Chapter1 遭遇②

  • 超短編 1,236文字
  • シリーズ

  • 著者:退会済み
  •  「うぅ…、へへ…、やっぱ噂通りだな。あんた…。」
     「はぁ…、はぁ…。」
     手強い相手だった。
     途中で三角飛びしたり、宙返りして避けたり、何かと厄介だった。
     照り付ける日差しや、結構動いたせいか、汗がだらだらと流れてくる。
     とてもじゃないけど、止まりそうにない。
     「ま、おかげで楽しい決闘ができて、俺も満足だ。
     だが、次は負けねえからな。俺の顔覚えとけよ!

     …んじゃ!!」
     そう言うと、青年は行ってしまった。

     「…とんだ見掛け倒しだったな…。」

     「お姉ちゃん!大丈夫?」
     戦いが終わると、若葉が駆け寄ってきた。
     「うん。問題ないよ。…ちょっと手こずったけどね。」
     「それよりも今の人…、すごい動きしてたよね。武闘家か何かかな…。」
     「…まあそれよりも、動き回ったらお腹減っちゃった。どこかに食べに行く?」
     そう言うと、若葉はうーんと悩み込む。
     まあ、そうすぐ思い付かないか…と思ってた。

     「じゃあ、久しぶりに牛丼でも食べに行く?」
     「…え?」
     「お姉ちゃん、ずっと食べたいって言ってたでしょ?だから!」
     ああ、そういえばそんな事言ってたっけ。
     …にしても若葉、そんな昔の事よく覚えてたね。
     「そうだね。じゃあ牛丼食べに行こっか。お金はお姉ちゃんが払うよ。」
     「うん!」
     まったく、いつになっても可愛いなぁ。若葉は。
     そんな事を思いながら、私は若葉と手を繋ぎ、牛丼屋へ向かった。
     そこで、最悪のトラブルが起きる事を知らずにーーー。



     現在、牛丼屋。
     「お、空いてるね。」
     「なんか珍しいね。いつもは混んでるのに。」
     「今日はたまたまじゃない?とりあえず、券取ろっか。」
     私はそう言うと、発券機へと足を運んだ。
     ここの牛丼屋は前払いである。
     そこで何を食べようか考えていた時。
     「お姉ちゃん。」
     「ん?」

     「お姉ちゃん…、結構胸元膨らんだ?」
     「…は?」
     私は若葉の話している事に、思わずキョトンとした。
     「お姉ちゃん身長も伸びたし、胸元も…。」
     「…ちょっと、それはここで話すものじゃないよ。」
     「えぇ、だって気になるじゃんか。」
     …いや、いくら妹でもここではそんな事話し難いって。
     「はぁ…。後で教えてあげるから。」
     「あぁ、そう…。」
     まったくもう…、若葉ったら…。


     「ん、うま。」
     カウンター席で、パクパクと肉やご飯を口へ運ぶ私と若葉。
     今思えば、久しぶりの外食だ。
     何が物を食べると、何故か父さんと母さんの事を思い出す。
     でも今は、私と若葉の2人だけ。
     少しだけ寂しい気もした。
     「お姉ちゃんの牛丼、ちょっとだけ貰ってもいい?」
     「ん?別にいいよ。ほら。」
     こういう所は、昔と変わらない若葉のおねだり。
     私は、若葉のその部分は別に嫌いではない。
     寧ろ可愛くて好きな方だ。
     「うん!美味しい!」
     「そう?なら良かった。」
     私が若葉の笑顔を見て、微笑んだ。

     その時だったーーー。



    ウウウウウゥ……
     突然、外からサイレンの音が鳴り始めた。
     何か事件でも起きたのだろうか?
     「…?何だろ?」
     「…ちょっと見に行こうか。」
     そう言うと私は牛丼を一気に食べ、席を立ち上がる。
     そして、サイレンが鳴った方へと向かうーーー。

    【投稿者: 2: アズール021】

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    コメント一覧 

    1. 1.

      なかまくら

      妹ちゃん、何やら出会ったのは偶然じゃなさそうで、嫌な予感、ですね。