SF:コロナ

  • 超短編 1,579文字
  • ジョーク
  • 2021年07月09日 23時台

  • 著者: 3: 寄り道
  •  20XX年。世界は、防護服とガスマスクなしでは生きられない世の中になっていた。
     そうなった原因の一つに、現在の歴史の教科書にも載っている、今は無き、中国という国で人工的に発生させた、コロナウイルス(通称:COVID-19)が原因とされている。
     2019年に発生したCOVID-19の脅威は5年にも渡り、世界の人々を恐怖に陥れ、感染しないようにワクチンの開発に挑んだが、これといった特効薬は開発されなかった。
     多少COVID-19の感染リスクを抑えるワクチンは開発されても、副作用が原因で死に至る人増え続け、政府並びに医療団体の信頼は日に日に落ちて行った。
     だが2023年に、今まで投与していたCOVID-19のワクチンを一新するワクチンが、がん光免疫療法でお馴染みの、本社を日本に置く、楽観メディカルが発表し世界を驚かせた。
     これでコロナに打ち勝てるといった矢先、また中国で新型コロナが発生した。
     中国は2019年と同様に自然発生と言っているが、立て続けに同じ国での発生のため、誰も中国政府の声に耳を傾けない。
     そして、COVID-19よりも強力な感染を持つコロナが、再度、世界中に広がり人々を苦しませ、中国が世界を滅ぼそうとしていると、陰謀論が渦巻いた。
     そして世界を揺るがす事件が起こった。
     アメリカが、コロナの根源を絶やそうと、中国に攻撃を始めたのだ。
     それが俗にいう、2025年の米中戦争である。
     米中に挟まれた小国日本は、終戦するよう双方に呼びかけるも、アメリカと中国を前にしたらミジンコ並みの国家権力しかない日本の首相の声は聞き入ってもらえず、最終的には、日米和親条約を振り翳され、反発できない日本はアメリカの言いなりのままに加勢し中国を攻撃するようになった。
     日本の行動は、中国の隣国であるロシアと北朝鮮、さらに近国の韓国に影響を与え、それぞれの国々が中国を攻撃し始めた。
     それが翌年の2026年の出来事であり、のちに六大戦争と呼ばれるようになった。
     ロシアと中国に挟まれたモンゴルは、抵抗虚しく滅国し、米中戦争から始まったこの争いは8年後にようやく終戦を迎えた。総死傷者は約7千万人以上と言われ、犠牲者が最も多いとされる第一次世界大戦よりも遥かに上回った。
     そして一番の問題が、死傷者の8割方が中国人であり、コロナの発生源並びに国としての機能を果たせなくなった中国は2032年に世界地図から『中華人民共和国』という言葉が消滅し、モンゴルに続き滅国に至った。
     しかしただでは滅びない中国は、2031年に毒ガスを含んだ空爆(通称:空毒爆)を、攻撃して来た5カ国に投下した。
    その影響は凄まじく学者の間では、現在でも禁止区域で溢れる1986年にチェルノブイリで起こった原子力発電所事故以上と言われ、さらにこの毒ガスは風に運ばれ世界を包んで行った。
    それにより世界各国でなんの前触れもなく急にもがき苦しみ息を引き取る人が続出し、急ピッチでガスマスクの生産が始まった。
     そして、冒頭にもお伝えしたように、20XX年現在、人々は防護服とガスマスクなしでは生きていけなくなった。
     飲食、風呂、トイレ、そしてセックス。その全てを行う際には、空気が洗浄された無菌室で行うことを義務づけられた。
     しかしそういった施設は、政府の管轄であり、個人のプライバシーは厳守されていると言われていても、国民一人ひとりのフラストレーションは溜まっていく一方で、真の意味での安らぐということはなくなってしまったが、しかしながら情勢を思うと、渋々ではあるも従うしかなかった。
     そんな中、世界各国で秘密裏にとある実験が行われていた。
     このお話は、防護服、ガスマスクなしでは生きていけない今の世の中で誕生した、防護服もガスマスクも必要としない新たな人種。
     言い換えれば、毒ガスで荒んだ世界に生まれた、第二のアダムとイヴの物語である。

    【投稿者: 3: 寄り道】

    あとがき

     2019年に発生したコロナは今もなお猛威を振るい、我々を苦しめている存在です。
     二転三転する政府の意向に国民全員が頭を抱えている現状で、私としては生きたいフェスがことごとく中止になり、ライブで騒ぎたい欲求が日に日に増していきます。
     ですが、収束することはあっても、終息することはないコロナに怒りの矛先を常に向けているのは疲れるので、逆転の発想で、コロナと自分の好きな妄想を掛け合わせてみることにしたら、このような物語が誕生しました。
     ジャンルにも記してあるように、一つのジョークだと思って読んでもらえたらなあ、と思います。
     意見や感想、お待ちしております。

    Tweet・・・ツイッターに「読みました。」をする。

    コメント一覧 

    1. 1.

      20: なかまくら

      なんとも恐ろしい・・・冗談だといっていただきたいものですが、あり得そうで怖いですね。
      そして、きっと滅亡した国も含めて、各国が同じように新人類を生み出しており、やがて旧人類である我々はコロナウイルスによって滅びたと地球史として学ぶことになるのかも・・・なんて想像が広がっていきました。


    2. 2.

      1: 9: けにお21

      なるほどー

      人類は辛うじて、助かったが、居心地の悪い世界になった訳ですね。

      コロナが人為的とするなら、、、

      考えるのも恐ろしいですねー

      私の場合、コロナが収束したら、思う存分、温泉に浸かって、芝居を観たいなあ〜