さくら、観る会

  • 超短編 599文字
  • 恋愛

  • 著者: bbren
  • 一人暮らしの、マンションの周りをふらっと散歩してみると、引っ越し業者のトラックがやたら目についた。
    そうか、もう春か。
    当たり前だけれど、季節は巡る。
    私にも、引っ越しをした春があった。
    もうどのくらい前だったろう…そんな事を考えていたら、上着のポケットに入れていたスマートフォンが震えた。

    「お、早かったな!」
    「ちょうど私も近くにいたから」

    私たちは、中学の同窓会で30年ぶりに再会した。

    学生時代、特別に仲が良かった訳ではなかった。
    ただ、この年齢で再会し、お互い都合の悪い事は多少割愛しながらも話をしてみると、中学卒業後、生きてきた境遇がとても似ていたのだ。
    二人とも、一度の結婚を経験し、今は独りになっていた。
    私たちが通っていた学校近くの公園に出てこないか、と連絡がきたので寄ってみると、缶コーヒーを片手にベンチに座る彼がいた。
    彼、というかおっさんだな。
    人の事は言えないけど…
    「暖かくなってきたね」
    「そうだねぇ」
    そう言うと、彼は「あれ?」と私の髪に手をのばした。
    「ん?何」
    「いや、桜の花びらでも付いてるのかなと思ったんだけど…」
    「え?いや、まだ桜咲いてないし」
    「うん、違った。白髪だった」
    「へ?」
    私たちの距離は、とても近くなっていた。
    慌てて目をそらそうとしたのだけれど、気が付くと一瞬、唇が触れた。
    「桜咲いたらまた来ようか」
    「あ、うん。って言うか白髪って?」
    「いや、それは気にしなくていいよ」彼は笑っていた。

    【投稿者: bbren】

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    コメント一覧 

    1. 1.

      けにお21

      桜が待ち遠しいですねー

      お話は、恋の始まりかな?
      年配の恋も、若い恋と違って、味わい深いものですね。

      また、恋って始まりが甘酸っぱくて、美味いんですよねー


    2. 2.

      bbren

      感想ありがとうございます!
      あっという間に桜の季節が終わってしまいましたが、このお話はおっしゃる通り、恋のはじまりです。
      春は出会いや、始まりの季節ですからね~
      ドキドキ、わくわくしたいなぁと思います。