、勝手にやめてんだよ!」

     AはBの肩を揺すった。

    A「あれっ? びくともしねぇ? それだけじゃなくて、めちゃくちゃ堅てえ!」

     ここで、急に帽子男がしゃべり出す。

    帽「9秒が急病なんです」

     Aは帽子男の存在をほとんど忘れていたので、かなり驚いた。

    A「な、なんなんですか? あんた」
    帽「9秒が急病なんです」
    A「だから、だじゃれ言ってる場合じゃないんですよ! 友達が動かなくなった上に堅くなっちゃって!」
    帽「あなたの時計を見てご覧なさい」
    A「はぁ? あれ? 8秒で止まってる。やっぱり偽物つかまされたのか?」
    帽「違います。9秒が急病で入院してしまって居ないので、9秒になれないのです」
    A「はぁ? さっきのだじゃれじゃないの?」
    帽「本当です。私は時間管理局からあなたをスカウトに来ました。どうでしょう? 9秒が退院するまでの間、
      代理の9秒をやっていただけませんでしょうか?」
    A「えぇっ! 私が? 急な話ですね。私なんかに出来るんですか?」
    帽「大丈夫! 我々がしっかりサポートします。それに時給は弾みますよ?」
    A「え? 弾むって、どれくらい?」
    帽「これくらいです」

     帽子男はおもむろにポケットからスーパーボールを取り出すと床に思い切り叩きつけた。
     2人はボールの行方を目で追った。

    A「お断りさせていただきます」
    帽「冗談です、冗談。時給1千万円でいかがでしょう?」
    A「はぁ? 時給1千万円? それこそ冗談でしょう?」
    帽「これが契約書です。これにサインすれば、時給1千万円はあなたのものです!」

     帽子男は懐から3つに折りたたんだ契約書を取り出した。
     Aはそれを奪うようにして手にすると、隅から隅まで読んだ。

    A「ほ、本当だ!」
    帽「それではサインを」

     Aは早速サインをしようとするが、直前で思いとどまる。

    A「俺、9秒になるんですよね? そしたら、ずーーーーーっと9秒で永遠に1時間経たないんじゃないかな?」

     帽子男は後ろを向いて、

    帽「チッ、もう少しで、代わりが見つかると思ったのに」
    A「おい! お前、誰なんだよ?」
    帽「俺か! 俺は10秒だよ! 代わりの9秒が見つからないと、9秒に格下げになっちまうんだよ!」
    A「だったら、お前が9秒やれや!」
    帽「いやぁ、俺、重病人なんです」
    A「こんな元気な重病人が居るかぁ?」

     A、帽子が飛ぶほど、帽子男の頭を張り倒す。

    【投稿者: でんでろmk2】

    あとがき

    すいません。小説じゃないです。コント台本です。

    Tweet・・・ツイッターに「読みました。」をする。