奇妙な事実!『指名手配犯ジャクソン・メイビット死体で発見』

  • 超短編 2,675文字
  • 日常
  • 2018年01月03日 20時台

  • 著者: 3: 茶屋
  • ○○月××日 自身の妻と子供を殺害した容疑で、指名手配を受けていたジャクソン・メイビット(27)の死亡が確認された。

     ジャクソン・メイビットは浮気をしていた妻と激しい口論となり、結果妻であるメアリー・メイビット(30)を殺害しその後、
    娘のキャシー・メイビット(5)にも手をかけたとして指名手配がかかっていた。

     ジャクソン・メイビット(以下ジャクソン)は自宅から200㎞離れた場所にある、廃坑を爆破し自殺したと思われる。

     廃坑は現在立ち入り禁止であり、中には危険ガスや採掘時代の爆薬が残っているなどと現地では言われていた。
     爆発音を聞いた近隣住民の通報を受け、州警察が調査を行った結果。ジャクソンの死体が見つかった。

     ジャクソンの死体は爆発の衝撃で激しく損傷しており、手に数枚のメモが強く握られていた。
     現在警察が文書の復旧をしていると発表されている。

     また、ジャクソンが爆破した廃坑には炭鉱として使われていた当時には確認されていなかったはずの、非常に広い空間が確認され、
     奇妙なことに、ここ数年で行方不明になった人間の持ちものとされるものが多数発見された。しかし遺体はどれも激しく燃焼しており、身元の確認は困難を極めると思われる。

     現在身元が判明しているのは、致命傷が銃傷であり死体の損傷が少なかった州警察の――――

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     ♯memo        ✿✿✿✿✿               ○/○○/○○○○

    ・これを見ている、お前がどういった人間なのか私には知る由もない。
    ・ただ、お前が絶望していることはわかる。
    ・ここは、アイツがいるフロアの上に向かう作業用通路だ。
    ・アイツには会ったか?会ってないなら、話はこれまでだ。今すぐ帰れ。
    ・手遅れだろうけどな。
    ・アイツを見たのなら、頼みたいことがある。
    ・どこから書けばいいかわからない、このメモは娘のものだ。あの子は花柄のメモが好きだったんだ。
    ・白い花の茎で作った小さな指輪を俺に、違う違う違う違う違う。ダメだダメだ書くんだ。
    ・説明をしなければならない。大事なことだ。それまでは書かせてくれキャシー。お願いだ。
    ・俺は多分もう死んでいるだろうな。ランプの火を決して絶やすな。

     ♯memo        ✿✿✿✿✿               ○/○○/○○○○

    ・始まりはどこからなのかわからない。
    ・ただ、気がついたら。俺はアイツのいるこの場所まで引き寄せられた。
    ・お前もだろ?嫌になるな。
    ・俺は娘を殺した。妻は病気だった。俺が守ってやらなきゃならないのにキャシーは死んだ。
    ・俺の不注意のせいだった。悔やんでも悔やんでも悔やみきれない。
    ・ごめんよキャシーキャシー、俺の天使、俺の全て、可愛いキャシー。
    ・ごめんごめんごめんごめんごめん
    ・書け、書くんだ。出ないと全部がダメになる。
    ・俺は娘が死んで、そして吸い寄せられるようにここに来た。おそらくはお前と同じように。

     ♯memo        ✿✿✿✿✿               ○/○○/○○○○

    ・この廃坑はまるで食虫植物だ。しっているか、匂いで誘って獲物が入るとパクリと口を閉じるんだ。
    ・ところでランプは大丈夫か?この部屋にあるランプの火は決して絶やすな。
    ・獲物は俺達だ。アイツは人を食べる。
    ・俺はずっと呼ばれていた。キャシーが死んで仕事を止めてそんで、ずっと家で寝ていたんだ。
    ・そうしたら、聞こえた。キャシーの声だ。お前もだろ?
    ・お前にはアイツはどんなふうに見える?俺には、俺にはキャシーに見えた。
    ・廃坑を進むと、広いフロアに出たはずだ。そこでアイツを見たな?
    ・夢かと思った。キャシーが帰って来たんだ。俺は手を広げてキャシーを抱きしめようと近づいた。
    ・それで終われば良かったのに気づいちまった。キャシーの後ろには人間だった存在がゴロゴロ転がっていた。
    ・俺は見ちまった。あれはなんだ?宇宙人みたいだ、人からあんなものが生えているなんてあれじゃまるで、植木鉢。

     ♯memo        ✿✿✿✿✿               ○/○○/○○○○

    ・驚いて手に持ったランプが落ちて割れた、火の粉が散ると夢から醒めたようにキャシーの姿が変わった。アイツがなんなのかはわからない。
    ・ただし純粋、あぁ神様。どうかもう少しだけ猶予を、この文章が書けるだけの力を。
    ・アイツは廃坑に入った人間の記憶を読み取り再現する俺は初恋の娘のロッカーをここで見つけたんだ嘘じゃない。
    ・一度入るとこの廃坑からは逃げられない。あいつは温かいものが苦手だ、だからランプの火を絶やすな。
    ・キャシーの姿をしたアイツ、あのブツブツニキビ顔の豚にクワガタの角が引っ付いたあの化け物は外に出たがっている。
    ・その為に俺達を使って何かを作っているんだ。気がついた俺はもう何日も廃坑で逃げ続けている。餓死するかあいつに捕まるかのどっちかだな。
    ・アイツは別れた最愛の人の声で人を引き寄せる。その声に逆らうのは不可能だ。
    ・だって今もキャシーの声が声が聞こえる聞こえる。
    ・俺が逃げている間にも他の人間が一人呼ばれてここに来た。すぐにアイツがいつもいるフロアに行って。
    ・ママと叫んで抱きしめて、そのまま生やされていた。
    ・倒す方法はある。簡単だ。あいつは光や熱に弱い。

     ♯memo        ✿✿✿✿✿               ○/○○/○○○○
    ・だから、頼むよ、お願いだ、アイツを殺してくれ。ランプを投げつけろ。
    ・この部屋にある爆薬を使え、とにかく熱を使えばいい。簡単だろ?
    ・俺にはできない。だってキャシーがするなって、あいつを何度も殺そうとした。
    ・でもあいつはキャシーの声で香りで俺は、俺にはできない。
    ・あいつ、許せない、キャシーの姿を利用して、あぁ神様。
    ・俺を許して許して許して許して
    ・俺はもうすぐ生やされる。そうはさせない、俺を利用させない。
    ・急がないとだってこの声には逆らえない。お前はどうだ?
    ・だれかがあのフロアから逃げ出してこの部屋にくることを祈っている。
    ・そしてこのメモを読んでアイツを殺してくれ。
     
     ♯memo        ✿✿✿✿✿               ○/○○/○○○○

    ・罪の意識を利用してくる。俺達は後悔している。
    ・お前は負けるな。
    ・キャシーを助けてやって欲しい。お前の大事な人を汚すアイツを殺せ。
    ・俺はダメだった。俺は逆らいたくない。このまま死ねばキャシーは許してくれるって。
    ・ダメだ。あいつを外へ出すな。絶対に、ここで殺せ。
    ・あぁキャシーを助けてやってくれ、アイツはキャシーの声で、許せないんだ。
    ・最後に抗うよ、すまなかったキャシー俺の娘、キャサリン俺の妻、アイツに利用される前に君たちの元へ。
    ・パパは立派な警官ではなかったようだ。
    ・貴方に勇気を
    ・貴方の罪に神の許しを

    【投稿者: 3: 茶屋】

    あとがき

    祭り没作品です。
    意味がわかりづらい作品になってしまった。

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    コメント一覧 

    1. 1.

      1: 3: ヒヒヒ

      いやぁ恐ろしい魔物が出てきましたね。人の心を覗き込んで、その弱みに付け込む魔物。犠牲者が、ある意味で付け込まれたいと思っていることがまたたちが悪い……。
      面白かったのでコラボ作品書かせていただきました。コラボを快諾していただき、ありがとうございます。


    2. 2.

      1: 9: けにお21

      面白い発想ですねー。

      廃坑の中に、人の心を読み取り、最愛の人などを作り、声を作り、それで誘い出す、化け物がいる。
      化け物に捕まると植木鉢にされるw

      化け物の弱点は火や光。

      廃坑からは逃げられない。

      これらのパーツから物語をうまく組み立てている。
      練り込みや作り込みを、感じられる。

      最後、メモを残した主人公は、廃坑からは逃げ出せないし、最愛の人に成りすました化け物に手を出す勇気はないし、化け物の誘惑に負けて高まり植木鉢にされるくらいなら、と最後は自殺を選ぶ。

      メモは、廃坑に入ってしまった誰かさんに託したもの。つまり、主人公は、自分には出来なかった化け物退治をメモを使い、誰かさんに頼もうとしていた訳だ。

      そして、冒頭の廃坑の爆発ニュースに戻る。ニュースでは、主人公が廃坑内で爆発させて自殺したとの見立てだが、メモから実はそうではなく別の人が化け物退治のために、爆発させちまったのではないか、と想像される。

      ニュースやメモのみの作品であり、説明書きなどが無い作りがカッコイイ。ただ、これが通常よくある小説とは異なり、話が分かりにくい原因なのでしょうね。まあ、三回読めば理解出来るので、三回読めばいいw

      時間の流れが、往き来する作品は、どうしても作者の作為的な意図を感じてしまうもの。悪くいえば操られている感じが嫌味になる。それに、時空を往き来させると、物語の展開が分かりにくくなる。
      その点、本作は作為的ではなく自然な流れで時を往き来させている。つまり、
      ニュースは今現在。
      そのニュースでメモが見つかる。
      メモは当然、過去のものである。でもって古いメモから新しいメモへと読み上げている。
      時の往き来が至って自然であり嫌味がないし、繋がりがちゃんとあるから分かりやすい。
      そこが素晴らしい。

      外人、外国ぽいのも、オシャレ。

      独特な世界観を創った。

      変な化け物を生み出した豊かな創造性。

      ニュースやメモが細部までこだわっている。きめ細やかな仕事ぶりは、まるで輪島塗りのようにとても美しい。職人芸。つまり、本物っぽい。

      いやはや、これはどれを取っても名作ではないでしょうか。

      祭りから、とんだ副産物を得ましたね!

      コレは広く文書化したくなりますね〜


    3. 3.

      3: 茶屋

      >ヒヒヒさん
      感想ありがとうございます。そしてコラボも面白かったです!!
      たちの悪い化け物を感情味あふれる描写で書いたヒヒヒさんの作品も是非皆さん読んでください!!
      →https://shumi.herokuapp.com/ssses/571

      >けにおさん
      感想ありがとうございます。読み取っていただけて嬉しいです。
      どうしても読者に考えてもらわないと成立しない作品なので色々考えて没にしました。
      ただ、自分でもそこそこ気に入っていたのでこちらに投稿したしだいです。
      この作品を祭りとして没にした最大の理由は、これ書いたの絶対茶屋だと幾人かの人にはバレるからなんですけどね。