奇妙な花見

  • 超短編 641文字
  • 恋愛
  • 2017年04月12日 23時台

  • 著者: ミチャ寺
  • 夜桜の下で、時折幽霊が目撃される。

    * * *

    「よう、圭子。今年もきたぞ。」
    「えへへ、おかえり。雄二くん。」
    夜桜の下に、2人並んで座る。2人は毎年春、決まって約束していた桜の木の下に来る。
    「おまえが死んでもう2年か……」
    「早いよね。ついこの間だと思っていたのに。」
    そう、圭子は2年前に死んでいた。つまり幽霊である。
    この桜の木は、まだ生きていたときに2人で花見に行こうと約束した場所だった。
    「そうだ、ビール買ってきたぞ。さすがにもう飲めるだろう?」
    「……うん、ありがとう。」
    雄二は傍に二本の缶ビールを置いた。だが、2人ともそのビールには手を伸ばさなかった。
    2人とも口数が少なくなる。桜が風に揺られる音がはっきりと聞こえる。
    「……俺さ、死ぬ前にちゃんとお前のことを幸せに出来ていたかな。」
    雄二が重い口を開ける。
    「うん。私は雄二くんがいて幸せだったよ。」
    圭子は呟くように返した。しかし、雄二には風の音しか聞こえていない。圭子の言葉は、届いていなかった。
    「……なあ、圭子。
    風強すぎないか?全然声聞こえなかった。もう一回大きな声で言ってくれ。」
    「あんな恥ずかしいこと大きな声で言えるわけないじゃない!というかそんなこと気にしているなら
    なんで先に死んじゃったのよ!」
    「仕方ないだろう、死んじゃったんだから。」
    「まあ私も人のこと言えないよね。」
    「よし!そろそろ飲むか!」
    「ヤケ酒だぁ!生きていれば今年で私も二十歳!もう飲んでもいいでしょう!」

    * * *

    夜桜の下で、時折幸せそうに騒ぐ2人の幽霊が目撃される。

    【投稿者: ミチャ寺】

    Tweet・・・ツイッターに「読みました。」をする。

    コメント一覧 

    1. 1.

      ミチャ寺

      どうも、ミチャ寺です。
      新天地創設ありがとうございます!!
      今後ともよろしくお願いします。


    2. 2.

      1: 鉄工所

      おばけなのに
      キョンとくる話しで〜
      ええんかい(二人の宴)


    3. 3.

      1: howame

      羨ましいカップルですね♪私も死んでからも好きな人とお花見したいです。


    4. 4.

      参謀

       死後でも幸せそうですね。 いいなー


    5. 5.

      1: 9: けにお21

      夜桜とかけて、恋愛と説きましたね。

      僕も同意見ですね。

      しかし、僕の夜桜から見える景色は、切なさですね。

      いくら愛し合っていても、いずれは散るのだろうな、こんな幸せは永遠と続かないのだろうな。

      との思いです。

      それに反して、ミチャ寺さんは永遠と続くもの、解釈された。

      そうありたい。そうありたい。そうありたいです。


    6. 6.

      ミチャ寺

      鉄工所さん、コメントありがとうございます。
      やっぱりかわいい話が書いていて1番楽しいです。

      howameさん、コメントありがとうございます。
      こういうカップルになりたいなぁと思いながら書きました。相手はいませんが(笑

      参謀さん、コメントありがとうございます。
      この2人に限っては死んでからが幸せなのかなぁとか思ったりしてます。

      けにおさん、コメントありがとうございます。
      おそらく桜を『散る』ものとして描くか、それとも『巡る』ものとして描くかで、桜が持つ意味も変わるのだろうと思います。
      今回は『巡る』ものとして描かせていただきました。


    7. 7.

      キノ

      霊界でも結婚っていう手続きできたらいいのに!ふたりには幸せになってもらいたい。もう死んでしまっているのが、切ないですけど、その切なさをあえて書かないところがいいですね。


    8. 8.

      ミチャ寺

      キノさん、コメントありがとうございます。
      死後結婚ができればいいんですけどね。その場合は「死んじゃった結婚」なんて言う言葉が流行したりしそうですが(笑