アメリカ南部に伝わる怪談

  • 超短編 810文字
  • ジョーク

  • 著者: テキサス万歳
  • 私の部屋にはいつの頃からか、
    見知らぬスーツケースがあって。
    いつどこで誰から、
    どうやって手にいれたのか。
    いつ誰がなぜ、
    ここにこのようにおいていったのか。
    忘れてしまって思い出せない。

    変な夢を見るようになった。
    私はなにかいけないことをして、
    なにか証拠を土に埋めている。
    なにを埋めているのかわからない。
    気がかりばかり増していった。
    ある日近所を散歩していると。
    あのいつもなにか、
    証拠を土に埋めているあの場所、
    そっくりの場所に出くわした。
    掘りおこさずにおれなくなっていた。
    真夜中スコップを手に、
    掘りおこしに向かった。
    穴にライトをあてた。
    私だった。
    私の死体だった。

    ある日近所を散歩していると。
    あの私が私の死体を掘りおこす、
    あの場所そっくりの場所に、
    出くわした。
    掘りおこさずにおれなくなっていた。
    真夜中スコップを手に、
    掘りおこしに向かった。
    穴にライトをあてた。
    私の死体ではなかった。
    札束のぎっしり詰まった、
    スーツケースだった。

    私の部屋にはいつの頃からか、
    見知らぬスーツケースがあって。
    中には札束がぎっしり詰まっている。
    いつどこで誰から、
    どうやって手にいれたのか。
    いつ誰がなぜ、
    ここにおいていったのか。
    忘れてしまって思い出せない。

    ある日近所を散歩していると。
    あの札束のぎっしり詰まった、
    スーツケースを掘りおこす、
    あの場所そっくりの場所に、
    出くわした。
    掘りおこさずにおれなくなっていた。
    真夜中スコップを手に、
    掘りおこしにむかうと、
    すでに何者かが、
    掘りおこした後だった。
    あぜんとしてたちつくしていた、
    まさにそのとき。
    背後に人の気配を感じ、
    振り向きざまライトをあてると、
    そこにはスコップを振りかざした、
    私が。
    遠のく意識。
    持ち去られるスーツケース。

    私の部屋にはいつの頃からか、
    見知らぬスーツケースがあって。
    中には私の死体がはいっている。
    いつどこで誰から、
    どうやって手にいれたのか。
    いつ誰がなぜ、
    ここにおいていったのか。
    忘れてしまって思い出せない。

    【投稿者: テキサス万歳】

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