「ぐふぁっ…!」
「こいつ…!何なんだよ…!」
敵は既に血まみれだ。
今回これくらいでいいかな?
「今なら瀕死で許してあげる。これ以上私に斬られる前に、ここから去った方がいいんじゃない?」
「…くそが…!」
敵はゆっくりと立ち上がり、足を引き摺りながら去っていった。
「あいつら…、何だったんだろう…。」
「さあ…。でも、どこかの団体だと思う。」
「え?どうしてそう思うの?」
「さっき戦ってた時、胸にバッジが付いてたんだ。」
そう、さっきの奴らはきっとどこかの団体だ。
気になる所だが、とりあえずそれは後回し。
今は大屋の居場所を突き止める所からだ。
「うーん…、特にこれといった証拠はないね。」
街中を歩き回っても、大屋が残した証拠の欠片もまだ何もない。
「…!待って、裏路地に何かある。」
「え?」
私は、近くの裏路地に何か赤黒いものがあるのに気付いた。
「これ…、血痕?」
「…だね。痕の感じからして、既に時間が経ってる。」
アスファルトに、赤黒く染まった血痕が残されていた。
これはもしや大屋に関係されるものだと思う。
でも、死体がどこにもない。
恐らく凶器で出血させた後、その死体を別の場所に持ち去っていったと考えられる。
「派手にやってるなぁ…。」
「彼女を放っておいたらまずい。早くこの場所を安定させないと。
大屋は、他にも人を殺してる。下手したら何十人もかも。」
「そんな…。」
(…何故大屋は人を殺すようになったのか?でも今は答えが見つかりそうにない。
それがわかるものがこの先にあればいいんだけど、あまり安易なものではない事は確かだ。)
「…とりあえず、大屋と繋ぐものがわかればそれでいい。
若葉も協力してくれるよね?」
「当たり前でしょ?この街自体が危ないもん。
そのままの状態で暮らすなんて、考えたくもない。」
「…だね。」
若葉も、覚悟はできてるみたい。
そうと決まれば、早いとここの事件を終わらせないと。
「よお!松浦ぁ!!」
「ん?…!」
私は証拠探しに街を歩き回ってた途端、いきなり声をかけられた。
その方向は…。
上からだ。
「あんたを探してたぜ。やっと見つけた。」
声の主は、昨日私とやり合ったタンクトップ青年だった。
やっと見つけたって事は…、これはもしやだけど…。
「何か用?」
「決まってんだろ?あんたにリベンジしに来たんだ!
俺ぁあんたに勝つために何時間も特訓したんだ!今度こそあんたをぶちのめしてやる!!」
正直に言っていい?
面倒。
でもやらないとしつこく付きまとうだろうな…。
「…仕方ないなぁ…。もう今回だけだよ?」
「そうこなくっちゃな!!」
まったく、何でこんな時に…。
まあ、彼がやりたい事だったら別にいいけど。
「若葉、少しだけ待っててくれる?」
「う、うん…。」
「さあ、始めようか。
覚悟しろ!松浦あぁ!!」
二度目の戦いが始まる。
鞘付きの鬼薙刀を構え、前へと踏み出したーーー。
「ぐぅ…!」
「はぁ…、はぁ…。」
彼は、昨日より上達していた。
でも、私は息を切らせながらも、勝利を掴む事は出来た。
「畜生…!二度も負けるなんて…!
あんた…、まさか、凄腕なのか?」
「そんな所までではないけど…。」
「くそ!なのに何で俺が負けるんだよ!
あれだけ特訓してもあんたに勝てないなんて…、はぁ…。」
私に勝てない事に悔しがる彼。
すると、彼は座る体勢を整えた。
「…なあ、あんた。」
「ん?」
「…あんたは、何で刀なんてやってるんだ?」
いきなり、彼から問いかけられた。
私が刀を持つ理由…。一つだけならある。
「私はね、両親が殺されて、その仇を討つために刀を持ってるの。
この刀は、その両親から伝授された。強くなるために。
…あの頃は何もできなかった。ただ隠れて、親の死を迎えるだけでいた。
その誰かさんへの恨みを晴らすため。それが、私が刀を持つ理由なんだ。」
「……。」
そう語ると彼は、深刻な顔をして黙り込んだ。
でもその後すぐに微笑む。
「…そうかい。
あんたは…、両親のために刀を振る舞う訳かい。
俺もその気持ちはよくわかる。俺も…、家族を失った身だからな…。」
どうやら、私の事をわかってくれたみたい。
「ふぅ…、それにしても、何度挑んでもあんたに勝てないって事はわかった。
そんだけ気持ち強いもんな。あんたは…。」
なんだかお互いの気持ちが晴れて、快い気分になった。
「…そういう訳で…、俺ぁ決めたわ!」
「…?決めた?」
私は彼の発言に、キョトンとした。
すると、土下座をし始めた。
「「松浦の姉貴」!」
「…は?」
「どうかこの俺に、「姉貴」と呼ばせてくれ!!」
……。
え?
は?
「え、ちょっと待っ……。」
「いや、待てねえ!俺、姉貴の実力が身に染みたんだ!
あんたん所で修行させてくれ!弟子にしてくれ!姉貴!!」
突然彼に、「姉貴」と呼ばれてしまった。
若葉から「お姉ちゃん」と呼ばれるのは慣れっこだけど、「姉貴」は流石に…。
「ちょっと、恥ずかしいよ…///」
「姉貴!目ぇ逸らさないでくれ!見捨てないでくれぇ!!
俺、あんたとチーム組みたいんだ!
あ、別に強制って訳じゃねえ!ただ、姉貴って呼ばせてもらうだけでも構わねえ!!
頼む!姉貴!!」
「うぅ…///」
もう逃げたい、立ち去りたい…。
姉貴って呼ばれるだけで顔が熱くなる…。
「お姉ちゃん、ここは賛同してもいいんじゃない?多分そうしないと行かせてもらえないと思うし。」
「えぇ…。」
若葉…、そこは止めてよ…。
お姉ちゃんもう恥ずかしくて耐えられないよ…///
でももう、そうするしかないか…。
「勝手にして…///」
「…!姉貴ーーーーー!!」
恥ずかしさのあまり、私ほそっぽ向いた。
こうして、私の元にもう一人、仲間ができたのだったーーー。
~Chapter2 仲間 END~
コメント一覧
彼が仲間になったんですね。
いろいろとチャレンジしてくれたほうが好みです^^! 頑張ってください~