アホ毛:周囲の髪の毛の流れと同化せずに飛び出してしまっている髪の毛の房のこと。元々は髪から飛び出ている短い毛を指す美容業界の用語。
スマフォで調べるとそんな風にでてきた。なんでそんなことを調べたかというと、別に社会制度の講義が死ぬほどに退屈だからではなく、自分の髪の毛のセットに悩んでいるわけでもなく。
目の前の女性の髪が不自然にピョコンと上を向いているからだ。
後ろ姿しか見えないが、長さは肩に毛先がかかるほどで、手入れもしているのだろう枝毛もない綺麗な髪だった。
だからこそ目に付くのだ。
これが全身パジャマみたいな恰好で、今起きたばかりです。というような人なら、あぁ、そうなんだろうなで済むのだが。
目の前の学生は、ゆったりした重ね着の服ではあるが、ベルトや靴なんかもおしゃれだし、身なりには気を使ってそうだ。
それがどうしてアホ毛が飛び出しているのか?
実は知らないだけで、今流行りなのか、アホ毛が? うーん。
しかし、見事なアホ毛だ。マジで頭の上でピョコンと飛び出している。
意図的でないなら、ちょっとした奇跡なのではないか。いややっぱり不自然だ。この長さの髪なら、まず間違いなく髪のセットもしているはずだろう。
つまり、目的があってその髪にしているのだ。
なぜ?
すると、おもむろにアホ毛の女子が立ち上がる。
トイレだろうか?
女子はアホ毛をウル〇ラマン〇ブンのアイスラッガーのように、頭上で挟んだ後。
「ビーム!!」
と叫んだ。すると、アホ毛の先からビームが飛び出し、ホワイトボードを直撃。
講堂は騒然とする。
教授は憤慨しなぜか床に置いてあった、高枝バサミを取り出して。
「そうくると思ったわ!」
とアホ毛を切ろうと女子に迫る。
しかし、後一歩のところで「ビーム!!」が炸裂。
哀れ教授は爆発四散。
アホ毛女子学生が勝利を収めたかと思ったが。
教授の意志を無駄にしないと、周囲の生徒が、手元に置いてあったクワガタ虫をアホ毛女子学生に投げ始める。
講堂を飛び交うクワガタ達の乱舞は中々に地獄絵図だが、アホ毛女子学生は一歩も引かず次々にクワガタ達を撃退していく。
このままではじり貧ではないだろうか。
世界はアホ毛に敗北するのか、そんな胸の内を知ってか知らずかクワガタ達は散っていく。
気が付きけば自分の手の中にもクワガタが、そうだった、今日は筆箱にクワガタ入れてたや。
むんずと掴んだ、クワガタを女子学生のアホ毛に差し出し、その顎が閉じられる。
チョキン
と音がして、アホ毛が落ちる。一瞬の静寂。落ち行く周囲のクワガタは僕等を祝福する雪だか火山灰のようで。
そして僕等は世界の中心で抱き合った。
キンコーンカンコーン。
ん、あぁ、やっと抗議が終わったか。死ぬほど眠かった。というか寝てた。
この世の終わりのような夢を見ていた気がするが、気のせいだろう。
顔を上げれば、アホ毛の飛び出した女子学生が座っている。
よくよくみれば、おしゃれなカチューシャだった。
あとがき
夢オチとか、嫌いじゃない。
やめて、クワガタを投げないでっ!!
コメント一覧
なるほど妄想の世界になんとクワガタが登場!さすがクワガタのはさみが活きたお話ですね。
楽しかったです。
>howameさん感想ありがとうございます。はさみが活きる設定をつけれるとは……いい同タイトルでした(謎
他はキチンとしているのに、アホ毛が出ているなんて!
もしかすると、可愛らしさを演出するためのアザとい女の計算なのか、と思いきや、ビームw
そして、夢落ちからのカチューシャでしたかー
でも、ピョンと触角みたく飛び出たカチューシャなんて、ディズニーランドだとかの遊園地の中でしか見ない気がするぞぅ!
>けにお21さん
感想ありがとうございます。ビーム!
実は触覚のカチューシャ見たことないです。うん、これは作るしかない(謎
ピシッ、ピシッ(無言でノコギリクワガタを投げつける音)
雪や雨の降る中でカップルが抱き合う恋愛小説は多々あれど、
クワガタの降る中で抱き合うカップルを書いた小説が他にあるだろうか(反語)。
グワシッ、グワシッ(無言でノコギリクワガタを受け止める音)
>ヒヒヒさん
感想ありがとうございます。他にあったら読んでみたいです。そして多分ないので、書き続けます。
そしてヒヒヒさんも書いてくれることでしょう(チラッ
隙さえあればクワガタを挟んでくる茶屋さんには最早敬意をもって、クワガタを投げなければ・・・てぃっ!
アホ毛の切断に成功したとき、謎の達成感を感じてしまいました。