Scrambl:Egg

  • 超短編 2,362文字
  • 日常
  • 2018年01月28日 18時台

  • 著者: 春火
  • 私、こと高杉裕也には誰にも言えない秘密がある。
    というのも、私は地方の小学校で教師を務めているのだが遂にやらかしてしまった。

    単刀直入に言うと、教え子に恋をしてしまったんだ。
    相手の名前は、吉川里愛(よしかわ りあ)といって其れは其れは物凄く可愛いんだ。
    彼女も私のことを好きに思っているようなので其れはそれは幸せなのだ。
    彼女は、小学六年生に関わらず頭が賢く人間としての深みも兼ね備えている。
    その上、天使と悪魔のような二面性を兼ね備えているのだから彼女が最強じゃ無いか。
    力の前に倫理は無力なのだ、と彼女の顔を見つける度感じてしまう。

    ほら、今日だって---

     廊下を考え事しながら、重々しそうに歩いていると天使が私に近づく。
    彼女は軽快なステップで私の膝元に駆け寄ると、"ちょいちょい"と指でしゃがむように指示をしてくる。
    私は、彼女に逆らうはずもなくしゃがみ込むと、彼女の吐息が耳、鼓膜に吹きかかる。
    「先生、暗い顔しないで。」
    悪魔のささやきとでもいうのだろうか、彼女にそう言われると此れまで自分が考えていたことが急に馬鹿らしくなる。私は、里愛の頭をポンポンと撫で付けると肩を抱きながら同じ教室に入った。

    「さ、朝の朝礼を始めるぞ。お前ら席に着け。」
    こうしていつもの、朝が始まる。罪悪感を朝まで抱え込んでいても彼女の声、顔を聞く若しくは見れば忽ち吹き飛んでしまう。
    朝礼が終わって、暫く里愛を教卓から眺めていると思わず目が合ってしまった。
    2人の頬が赤く染まる。そんな様子を周りの生徒からは呆れた表情で見られている。

    本当、偶に「先生と里愛ちゃんって付き合ってるんじゃ無いですか?」という指摘を受けることがある。
    そんな時は、「そんな筈ないさ。里愛ちゃんは面倒かかる子だから仕方ないんだよ」と苦し紛れの言い訳をすると決めている。里愛は演技が上手なので、面倒かかる子を演じきる事だって出来る。
    だから、此れまでそれ以上の詮索をする者は現れなかった。

     ただ1人の例外を除いて・・・。
    ツカツカツカ、廊下から鋭く響くスリッパの音。奴だ、奴が来る。
    じわり、、脂汗を額に浮かべながら万全の状態で迎え撃とうと、1時間目の算数の教科書を開いた。
    「高杉先生、少しいいですか?」
    奴が来た。そう、奴とは同時期に務め始めた音楽の先生。成宮 飛鳥(なるみや あすか)。
    勿論、女性だ。
    めいっぱい平然を装って、「はい。」と端的に答えると彼女に言われるがまま廊下へ連れ出された。
    廊下に出る直前里愛をチラッと確認すると、机にうつぶせていた。
    其の姿が何とも可愛くて思わず口元が緩んでいた。
    飛鳥がそんな私の姿を見て、鋭く冷たい指摘する。
    「きもっ・・・。」
    「あっ、いやハハッ。それより、、、何ですか?」
    時計をツンツンと叩きながら、如何にも時間に追われてますよと必死にアピールをする。
    「あの、前々から言ってますが貴方里愛ちゃんとデキてるわよね?」
    「・・・はぁ、また其の話?もういいよ。算数の準備しないとだからさ。」
    「いやいやいや、朝礼前に私みたんですけど。アンタらがイチャイチャしてた所。」
    ・・・まずい、此れはひとまず聞かなかったことにしよう。
    「お前も、先生なんだからそんな下らないこと言ってる暇在ったら授業の準備しろよ。」
    続けて私は毒を吐く。無駄口があく前に塞いどけって感じだ。
    「ああ、そういえば成宮さん担任やったことないから結構暇なんだっけ?」
    「今日の件、主任に報告させて頂きますからね。」
    何処かキレたように死刑宣告すると、飛鳥はいじけたように戻っていった。
    (アイツは担任に憧れてるから、私を蹴落とそうと意地になっているんだろう・・・。はぁ)
    教室に戻り、子供達を席に着けさせ1時間目の授業の準備をしろと伝える。

    里愛は、終始私の方をじーっと見ていた。彼女のそういう無垢な愛くるしい姿がなんとも堪らない。
    大人の駆け引きを要求してくるような、臭い女共とは全く違う。
    私は、里愛へ秘密の信号を送る。信号を確認した里愛は、何処か儚げに笑っていた。
    そんな様子を気にしながらも、私は算数を子供達に教え込んだ。
    1時間目が終わると、里愛が「ちょいちょい」と手招きをする。
    私はそれとなく、里愛の方へ近づきしゃがみこむ。
    すると、里愛はほっぺにキスをした。
    突然のプレゼントいやアクシデントだったので、思わず仰け反る。
    バアンッ!!!!!!! 衝撃音と同時にクラス中の視線が僕と里愛の居る方向へ集まる。
    大人の体は強い(?)ので、後ろの机を吹き飛ばしてしまったがそんなことはどうだっていい。
    集められた視線を取り払うのも、この際後回しだ。
    赤く火照った里愛の横顔を見ていると、遂に理性が限界を迎えた。

    「里愛ちゃん、ちょっとこっち来てくれるか。」
    私は、態勢を整えて彼女を恰も叱ろうとしている教師の如く冷たい声で誘う。
    「・・・は、はい。」
    里愛も其れに応じて、機転の利いた如何にも叱られますっていうトーンで返事をかえす。
    私に連れられて教室から廊下へ出ると、彼女の手を引き現在誰も居ない資料部屋に向かった。

    「り、里愛ちゃん。」
    声を微かに震わせながら、彼女ににじり寄る。
    (あれ、今の私もしかしてTVとかでよく見かける感じの危ない奴?)
    にじり寄ろうとしていた足を一旦引き返して冷静になろうと、壁に頭をぶつける。
    そんな危ない様子の私を見ていたにも関わらず里愛は私に思いをぶつける。
    「先生、好き。」
    ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー20分後 一方クラスでは

    何処からともなく、声があがる。
    「あれ、先生達遅くね?」
    「放っとけよ。授業やらないで済むからラッキーじゃん。」
    ツカツカツカ、鋭いスリッパの音が聞こえてくる。
    「あれ、先生戻ってきたんじゃ無い?此の音。」
    「まじかよ、だりぃな。」
     
    ガラッ、勢いよく扉が開くと其処には、涙を浮かべた成宮飛鳥が立っていた。

    【投稿者: 春火】

    あとがき

    色んな属性を詰め込みすぎてしまって、お世辞にもイイできとは言えない結果となってしまった。
    けれど、個人的には結構イイできとなったのでこのまま披露したい。
    また時間があるとき、全体的に整えたいと思います。

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    コメント一覧 

    1. 1.

      1: 9: けにお21

      ませた小学生もいるでしょうからねー

      それに乗っかっている先生もバレれば確実に首ですね

      生徒の方から仕掛けるケースもあるのでしょうね

      まあ自由恋愛とは言え、子供相手は職を失うだけにとどまらず、場合によっては捕まっちゃいますからね

      そんな危険を冒してまでって思いました

      ただし、我を失うことが恋と言うものでした


    2. 2.

      春火

      >>けにお21さん
      いやああ~~~此れはですね。
      ほんっとうに難しい問題だと思いますよ。
      ただね・・・書いてるとき滅茶苦茶楽しかったです汗