星が知る #3

  • 超短編 1,385文字
  • 日常
  • 2020年10月12日 02時台

  • 著者: 1: ごどり

  •  とある街に、親友の墜落を願った少年がいた。
    少年の名は、大輔。
    学校では、友人が多くまた支持も厚いが心の中に虚しさを抱える。
    他人と常に比較しては、劣等感を孕み妬んでいる。

     街が銀色に染まり、人々が暖を求める頃。
    私は、クラスの中で蹲る様にしている琥珀を見ている。
    半年前の出来事を知らない人が今の琥珀を見た時、口を揃えて思うことがあるだろう。
    「どうして彼はあそこまで変わってしまったのか。」
     でも、私は見てきたから分かる。
    ”あんな”虐め方をされて、変わらずにいられるはずがない。
    どうして私はあの日、止める事ができなかったのだろう。
    何故私は、今も琥珀に話しかけることができずにいるのだろう。
    琥珀にとって、一番助けてほしい時を逃してしまったから声をかけて拒絶されることを拒んでいるのだろうか。
    でもどうして、琥珀は学校に来られるのだろう。
    あの日以降、琥珀が何度も涙を流していることを知っている。
    その涙を笑われ、号哭を暴力で捻じ伏せられたことも。
    真里は、その様を「憐れだねえ」という風に見ていた。
    私が心苦しくしていると、真里は「自然界では弱者は虐められて、当然なんだよ。自然の摂理。仕方がないよ。」なんて言っていた。
    真里はそんな子だったけ、と思うと私も皆んなとの距離が広がりそうで怖くなり、傍観者でいたのだ。
    だって、琥珀は私を拒絶したんだもの。
    けれど、今でも偶に思うことがある。
    ”琥珀が、クラスの中心にいる頃は何故あんなに楽しくいられたのだろうか”

     冬。私はいつもの様に読書している。
    私の名前は、風見 彩葉(かざみ いろは)。
    最近になって気づいたことだけど、クラスでいじめが発生している。
    私が知る世界の中でただ唯一、光彩を放っていた本物の陽キャ 橘 琥珀(たちばな こはく) 。
    彼は、私が一人読書をしていると良く隣に座って読書していた。
    一通り読み終わって、私が席を立つと「今日は何を読んでたの?」って自然な笑顔で話しかけるのだ。
    不思議と彼は私が読む本を知っていることが度々あって、何度か話したことがある。
    彼が私と話していると、普段は絶対近寄ってこない様なクラスの連中が私と彼の周りを囲んで騒ぎ始めるのだ。
    周囲まで連れてくるのは私としてはいい迷惑だったんだけど、最近は来ないから気になっていたんだ。
    ・・・・・・。
    最近彼は、机で突っ伏していることがよくあった事も、授業中も先生に怒鳴られることが多くなっていたことも知っていた。
     ずっと、彼は学校に飽きたものばかりだと思っていた。彼は頭が良かったし、何でもできる様に見えていたから。
    ーーでも、違った。
     昨日、私は熾烈な虐めの現場を目撃してしまった。いや聞いてしまったの。
    少し前まで、彼と仲良くしていたクラスメイトが彼を取り囲んで悪口を浴びせていた。
    寝ている彼の頭に消しカスのようなものを置く人や、机に落書きをしているものまでいた。
    休憩中、彼の周りを取り囲んでいるのは彼が人気者だったからではなく、虐められていたからだったなんて。
    いつ頃から始まっていたのか、私は知らずまた彼の笑顔が二度と見れないのかと思うと胸が・・・。
    胸が痛いの。心臓が締め付けられるように痛いの。
    普段、誰とも話さなくて彼以外の誰にも興味がなかった私の胸が確かに痛いの。
    今もずっと、痛くて痛くて心臓が絞りあげられるように痛い。

    ”今日の放課後、彼に話しかけよう。自然な感じで面白い本を勧めてみよう。”












    【投稿者: 1: ごどり】

    あとがき

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