僕は叔父と暮らしている。両親は死んで叔父が殺した。叔父は僕を大切にしてくれる。叔父は造園屋で、事件のあとはいろいろ大変だったみたいだけど、それでもどうにか昔の顧客などの理解を得て仕事を続けている。そう言ったわけで、(叔父には恐縮だが)僕たちの暮らしは決して裕福ではないものの、幸福ではあると思っている。
僕たちが住むのは長崎の丘の上で、ときどき、仕事が早く終わった日には丘を降りて、叔父と居酒屋に行く。叔父はお酒が好きで時々飲み過ぎるな、と思うが、まあ、いい人である。叔父は魚が好きで刺身を食べる。僕は生の魚が苦手なので天ぷらなどを頂く。あとはめいめい好きなように焼き鳥とか煮物なんかをいただいて、いつもふたりで茶碗蒸しを食べて帰る、丘の上に。酒を飲んだ日の叔父はいびきをかいて寝るので僕はそれだけは嫌いだった。
ところで僕は絵を描くのが好きだ。叔父もそれを褒めてくれる。僕が好きな絵は公園についてである。そういった風景画が好きでクレパスなどでする。長崎の景色はいつも水色と薄緑色だと僕がいうと、そうかも知れないな、と叔父はさみしそうに笑った。そして言った。
「神様が神様して神様するところの世界で夜は夜をよく夜するところの世界なら、きっと」そう言ってもう一度寂しそうに笑った「あんなんことも起こらんかったんやろうなぁ」、そうして三度、叔父は寂しそうに笑った。
あとがき
淡い色の、空とか海とか、なんかそんなもん。