ぼくがあの娘と祝言を挙げることが決まったのは、あの娘が産声を上げた瞬間だった、と聞いている。
十四の白無垢は、この世ならざるうつくしさを内に秘めつつも、幼さばかりが目についた。
それでも見惚れるほどの愛らしさで、ぼくが彼女を娶ることが出来ることを、ただ幸福だとぼくは思っていた。
祝言の朝の忙しさの中、ぼくはずっと見ていたはずのあの娘を、見失ってしまった。
呼び止める声も聞かずに飛び出して、屋敷じゅうを探し回る。
ほのかな光の奥座敷に、彼女は立っていた。
白い花嫁装束を、女の証の血に染めて。
ぼくは絶句することしか出来なかった。
この世ならざるうつくしさ、その更に上を、魅せられてしまったと思った。
娘は無表情に、ぼくを見る。
「これで、あなたの子が、産めます」
その声音の生々しい暖かさは、きっと無垢に染みた赤の温度とまったく同じだった。
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娘はどうして無表情だったのでしょうか。
娘の感情が読み取れそうで、読み取れないバランスの上にありますね。