めぐり湯

  • 超短編 337文字
  • 日常

  • 著者: 1: howame
  • 「道子、めぐり湯に水を汲みに行こう」
    老いたとはいえ達者な母が言う。
    「隆文とおいで」と母はもう歩き出している。
    めぐり湯は実家から川沿いに10分ほど歩いたところにあるらしい。
    そこで湧き出た水は不老長寿の水だという。

    兄を呼んで水を入れるタンクをもって、車で出る。
    なぜか歩いて先に出た母には行き会えない。
    めぐり湯でタンクに水を汲みこんで、母を待つ。
    母は寄り道でもしているのであろうか。

    めぐり湯の施設には芝生の生えた庭と、ウォータースライドがあり、
    子どもたちがはしゃいでいたりする。

    「お兄ちゃん、お母さんをもっと大事にしてよ」
    とかなんとか母と同居する兄に言っている。
    しばらく待っても母が来ないので、家に戻ると母はやっぱりいないのである。

    母はもう死んでから七年になる。また夢を見ていた。

    【投稿者: 1: howame】

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    コメント一覧 

    1. 1.

      なかまくら

      同居していないと、その不在が生活の中に入っていかないのかなぁ、と思いました。
      寂しいような、そうでないような、よくわからない感情です。


    2. 2.

      howame

      なかまくらさんコメントありがとうございます。
       末に生まれた私は父母に甘やかされ、時には母にこっぴどく叱られたりしながら、育ちました。
      小さいときに母にべったりくっついていたので、私はすごく母から影響を受けました。
      今でも母の真似をして生活しているなと思います。


    3. 3.

      鉄工所

      いつまで経っても
      母は優しい

      初夏のなると
      綺麗な蓮の花が咲くほとり
      デスね。


    4. 4.

      howame

      鉄工所さんコメントありがとうございます。
      亡くなってしまうと思い出すのはははのやさしい笑顔です。
      母はいつも忙しくしていてすごい頑張り屋の人でした。ああは成れません。