夜桜の下で、時折幽霊が目撃される。
* * *
「よう、圭子。今年もきたぞ。」
「えへへ、おかえり。雄二くん。」
夜桜の下に、2人並んで座る。2人は毎年春、決まって約束していた桜の木の下に来る。
「おまえが死んでもう2年か……」
「早いよね。ついこの間だと思っていたのに。」
そう、圭子は2年前に死んでいた。つまり幽霊である。
この桜の木は、まだ生きていたときに2人で花見に行こうと約束した場所だった。
「そうだ、ビール買ってきたぞ。さすがにもう飲めるだろう?」
「……うん、ありがとう。」
雄二は傍に二本の缶ビールを置いた。だが、2人ともそのビールには手を伸ばさなかった。
2人とも口数が少なくなる。桜が風に揺られる音がはっきりと聞こえる。
「……俺さ、死ぬ前にちゃんとお前のことを幸せに出来ていたかな。」
雄二が重い口を開ける。
「うん。私は雄二くんがいて幸せだったよ。」
圭子は呟くように返した。しかし、雄二には風の音しか聞こえていない。圭子の言葉は、届いていなかった。
「……なあ、圭子。
風強すぎないか?全然声聞こえなかった。もう一回大きな声で言ってくれ。」
「あんな恥ずかしいこと大きな声で言えるわけないじゃない!というかそんなこと気にしているなら
なんで先に死んじゃったのよ!」
「仕方ないだろう、死んじゃったんだから。」
「まあ私も人のこと言えないよね。」
「よし!そろそろ飲むか!」
「ヤケ酒だぁ!生きていれば今年で私も二十歳!もう飲んでもいいでしょう!」
* * *
夜桜の下で、時折幸せそうに騒ぐ2人の幽霊が目撃される。
コメント一覧
どうも、ミチャ寺です。
新天地創設ありがとうございます!!
今後ともよろしくお願いします。
おばけなのに
キョンとくる話しで〜
ええんかい(二人の宴)
羨ましいカップルですね♪私も死んでからも好きな人とお花見したいです。
死後でも幸せそうですね。 いいなー
夜桜とかけて、恋愛と説きましたね。
僕も同意見ですね。
しかし、僕の夜桜から見える景色は、切なさですね。
いくら愛し合っていても、いずれは散るのだろうな、こんな幸せは永遠と続かないのだろうな。
との思いです。
それに反して、ミチャ寺さんは永遠と続くもの、解釈された。
そうありたい。そうありたい。そうありたいです。
鉄工所さん、コメントありがとうございます。
やっぱりかわいい話が書いていて1番楽しいです。
howameさん、コメントありがとうございます。
こういうカップルになりたいなぁと思いながら書きました。相手はいませんが(笑
参謀さん、コメントありがとうございます。
この2人に限っては死んでからが幸せなのかなぁとか思ったりしてます。
けにおさん、コメントありがとうございます。
おそらく桜を『散る』ものとして描くか、それとも『巡る』ものとして描くかで、桜が持つ意味も変わるのだろうと思います。
今回は『巡る』ものとして描かせていただきました。
霊界でも結婚っていう手続きできたらいいのに!ふたりには幸せになってもらいたい。もう死んでしまっているのが、切ないですけど、その切なさをあえて書かないところがいいですね。
キノさん、コメントありがとうございます。
死後結婚ができればいいんですけどね。その場合は「死んじゃった結婚」なんて言う言葉が流行したりしそうですが(笑