SEX

  • 超短編 672文字
  • 恋愛

  • 著者: 3: 寄り道
  •  抱いた女がシャワーを浴びている。
     名前は確か、サオリだったか、シオリだったか。まあ、そんなのはどうでもいい。
     俺は今、パンツだけを穿き、テレビを見ている。今日の東京は晴れるらしい。
     昨夜、駅前で暇そうにスマホを眺めている女がいたから、いつものように声をかけ、持ち前のトークで訝しがっていた女を笑わせたあと、食事に誘い、そのままここへ来た。
     SEXしているときは「可愛いよ」「綺麗だ」「愛している」と何度も言っていたが、そんな言葉はその場限りの言葉にしか過ぎず、事を終えてしまえば、どんな顔だったか、いまいち覚えていないのも事実。
     女がシャワーを浴び終え、服を着て、出て来た。
     さっ、シャワーを浴びてくるか。

     つまらないSEXだった。
     シャワーを浴びながら思い返してみても、何も頭には残っていなかった。抱かれた男の顔も曖昧。
     昨日、友達から合コンがバラしになったとLINEが届き、駅前で時間を潰していると声をかけられた。名前を言われたと思うが、全くもって思い出せない。
     つまらない話をする男のSEXは大抵つまらない。
     男の話に苦笑いを浮かべながらも、暇だったから誘いに乗って、食事を奢ってもらい、ホテルに来た。
     演技で喘いでいると、幸福感よりも疲労感が溜まる一方。
     シャワーをとっとと済ませ、早く帰ろう。

     シャワーを終わらせ、部屋を出た。
     女はもう支度を済ませたらしい。
     ホテルの前で女と別れる。
     そして今日も、夜のオカズを求め、駅前で女を物色する。いつものことだ。

     なんの印象も残らなかった男と別れる。
     そして今日も、幻想である赤い糸で繋がれた男を求め、合コンへ行く。いつものこと。

    【投稿者: 3: 寄り道】

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    コメント一覧 

    1. 1.

      なかまくら

      なんだか、冷めていて、悲しいなぁ、と思いました。
      それでも、初めての時が、あったはずなのに、彼らには、何があったのでしょうか。


    2. 2.

      bbren

      すっごく分かる…とも、全然分からない‼とも言えないこの感じ(笑)
      でも、作品を読ませて頂いて映像が浮かんできました。
      楽しく読ませて頂きました。