「うぅ…、へへ…、やっぱ噂通りだな。あんた…。」
「はぁ…、はぁ…。」
手強い相手だった。
途中で三角飛びしたり、宙返りして避けたり、何かと厄介だった。
照り付ける日差しや、結構動いたせいか、汗がだらだらと流れてくる。
とてもじゃないけど、止まりそうにない。
「ま、おかげで楽しい決闘ができて、俺も満足だ。
だが、次は負けねえからな。俺の顔覚えとけよ!
…んじゃ!!」
そう言うと、青年は行ってしまった。
「…とんだ見掛け倒しだったな…。」
「お姉ちゃん!大丈夫?」
戦いが終わると、若葉が駆け寄ってきた。
「うん。問題ないよ。…ちょっと手こずったけどね。」
「それよりも今の人…、すごい動きしてたよね。武闘家か何かかな…。」
「…まあそれよりも、動き回ったらお腹減っちゃった。どこかに食べに行く?」
そう言うと、若葉はうーんと悩み込む。
まあ、そうすぐ思い付かないか…と思ってた。
「じゃあ、久しぶりに牛丼でも食べに行く?」
「…え?」
「お姉ちゃん、ずっと食べたいって言ってたでしょ?だから!」
ああ、そういえばそんな事言ってたっけ。
…にしても若葉、そんな昔の事よく覚えてたね。
「そうだね。じゃあ牛丼食べに行こっか。お金はお姉ちゃんが払うよ。」
「うん!」
まったく、いつになっても可愛いなぁ。若葉は。
そんな事を思いながら、私は若葉と手を繋ぎ、牛丼屋へ向かった。
そこで、最悪のトラブルが起きる事を知らずにーーー。
現在、牛丼屋。
「お、空いてるね。」
「なんか珍しいね。いつもは混んでるのに。」
「今日はたまたまじゃない?とりあえず、券取ろっか。」
私はそう言うと、発券機へと足を運んだ。
ここの牛丼屋は前払いである。
そこで何を食べようか考えていた時。
「お姉ちゃん。」
「ん?」
「お姉ちゃん…、結構胸元膨らんだ?」
「…は?」
私は若葉の話している事に、思わずキョトンとした。
「お姉ちゃん身長も伸びたし、胸元も…。」
「…ちょっと、それはここで話すものじゃないよ。」
「えぇ、だって気になるじゃんか。」
…いや、いくら妹でもここではそんな事話し難いって。
「はぁ…。後で教えてあげるから。」
「あぁ、そう…。」
まったくもう…、若葉ったら…。
「ん、うま。」
カウンター席で、パクパクと肉やご飯を口へ運ぶ私と若葉。
今思えば、久しぶりの外食だ。
何が物を食べると、何故か父さんと母さんの事を思い出す。
でも今は、私と若葉の2人だけ。
少しだけ寂しい気もした。
「お姉ちゃんの牛丼、ちょっとだけ貰ってもいい?」
「ん?別にいいよ。ほら。」
こういう所は、昔と変わらない若葉のおねだり。
私は、若葉のその部分は別に嫌いではない。
寧ろ可愛くて好きな方だ。
「うん!美味しい!」
「そう?なら良かった。」
私が若葉の笑顔を見て、微笑んだ。
その時だったーーー。
ウウウウウゥ……
突然、外からサイレンの音が鳴り始めた。
何か事件でも起きたのだろうか?
「…?何だろ?」
「…ちょっと見に行こうか。」
そう言うと私は牛丼を一気に食べ、席を立ち上がる。
そして、サイレンが鳴った方へと向かうーーー。
コメント一覧
妹ちゃん、何やら出会ったのは偶然じゃなさそうで、嫌な予感、ですね。