きみとの祝言

  • 超短編 361文字
  • 恋愛

  • 著者: 古賀
  •  ぼくがあの娘と祝言を挙げることが決まったのは、あの娘が産声を上げた瞬間だった、と聞いている。
     十四の白無垢は、この世ならざるうつくしさを内に秘めつつも、幼さばかりが目についた。
     それでも見惚れるほどの愛らしさで、ぼくが彼女を娶ることが出来ることを、ただ幸福だとぼくは思っていた。
     祝言の朝の忙しさの中、ぼくはずっと見ていたはずのあの娘を、見失ってしまった。
     呼び止める声も聞かずに飛び出して、屋敷じゅうを探し回る。
     ほのかな光の奥座敷に、彼女は立っていた。
     白い花嫁装束を、女の証の血に染めて。
     ぼくは絶句することしか出来なかった。
     この世ならざるうつくしさ、その更に上を、魅せられてしまったと思った。
     娘は無表情に、ぼくを見る。
    「これで、あなたの子が、産めます」
     その声音の生々しい暖かさは、きっと無垢に染みた赤の温度とまったく同じだった。


    【投稿者: 古賀】

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    コメント一覧 

    1. 1.

      なかまくら

      娘はどうして無表情だったのでしょうか。
      娘の感情が読み取れそうで、読み取れないバランスの上にありますね。