死神グース

  • 超短編 579文字
  • 日常
  • 2017年09月29日 14時台

  • 著者: ちくたく
  •  とっぴょうしもない話からはじめて恐縮だが、僕の友人グースは死神である。はじめ、そんなことを知らずに僕とグースとは友人となったが、ある日、悩ましき顔をした彼は、どうやらふさぎ込んだ様子で「ぼく、実は死神なんだ」と申し訳なさそうにいった。僕は、「へー、すごいね」と答えた。そのような事態を経て、僕たちの友達性は神格化した。ほんのささやかなエピソードだけど。

     グースはまさしく死神であり、人の命を奪う。ちょっとした喧嘩をしたある日僕も命を奪われそうになったことがある。その手筈はさすがに巧妙であり、命を失いそうになりながら感心したものだった。

     ある日のこと、「ごめんね」とグースが言った。僕はどうしたんだい、と答えた。するとグースは、「(その大きな瞳を閉じて、ぽたぽたと涙を流しながら)君の猫を殺さなければならないんだ」と言った。たしかに僕の家には太った黒猫がいて、なんの由来か知らないがジジと呼ばれていた。僕の猫を殺害する理由を尋ねると、「うえからの指示なんだ」と答えた。その答えに僕は憤慨した。グースにではなく、その「うえ」とかいうものに。僕の怒りのようすをみて、グースはあわてた。グースは僕との友情の消失を懸念したらしく、「ごめんよ、ともだちなのにごめんよ」と言う。その悲哀をみて、僕の憤怒はすとさめる。そして、あたまがくるくるとまわり、恐ろしい計画を思いつく。

    【投稿者: ちくたく】

    あとがき

    おそろしい計画が思いつきました。

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    コメント一覧 

    1. 1.

      1: howame

      ちくたくさん、久しぶりでーす。ちくたくファンの私としてはとてもうれしいです。
      おそろしい計画って何なのでしょう。続きを読むのが、ちょっとおそろしいです(笑)


    2. 2.

      ちくたく

      ご一読頂きありがとうございます。
      >howameさん
      お久しぶりです。ありがとうございます。
      ファンと言われると至らなさと稚拙さに恥ずかしい限りですが、また、ちょっとずつでも読めるようなものを書きたいな、と思います。


    3. 3.

      1: 9: けにお21

      お久しぶりです!

      死神。
      密鬼さんからが投稿された作品からの連なっている。
      もしかして、本サイトにおいて、死神ブーム到来?

      さて本作、死神が普通に友達であることが笑えます。
      とても自然に友達。

      恐ろしい計画が気になるw


    4. 4.

      1: 3: ヒヒヒ

      お久しぶりですちくたくさん。
      果たして「うえ」に一矢報いることはできるのか気になりますね。
      人間の小ささを再確認させられる羽目にならなければいいですが。


    5. 5.

      ちくたく

      ご一読頂き、ありがとうございます。
      >けにおさん
      お久しぶりです。死神は連なるのです。鈴なりの死神って面白いじゃないですか。計画もきっと面白いものですよ。

      >ひひひさん
      お久しぶりです。世の中には勝つべきでない「うえ」など、そこらじゅうに落ちていて、寝そべってますからね。しっぺ返しに合わないように上手に負けるのも計画論ですね。


    6. 6.

      20: なかまくら

      お久しぶりです。
      巡るめくような物語の展開に引き込まれてしまいました。
      おそろしい計画、と言って終わるところに愉快な余韻がありますね。


    7. 7.

      ちくたく

      ご一読頂き、ありがとうございます。
      >なかまくらさん
      お久しぶりです。こういう舞台展開がわりと好きなんです。ガルシアマルケスというと失敬ですが、ちょっと奔流ぎみになるやつが。
      ラストは愉快と言っていただいてありがたいです。オチをつけようかと思ったのですが、超短編はこの方がいいかも、と。