じゃんけん

  • 超短編 1,725文字
  • ジョーク
  • 2017年11月25日 08時台

  • 著者: 3: 寄り道
  • とある中学校での給食の時間。今日も、クラス内で休みの生徒がいたため、牛乳が1つ余っていた。

    そのため、1つの牛乳を巡って『牛乳じゃんけん』が催されていた。

    先生の「牛乳欲しい人、集まってぇ~」の声で集まったのが、男子4人と女子1人。

    男子の1人が「最初はグー」と声に出すと、残りの4人が「じゃんけんポン」と口を揃えて叫んだ。

    勝負は1回で決まった。

    勝ったのは、今回の牛乳じゃんけんで紅一点の指宿律(いぶすきりつ)だった。
    「また、おめェかよ」1人の男子がぼやく。
    「私にじゃんけんで勝とうとするのが、そもそもの間違いなの」律が獲得した牛乳にストローを刺しながら言う。
    「りっちゃん、じゃんけん本当に強いよね」律の親友が感心する。
    「私、じゃんけんで負けたことないから」
    「ほんと、今までりっちゃんが、じゃんけんで負けたところ見たことないもん」
    「たまたまだよ」また男子が口を挟む。
    「たまたまにしては、りっちゃん、じゃんけん運強すぎない?」
    「運がいいだけ。今度は絶対に勝ってやるからな」男子が律の顔に指をさす。
    「だから言ってるでしょ。私にじゃんけんでは勝てないって」

    「そんなのやってみないと分かんないじゃん」

    「それが分かるんだなあ。そもそも、じゃんけんって運の勝負だと思ってない?」

    「運しかないだろう。勝てる確率は3分の1。律はたまたま、その3分の1を物にしているだけ」

    「そこからして間違いなのよ。じゃんけんは運じゃない、洞察力なの」

    「洞察力?」

    クラスメイトが、給食の片付けを始めた。

    「そう、洞察力。私、相手が出す手が分かるの」
    「思考が読めるってこと?」

    給食当番の人が、おかずやら味噌汁などが入っていた容器を片付けている中で、残りのクラスメイトは昼休みを迎えた。

    指宿律は首を横に振る。

    「思考はさすがに読めないよ」そして笑う。
    「手の動きを見ているの」
    「後出しってこと?」
    「厳密にいうとそういうことになるのかもね」

    「ずるじゃん」

    「ずるも、気付かれなければずるじゃない」

    そこに給食当番だった指宿律の親友が「何、話してたの?」と加わって来た。

    「律がじゃんけんで勝てる理由は、ずるしてたからって」

    「ずるって?」

    「後出ししているんだって」

    「うそ!?」親友は律に顔を向ける。
「後出しっていっても、あれだよ。相手の手の動きを見てから判断して出しているってことだよ」

    「それが後出しっていうんじゃん」男子が突っかかる。

    「試しにもう一度やってみてよ」親友がじゃんけんを促す。

    2人はじゃんけんを始める。

    当たり前のように指宿律が勝つ。

    しかし、後出しをしていると言っていても、親友の目から見ては同時に出しているようにしか見えなかった。

    親友は何回もじゃんけんを促す。同時に出しているように思える。

    「後出ししてないじゃん」親友がいう。

    「判断するのはコンマ1秒くらいの世界だから」

    「どうして、出す手が分かるの?」
「筋肉の動きを見ているの」

    「筋肉の動き?」

    「じゃんけんって幸いなことに、グー・チョキ・パー、それぞれ手の動きが全然違うの。そこを見極めているだけ。だから、もし負け続けろっていわれたら負け続けるし、あいこにしろっていわれたら、あいこに出来る」

    それを聞いた男子、もう一度じゃんけんをやろう、と持ちかけ「今度は負けて」って言った。

    指宿律は言われた通り、負けた。

    男子は何度も何度も「勝って」「負けて」「あいこ」を繰り返し言って、じゃんけんを挑み続けた。

    指宿律にとっては、いい脳トレだった。

    「すげぇな、律」

    「私の特殊能力」くすりと笑う。
    
「じゃんけんを思い通りに出来る能力。凄いけど、使い道少なそうだな」男子が笑う。

    「でもこれから先、じゃんけんで物を決めることって沢山あるでしょう」

    「じゃんけんで、何かしらのトップになったりしてな」男子が自分で言った言葉に笑い「そんな訳ないか」と自分自身に突っ込む。

    すると、授業が始まるチャイムが鳴り、クラスメイトが各々の椅子に座り始めた。

    ― それから10年後 ―

    指宿律は、思い通りにじゃんけんが出来る特殊能力を使って、国民的アイドルのトップになった。


    でもその話はまた別の機会に。。。

    【投稿者: 3: 寄り道】

    あとがき

    このストーリーは、テレビ中継されていた某アイドルの”じゃんけん大会”を観ていて、思いついたストーリーです。
    中学生を主体としてストーリーを考え、中学生が話す言葉とはどんな風なのか、自分の中学生時代を思い出しながら、書きました。
    所々、こんなこと中学生が言うか!!と思うセリフがあると思いますが、そこはまだ僕が勉強不足だったということで、大目に見ていただけると幸いです。

    感想や意見、お待ちしております。

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